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2024.01.02

「読み・書き・計算は早いほどいい」は危険! 名門幼児教室代表が親に伝えたいこと

幼児に読み・書き・計算はまだ早い。そう唱えるのは、入塾希望者が殺到する名門幼児教室「こぐま会」の代表・久野泰可氏だ。久野氏によれば、親のみならず、日本の幼稚園・保育園も見落としがちな幼児教育の基本があるという。 『子どもが賢くなる75の方法』(2014年刊)の一部を再編集してお届けする。

Unsplash/Annie Spratt ※写真はイメージ

「早期教育」にとらわれるな! 

「勉強を始めるのは、早ければ早いほどよい。そのほうが頭のいい子になる」という考えは、昔からありました。

しかし、子どもの発育には段階があり、早いうちに始めたからといって急激に伸びるものではありません。たとえば文字を3歳のときに教えてもなかなか覚えられないのに、5歳になったら特にがんばらなくてもすっと覚えてしまうものです。「早期教育」にとらわれてしまうと、しなくてもいい苦労を子どもに強いることになり、ストレスを与えることになりかねません。

読み書きや計算は、国語・算数といった「教科学習」であり、小学生になったときに始めるのがちょうどいい教育です。幼児期に必要なのは、教科学習の前に身につけるべき基礎教育です。

私はこれを「教科前基礎教育(きょうかぜんきそきょういく)」と呼んでいます。

教科前基礎教育とは、簡単にいえば教科書とノートを使う前の教育。何もないのにどうやって勉強できるのかと心配になるかもしれませんが、子どもが生活の中で接しているものや事柄から、「言語」「数」「図形」など、さまざまなことが学べるのです。しかも、遊びや毎日の習慣を通して学べるため、親も子も余計なストレスになることはないといっていいでしょう。

教科前基礎教育で楽しみながら基礎教育を重ねることで、子どもの「考える力」が大きく発達するだけでなく、小学校で行われる教科学習にスムーズに入っていけるのです。

「勉強」というと親も子も身構えてしまいます。日々の生活や習慣、遊びをさりげなく勉強にしてしまうためには、何より親の働きかけが重要になってきます。

子どもが積極的に、楽しく取り組めることが重要なのはいうまでもありません。

ペーパー学習の前に実物を使った教育を

「子どもの知育は小学校からではなく、幼児期から基礎教育を始めることが重要。幼児期に積み重ねた知育が、小学校に入ってから理解力の差を生み出すことになる」。これは、幼児教育に長年携わってきた私が確信していることです。

では、幼児期に必要な基礎教育とは、どのようなものでしょう。

多くの人は「子どもに勉強をさせる」というと、すぐに参考書や問題集、ドリルなどを思い浮かべるようです。しかし、まだ文字も上手に書けない子どもにペーパー学習は必要でしょうか。もちろん、子ども自身が遊び感覚で楽しく取り組むことができるのなら問題はありません。そうではなく、あまり乗り気でない子どもにまで鉛筆を持たせる必要はないと考えるのです。

よくできた問題でも、ペーパーに書いてあるものは本物ではありません。「ボールが5個ありました。そのうち2個がなくなりました。いくつ残ってますか?」といっても、そこにあるのは絵に描いたボールです。子どもは頭の中でボールを動かしながら、問題に取り組まなければなりません。これが、幼児期の子どもにとって難しいため、簡単な問題でも手間取ってしまうことがよくあります。これでは勉強に対して苦手意識を持ってしまいかねません。

こうした事態を避け、スムーズに理解させるためにも、幼児の教育には現実にある「もの」を使うことが欠かせません。「鉛筆が3本ありました。また2本買ってきました。全部でいくつになりましたか?」という問題を解くなら、実際に鉛筆を使えばいいし、「コップの水」の問題なら、実際にコップを使えばいい。

こうした教育方法を、私は「事物教育(じぶつきょういく)」と名づけました。

実際にあるものを触り、動かし、どう変化するのかを体験すること。そのステップを踏んで初めて子どもは理解できるのです。そして、事物を通して理解が得られれば、ペーパーの上でも解けるようになります。まずは「見て・触れて・働きかける」ことから始めることが重要です。

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久野泰可/Yasuyoshi Kuno
1948年静岡生まれ。横浜国立大学教育学科卒業。1972年現代教育科学研究所に勤務。1983年幼児教育実践研究所「こぐま会」の室長を経て、1986年代表に就任。教育者として常に現場に身を置きながら、国内外で講演を行う。約50年に及ぶ教室での実践を通して「ひとりでとっくん」100冊シリーズや、多くの具体物教材・教具を開発。幼児の発達段階をふまえた独自のカリキュラム「KUNOメソッド」は、中国、韓国、ベトナム、シンガポールなど、海外の幼稚園・教室でも導入されている。2012年「KUNOメソッド」を更に広めるべく、幻冬舎と共同でブランド「100てんキッズ」を立ち上げ、商品を開発。著書に『間違いだらけのお受験』『3歳からの「考える力」教育』(ともに講談社)、『「考える力」を伸ばすAI時代に活きる幼児教育』(集英社)など。

TEXT=久野泰可

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