GOLF

2025.12.03

平均飛距離351Y。飛ばし屋に共通する「速いバックスイング」をアマがするには

23歳の新鋭マイケル・ブレナンがPGAツアー・フェデックスカップ・フォールで衝撃の初優勝を飾った。ユタ州ブラックデザートリゾートGCで行われた「バンク・オブ・ユタ選手権」で、わずか3試合目にしてプロ初勝利を達成。400ヤード超のビッグドライブと冷静なコースマネジメント、そして速く滑らかなバックスイングが生んだ勝利の秘密に迫る。飛ばし屋に共通する、速いバックスイングの動画解説も合わせて紹介。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

©️Unsplash/Yianni Mathioudakis ※写真はイメージ。

飛距離400Y超の新鋭。PGA3試合目で初優勝したマイケル・ブレナン

PGAツアー・フェデックスカップ・フォールで、ひときわ鮮烈な印象を残したのが、23歳の新鋭マイケル・ブレナンだ。

ユタ州ブラックデザートリゾートGCで行われた「バンク・オブ・ユタ選手権」で、PGAツアー3部にあたるPGAツアー・アメリカズを主戦場としていたブレナンは、スポンサー推薦で出場し、PGAツアー3試合目(プロとしては初出場)にして堂々の初優勝。

400ヤードを超えるビッグドライブと冷静なコースマネジメントを兼ね備えたその勝ち方は、単なる“飛ばし屋の快挙”を超えた、衝撃的な勝利だった。

学生時代から完成されていた“プロの素材”

米国バージニア州出身のマイケル・ブレナンは、幼少期からスポーツ万能で、野球やバスケットボールにも親しんでいたが、最も彼の感性を刺激したのは、父の勧めで始めたゴルフだった。

ジュニア時代から全米大会で頭角を現し、高校では複数の州タイトルを獲得。名門ウェイクフォレスト大学では大学史上3位タイとなる8つの個人タイトルを獲得し、平均スコア71.46で同校歴代4位の成績を記録した。

学生時代からすでに、技術とメンタルの両面で“プロの素材”として完成されていた。

プロ転向後は、PGAツアー・ユニバーシティランキング12位の資格によって、PGAツアー・アメリカズを主戦場に活動。2025年8〜9月には3勝を挙げ、来季のコーンフェリーツアー(PGAツアー2部)へのフル参戦権を獲得した。

16試合中12回のトップ10入り、賞金王獲得という圧倒的な成績を残し、すでに安定感と勝負強さを兼ね備えた存在となっていた。

ユタで見せた“攻めの覚悟”と“冷静な計算”

「バンク・オブ・ユタ選手権」最終日のブレナンは、前半を5バーディ・ノーボギーと完璧な滑り出しで折り返したが、10番ホールパー4のティーショットで3番ウッドでレイアップを選択したショットが右のバンカーにつかまり、痛恨のボギー。ノーボギーは途切れたが、続く12番パー4で流れを一変させた。

標高1900mという飛距離が伸びる高地の特性を最大限に生かし、ブレナンは418ヤードのビッグドライブを放った。

435ヤードのホールで残りわずか17ヤードまで運び、アプローチをピンそばに寄せてバーディを奪取。10番のミスを即座に修正し、“攻めの覚悟”で勝負を決めた。

本人は「自分を信じて、風を味方にした。10番では少し守りに入ってしまったから、ここでは迷わず振り切った」と語っている。

失敗を恐れず、即座に修正して攻めに転じる決断力――そのメンタルは、まさに勝者の資質だ。終盤もリードを保ち、通算23アンダーで2位に2打差をつけて堂々の優勝を飾った。

4日間のドライビングディスタンスは平均351.1ヤード。フェアウェイキープ率は89.29%に達し、圧倒的な飛距離と正確性を両立していた。

パーオン率は79.17%を記録し、ショートゲームやパッティングでも高い数値を残すなど、まさに“隙のない内容”で勝ち切った。

ブレナンは2025年、PGAツアー・アメリカズで3勝を挙げ、24万7389ドルを稼いでいたが、今大会の優勝賞金はそれを大きく上回る108万ドル。わずか1週間でキャリアの新章を切り開いたことになる。

2024年の同大会では、マット・マッカーティーが2部相当のコーンフェリーツアーで3勝を挙げてPGAツアーに昇格し、出場3試合目で優勝を果たしたが、ブレナンはそのプロセスを飛び越えて栄光をつかんだ。

400ヤード超のドライブと精密なショートゲーム、攻めと計算のバランス。ブレナンがユタで見せた勝ち方は、現代PGAツアーにおける理想の勝者像そのものといえるだろう。

飛ばし屋に共通する「速いバックスイング」の秘密

ブレナンのスイングは、トップからの切り返しで左足をしっかり踏み込み、地面反力を効率的に使うことで、飛距離と再現性を高い次元で両立している。フィジカルの強さに加え、理論的にも完成度の高いスイングだ。

彼のスイングで特筆すべきは、バックスイングの速さと滑らかさである。トップまでの動きがワンモーションで、無駄な力みがまったくない。

この「速く上げる」動作は、ローリー・マキロイなどの飛距離の出るトッププレーヤーにも共通する要素であり、単にテンポが速いのではなく、下半身と上体の連動が極めてスムーズであることの証といえる。

アマチュアが参考にしたいのは、この“流れを止めない”感覚だ。

多くのゴルファーはバックスイングで下半身を固めてしまいがちだが、右足で地面を押し込み、その反力が上方向に抜ける感覚を意識すると、クラブは自然にトップへと上がっていく。右股関節が軽く切り上がるように動けば、腕の力を使わなくてもスムーズなトップが作れる。

ドリルとしては、アドレスから右足をほんの半歩だけ後ろにずらし、抜重するようにしてクラブを上げてみるとよい。地面反力が上へと流れ、バックスイング全体が軽く上がる感覚を体感できるはずだ。

ブレナンのように速く、滑らかに上げるためには、この“動きの流れを作る”練習を繰り返すことが重要である。

スムーズにバックスイングを上げる方法の動画解説

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

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