英国の名門ラグジュアリーブランドのジャパンCEO・伊知地徹氏が、ボディコンテストに向けて本気で身体を作っている。その挑戦心に火がついた理由とは? 【特集 魅せるカラダ2025】

明確な目標を持つことによって限界に挑む
都心のビル上階にひっそりと佇む、知る人ぞ知るパーソナルトレーニングジム「EVOLVE.」。そこでパーソナルトレーナーの指導を仰ぎながら、黙々と身体を動かすのは、英国ラグジュアリーブランドのジャパンCEOを務める伊知地徹氏だ。
常にベストパフォーマンスを求められる経営者にとって、身体は大切な資本。健康維持のために運動を習慣にする人は少なくないが、伊知地氏が行っているのは、それとは一線を画すハードなトレーニングだ。
「この夏、ボディコンテストに初めて参加することになり、2025年1月頃から本格的に身体を絞り始めました。普段は自宅近くの24時間営業のジムで身体を動かし、月2回、ここでトレーナーの有馬康泰さんからコンテスト出場に向けたアドバイスをいただきながらトレーニングしています」
そう語る伊知地氏の上半身は、肩や背中、胸にがっしりと筋肉がつき、ウエストがくびれた見事な逆三角形。スーツを着こなすには理想の体型とも言えるが、「ここ1年くらいでスーツは随分直しました。それが本格的にトレーニングをしたことの唯一のマイナス点ですね」と笑う。

挑戦心に火をつけたB‘z稲葉の存在
そもそも伊知地氏は、なぜボディコンテスト出場を決意したのか。その裏には、日本が誇るレジェンド・アーティストの存在があった。
「2年ほど前にB’zのライブに行ったのですが、当時58歳だった稲葉(浩志)さんがフルスロットルでパフォーマンスしている姿がすごくカッコ良くて。僕より3歳年上で、60歳手前の人が、ステージの上をパワフルに動き回り、何万人もの観客の心を揺さぶっている。それ見て、年齢を理由にいろいろなことを諦めてはいけないと奮い立たされたんです。
僕は学生時代からずっとトレーニングを続けていますが、実は50代に入った頃から身体を壊さないように強度を抑えていたんですよ。でも、稲葉さんに刺激され、もう一度若い頃と同じように身体を鍛えてみようと思ってやってみたらそれなりにできて筋肉もついてきた。それが自信になり、コンテストに挑戦することにしたんです」

学生時代の部活のようで“青春”も取り戻せた
2025年1月中旬からコンテストに向けたトレーニングを本格的にスタート。自己流ながらさまざまな方法を試し、現在は、「胸」「背中と二頭筋」「肩と三頭筋」「脚」に分けて4日トレーニングし、1日休息を挟むサイクルで行っている。
食事にも当然気を遣い、減量期の摂取カロリーは1日1700~1800kcalに設定。朝6時から7時40分頃まで行うトレーニング前にバナナを1本食べ、トレーニング後はプロテインを1杯飲む。朝食は玄米ご飯を65gと納豆に卵、昼食はおにぎり1個を基本とし、自宅での夕食は肉または魚を加えた野菜鍋が中心で、炭水化物は抜き。以前は「ほぼ主食だった」というパスタも1月以降は口にせず、代謝を鈍らせるとされる添加物を含む食品も遠ざけている。
「ただ、週3回くらいは会食が入るので、それをどう乗り切るかが悩ましいですね。気心知れた方の場合は理由を説明して食べる量を抑えますが、そうはいかないケースもあるので。それでも揚げ物は避けるなどして、2200~2300kcalに抑えるようにしています」
そうして作り上げた肉体は、身長181cmで体重は69kg、体脂肪率はなんと8.8%。とはいえ、「大会に出るにはまだまだ不足。体脂肪率は7%台、脇腹にうっすらと残る贅肉も落としたい」と、伊知地氏は意気込む。
「大会という明確な目標を持ってからはトレーニングが本当に楽しいですね。以前からジムには通っていましたが、天気やその日の体調によって休むことが結構ありました。でも、コンテスト出場を決めてからは自分が決めたトレーニングは欠かさず行っています。そうなれたのは具体的な目標ができたこと、その目標を周りに公言したことが大きかったと思います。学生時代の部活みたいで、青春を取り戻したような気すらしているんです(笑)」
伊知地徹/Toru Ichiji
1968年東京都生まれ。2000年からイタリアの時計ブランドCEOを務め、2017年から現職。学生時代からスポーツに親しみトレーニングを習慣にしてきたが、ボディコンテスト出場を決意したのを機に、2025年1月から本格的なトレーニングを開始した。