放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を2025年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

「職場に才能がある同僚がいて、一緒にいると自信を失くしたり、焦ったりしてしまいます。自分らしいパフォーマンスを維持するためにも、『気にしない』や『適切な距離をとる』ほうがよいのでしょうか?」という相談をいただきました。
企画力がある、プレゼンが上手い、コミュ力が高い、SNSに強い―――など、ライバルがもつ「才能」は眩しく見えますし、一緒にいると自信や意欲を吸い取られたりしますよね。
しかし、先に答えを言うと、才能がある人と一緒にいることは、「損する」ことよりも「得する」ことのほうが多く、考えかた一つで、目ざわりなライバルから、あなたの才能を開花させるメンターにもなるのです。
一体どんな得があり、どんな思考になればよいのか? 今回は、「才能がある人と一緒にいることで伸びる才能」を、芸人さんのエピソードを踏まえつつ紐解いていきましょう。
「才能」がある人といると「細能」がつく
吉本NSCの生徒たちに、「才能ってなんだろう?」と聞くと、「ひらめき」「芸術センス」「言語感覚」などのインテリジェンスなワードが返ってきます。きっと皆さんもそう思いがちでしょう。
生徒たちとそれを確認したうえで、僕は「才能には、見落としがちな細部の能力。つまり“細能”ってのも、あるんじゃないかな?」と語っていきます。
例えば、子供のころ、学習塾などの習いごとで、周りのレベルに面を食らい、辞めたくなった経験がありますよね? 僕は、少年野球でそうでした。
当時は、速い球を投げる子や、ホームランが打てる子など、見栄えする才能をもったライバルたちが疎ましく、自信も消え失せました。
しかし、父と母は、「礼儀正しくなった」「道具を大切にするようになった」「時間を守るようになった」と、息子の些細な変化にご満悦でしたし、いま振り返ると、のちの人格形成の基盤になったと感じます。
こういった、のちのち役立つ“名前のない細かい才能”は、社会人のブレイクスルーにも必要で、「細能」は、普段は厄介な才能のある人と一緒にいることで手に入ります。
彼らの企画書やプレゼンの「出来栄え」に目を見張るのではなく、あえて距離を詰めて、どんな下準備をしているのか? 何からヒントを得ているのか? “仕事の出来よりも、仕事のアプローチ法”に目を向けていくのがコツです。
最近の若手芸人は、10年前にくらべてシェアハウスをする人が増えました。
彼らは、ただ群れているのではありません。山ほどいる若手から「一緒にいると得をするな」と感じる相手を選び、生活を共にすることで、「ネタの作りかた」「会話術」「人脈の広げかた」などの細かい才能を磨いているのですね。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。
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「才能」よりも大切な「才気」が手に入る
よくインタビューや対談で、「才能を見分けるコツは?」と聞かれます。
僕は、「才能は誰もがもっているもの」を前提にしたうえで、「見分けるコツは、その人が、才能を見せる人か見せない人かですね」と答えています。
以前は、「能ある鷹は爪を隠す」のように、才能を表面に出さず、他者に気づかれる、見抜かれるスタンスもアリでした。
しかし、現在では、在宅ワークや非対面ワークが進んでいるので、しかるべきタイミングで「自分の才を見せようとする気力」。つまり「才気」がないと、気づいてもらえないのです。
そして、この「才気」も、才能を感じる人と一緒にいることで身についていきます。
例えば、お笑い芸人は、よく「第○世代」と言われます。これは、第4世代にはナインティナイン、第7世代には霜降り明星と、同世代の旗手が出現したから。
NSCでも、空気階段がキングオブコント王者になったことを契機に、同期が勢いづき、オズワルド、コットン、くらげが浮上していきました。
身近な才能がブレイクスルーを果たすと、一緒にいた人たちは、「やりかた・見せかた・立ち回りかた」といった成功体験がシェアされ、才気ある行動につながります。
逆に言えば、才能ある人と、交流をもたなかったり距離を置いたりしている人は、この恩恵を得ることができないんですね。
才能のある人と一緒にいることで手に入る、「細能」というスキルと、「才気」というマインド。この2つの得を頭の片隅に置いておくと、きっとあなたも得するはずです。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

