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2022.09.19

「もっと普通に話そう」性教育後進国・日本に切り込むYouTuberシオリーヌとは?

親子間、パートナー間では、なかなか口に出しにくい”性”の話題。そんな現状を「日本の性教育は遅れすぎている。悩める世代の身近な相談相手になりたい」と切り込むYouTubeが話題に。日本初、性教育YouTuberのシオリーヌさんに話を聞いた。【特集 仕事に効くYouTube】

性教育YouTuberシオリーヌ

日本初の性教育YouTuberのシオリーヌ。企業や教育の場での講演活動、秋には新刊を2冊上梓するなど多方面から注目を浴びる。

遅れています! 日本の性教育

「性の話題をもっと気軽に話せるようになってほしい、そして正しい知識を学んでほしい」。そんな思いから性教育YouTuberとしてチャンネルを開設したというシオリーヌさん。2019年に開設して以来、わずか1ヵ月で登録者数が1万人を突破。若い世代を中心に登録者が増え続け、2022年9月現在は17万人を超えている。企業や教育の場での講演活動も多く、秋には新刊を2冊上梓する予定とメディアからも注目される存在だ。

「助産師となって3年目に、日本で遅れている性教育の必要性を感じ、仕事をしながら勉強を始めました。そして、性教育に関連する資格をとったことなどをFacebookにアップしていたところ、大学の同級生で養護教諭になった友人から『私が勤務している学校で、子供に向けて性の話をしてほしい』というような依頼が増えていったんです」

そこから始まった講演活動。その対象は児童のこともあれば、その保護者、また社会人ということもあった。しかし1回の講演で会える対象には限界があるし、自分が思うことをすべて伝えきるのは難しい。「性」という、触れにくい分野に興味を持った人が、家に帰った後に学び直せたり、知識を深めていけるコンテンツが世の中にあればいいのに、と思うようになったという。

そして、シオリーヌさん本人がYouTubeを身近に感じていた。

「私が見ていたのはおもにエンタメですが、YouTubeの視聴者に若い世代が多いことも知っていたし、YouTuberという存在が若い世代にとって身近な存在になっていることも感じとっていました。それならYouTubeで私が伝えたいことを動画配信してもいいのでは? と思い、2019年の2月にYouTubeで動画配信を始めました」

性教育YouTuberシオリーヌの仕事場

シオリーヌさんの動画撮影はこんな感じ。セットは最低限。動画編集は基本的には自身で、一部外注もしているという。参考にしているYouTubeは『Kevin’s English Room』『かなたいむ。』。「今、自分が英語を勉強しているなかで、Kevin’s English Roomはエンタメ性があって楽しく見られるうえ、とても参考になります。かなたいむ。は編集がおしゃれだし、発信の内容もソーシャルアクションに繋がるものも多く学びを得ています」

配信2回目で性教育の需要を実感

「最初のハードルは、私が動画を作れないということでした。話したい内容やコンテンツは山ほどあるのに、肝心の動画編集ができないという……」

勤めていた病院でそんな悩みをポロっと呟いたところ、「(シオリーヌに向いているから)YouTubeはやった方がいい。私が編集してあげるよ」と同期の看護師の友人から心強い言葉。でも彼女自身にも編集経験はなし。シオリーヌさんは動画を撮り、彼女が編集を一から勉強し、手伝ってくれた。

「編集の仕方、テロップや効果音の入れ方は、当時人気のYouTuber動画を参考にさせていただき、できることはなんでもやってみました」

手探りで始めたYouTubeだったが、早くも2回目の配信でバズる。テーマは「月経カップ」。いわゆるナプキン、タンポンに続く第三の生理用品といわれ、膣内に医療用シリコンカップを挿入して経血を受け止め、繰り返し使えるエコな生理用品といわれるものだ。

「すごいスピードで何十万回も再生されていき、こんなにも需要があったんだと驚きました。2月にチャンネルを開設し、3月の終わりには登録者が1万人を超えたんです。これはものすごい励みになりました」

続けるうちにだんだん編集にも興味が湧き、スペックの高いパソコンを購入し、自ら編集も始めた。病院勤務をしながら、休日はひたすらYouTubeを撮影し、講演活動に励む日々。多忙を極めながらも、反響を得ることで、やりがいがそれを上回っていた。

「幸い、副業OKの病院だったこともあり、看護師長は私がYouTuberとして活動することを応援してくれました」

日本に根深くある「性教育=性交渉の話」という偏見

「もっと性教育を広めたい」と始めたYouTubeは、今では登録者数が17.2万人(2022年9月現在)。草の根運動のごとく活動を続けながら、現在の日本の性教育について思うことがある。身体の仕組み、性行為の仕組み、妊娠出産の仕組みといった知識面での教育も、性教育の大切な一部であることは間違いないのだが――。

「それだけではなく、自分の権利であったり、周りの人とのコミュニケーション、さらに性的同意というパートナーと交渉するスキル。自分という“大切な身体”で、他の人と関わり合いながら社会で生きていくための大切な知識というものも、性教育には含まれていると思うんです。そう考えると日本で性教育と認識されているものは、ほんの一部に過ぎないのでは?と感じます」

とくに大切な学びの場である学校で、性教育として伝えられていることが本当に少ない。シオリーヌさんはそれを痛感すると話す。

そもそも、なぜ日本の性教育は遅れているのだろうか?

「私たちの親世代にとって、性はタブー視されています。その原因は、学校で受けた性教育の内容であったり、家庭のなかで普通に会話する“性”がなかったということじゃないでしょうか」

子供がどこから産まれてくるのか? 自分が昔聞いた話を思い出して欲しい。「コウノトリが運んできた」。ひどいものになると「橋の下で拾ってきた」などと、いわれた経験はないだろうか。一般的な常識をもった親でさえ、気まずそうに誤魔化すシーンがあったはずだ。

「『性交渉』とか『性的接触』という言い方で表現するような医学的な話。もしくは、アダルトコンテンツとして消費されていくような、おおっぴらに話せない下ネタ。その両極端な性の話題にしか触れる機会がなかった現状があるのではないかと感じます。

本当なら親子間で普通に会話する性の話を、親世代が“恥ずかしいこと”と認識し、むしろ興味を持って欲しくないと、寝た子を起こすな的な感覚で捉えている方が多いのかもしれません。だから子供に聞かれたとき、どういうテンションで答えたらいいのかわからない。そういう困り感から、誤魔化す、はぐらかすという行動に出てしまったのだと思います」

では性教育YouTuberとして、どんな風に話すことが“性”の話を自然に受け止めてもらえる、興味を持ってもらえるコツなのだろうか。

「YouTubeの視聴者さんからいただいたコメントに『性の話を聞くのは苦手でしたが、シオリーヌがあまりにも普通に淡々と大事だと話すものだから、普通に大事だと思うようになってきました』とあったんです。なので、世間話をするような感じで、なるべくフラットに、大事なことを伝える気持ちで話すことを心がけています」

YouTuberを、タレントより身近な存在としてみてもらえるのでは? と考えたシオリーヌさん。後編ではいい距離感の関係性を保つ秘訣や、若い世代にも自然に話を聞いてもらえる存在になるために工夫していることを聞いた。

シオリーヌが「ぜひ見てほしい!」動画BEST3

1.「ユースクリニックへようこそーここは、あなたのための病院です」(全5話)
イチから脚本を作り、5日間で撮影したドラマ仕立ての性教育。「今の若い世代の子達がどういうトラブルに直面する可能性があるのか、そういうことを知っていただく意味では、すごく見ていただきたいです」

2.「【第三の生理用品】月経カップって何?」
配信2回目でバズった動画。「私も愛用者なんですが、ぜひ多くの女性たちに知ってもらいたい」

3.【子育て】親子でも大切にしたい境界線のハナシ
若い世代に多いのが「パートナーからのスキンシップを断れない」という悩み。「それを自然にできるようになるためには、幼少期の親子間のスキンシップにおける関係性がとても重要だという話を、自身の体験を交えて話しました」。小さいお子さんがいる方は必見!

■シオリーヌさんのチャンネルはこちら!

【”人を傷つけない”性教育YouTuberであるために。シオリーヌの超絶仕事術(Vol.2)】
【一体どうすべき!? 性教育の悩み。シオリーヌの考えとは?(Vol.3)】

シオリーヌ
性教育YouTuber。本名:大貫詩織。1991年神奈川県生まれ。助産師、思春期保健相談士。総合病院産婦人科にて勤務、その後精神科児童思春期病棟で若者の心理的ケアを学ぶ。全国の学校や地域のイベントで性に関する講演活動も行う。2019年からYouTubeを開設。著書に『こどもジェンダー』などがある。

【特集 仕事に効くYouTube】

TEXT=今井 恵

PHOTOGRAPH=田中駿伍(MAETTICO)

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