時計師とレーサーというふたつの顔。その両立が創りだしたのは、 動と静を内包し、成熟の気配を湛えた“美しきメカニズム”だ。 静けさのその先にある境地を、新しい 「スポーツ・オート 79」が語る。

18Kレッドゴールド製のケース&ブレスレットを採用した、ブランド誕生15周年を祝うラグジュアリー・スポーツモデル。成熟を語る美しく繊細な色調と、日常使いに適した高性能ムーブメントが融合する。自動巻き、18KRGケース、径41.5mm。¥14,773,000
加速する静けさの境地
音を立てない情熱がある。ローラン・フェリエというウォッチブランドの原点は、1979年のル・マン24時間レースで総合3位という快挙を成し遂げた、レーサーとしてのローラン・フェリエ氏そのものだった。スピードと精密さ、アドレナリンと沈黙。矛盾する世界をひとりの人間が生きたからこそ生まれた哲学が、“静けさの美”として結実しているのだ。
レーサーと時計師という二面性のなかでフェリエ氏が追い求めてきたのは、声高に主張することなく語る洗練だった。激しい競技の世界から一転し、静寂のなかに美を宿す機械式時計をつくる。その隔たりの深さこそが、“静けさ”という美意識に動的な強さを宿らせたのである。
この哲学を象徴するのが、創業15周年を記念して発表された「スポーツ・オート 79」。レースの余韻と機械の躍動感が交差するようなこのモデルには、ケースやブレスレットに初めて18Kレッドゴールド(5N)を採用。丸みを帯びたトノー型のミドルケースにクッション型ベゼルを柔らかく重ね、流麗なケースラインはレーシングカーの空力設計を思わせる造形に昇華されている。そしてサテンとポリッシュの仕上げが外装に奥行きと立体感を添える。
赤味を帯びた温かな黄金色は華美に走らず、成熟を語る。この「5N」という表記は、金の合金に含まれる銅と銀の比率を示す規格で、このモデルで選ばれたのは、赤みが最も深く豊かなタイプ。これは美しさと実用性を両立する意図によるものだ。そのトーンに合わせるように、ダイヤルにはオパーリン仕上げを施し、わずかにピンクのニュアンスを加えている。
色彩を“響かせる”という思想。目立たせるのではなく、引き立て合うための設計。5Nとオパーリンという素材の“調和”にこそ、ローラン・フェリエの美意識が凝縮されているのだ。

美と機能は調和し、響く
外装だけではない。心臓部にあたるムーブメントにも、“語らぬこだわり”が息づく。搭載されるキャリバー「LF270.01」は、ジュネーブの自社工房で設計・装飾・組立てを一貫して行う自動巻きムーブメントであり、プラチナ950製のマイクロローターを内蔵。日常使いに応える約72時間の連続駆動、120m防水性能を備え、精度と機能美が静かに調和している。
このムーブメントの開発を牽引したのが、創業者の息子であり、ブランド立ち上げ当初から設計部門を担ってきたクリスチャン・フェリエ氏だ。彼は父の哲学を受け継ぎ、常に「その機能は使う人にとって意味があるのか?」という問いをモノづくりの出発点とする。「実用性とは制限ではなく、革新のキャンバス」。この思想のもとで、ムーブメントの仕上げは芸術性と耐久性を両立させるよう緻密に整えられているのだ。
例えば、ブリッジには耐久性と美観を兼備しルテニウム加工をした水平サテン仕上げが施され、角の面取りにはダイヤモンドペーストと天然木を用いた伝統的手仕事が生きる。美しくあることと永く機能し続けることの両方を満たす。それこそがローラン・フェリエの考える“機能美”である。
今多くを語らないモノにこそ、深い意味が宿る時代だ。主張しすぎず、抑制された佇まいに宿る揺るぎない信念。それは、日々意思決定を重ねる男たちの心にも共鳴するだろう。
ローラン・フェリエの時計は、日常のなかにあって思考を調律し、静けさを携え、心のテンポを整えてくれる真の相棒。成熟という名のエレガンスを帯びた「スポーツ・オート 79」は、腕元で静かに時を告げる。加速する静けさ─それは時を刻むたびに内奥へと響く、調和の美に満ちた境地である。

HISTORY
時を駆けた友情が信頼という結晶に
1979年、ル・マン24時間レースでともに参戦したのが、レーサーとしてのローラン・フェリエ氏(右)と友人で実業家フランソワ・セルヴァナン氏(左)。アマチュアながらプロ顔負けの快挙を成し遂げた。彼らの間に芽生えた友情が、やがてローラン・フェリエというブランドの創設へとつながったのだ。

問い合わせ
スイスプライムブランズ TEL:03-6226-4650
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