PERSON

2026.04.15

35周年・HYDEの現在地「昔から変わってない部分は、ひとつもないかも」

HYDEの唯一無二のオーラは、どこから生まれてくるのか──。才能か、衝動か、それとも思考か。35年というキャリアを重ねた今、彼の言葉をたどると、その答えは意外なほど実務的な場所に宿っている。

HYDE氏

時代ごとにカッコよさを問い続ける表現者としての矜持と美学

ロックミュージシャンに求められる資質として、「ブレないこと」を語られることがある。己の信条や信念を貫き通す姿勢は、もちろん尊い。だがHYDEは、その言葉に、あまり魅力を感じていないという。さらには、35年のキャリアを重ねた今も、彼は自らを“完成形”だとは捉えていない。

「カッコよさって、時代とともに更新されていくものだと思うんです」

そう語った彼の現在地は、今なお変化の真っ只中にある。

まだ更新の途中にいる表現者の現在地とは

HYDEの真骨頂は、その類まれなる音楽性はもちろん、観客を魅了し続けるライヴパフォーマンスにある。折しも2025年は、「動」を象徴する激しいステージを限界までやりきった一年でもあった。そして、2026年は年明けから「静」の表現へと舵を切り、5年ぶりとなるオーケストラツアーを始動。周期的に「動」と「静」を行き来するフェーズ・チェンジは、HYDEのクリエイティヴィティにどのような作用をもたらしてきたのだろうか。

「ソロのライヴではずっと、“自由な場所”としてのオールスタンディングにこだわってきました。激しいステージパフォーマンスを通して、オーディエンスとともに熱狂を分かちあえたこと、そしてその達成感を実感できたことが、昨年は一番の収穫だった気がします。固定観念というか慣習のようなものって、崩していくのに長い時間がかかるもの。ライヴも然りで、他の観客と同じ動きをするのではなく、個々が感じるまま、思い思いに身体を動かすことでその場に熱が生まれるものだと思うんです。ステージにいる自分が、観客を“自由に”するにはどうすればいいかを、ずっと考えてきた数年間でもありました。だからこそ昨年は、いい意味でクレイジーなライヴスタイルを突き詰められたかなと思っています」

観る側のマインドを解き放つための試行錯誤。その根底には、彼自身のクリエイティヴに対する独特のスタンスがある。

「やはり、僕のことを好きでいてくれるファンがいるから、品質を落とせないという思いがあるので、自分自身を更新し続けていかざるを得ないんです。若さには勝てませんが、芸術家の作品は若いほうがいいとは限りませんよね? なので僕のピークがどこにあったかなんて、最後までわかりません。でも今はまだ、ロックミュージシャンとしてのカッコよさや、理想像の高みを毎年目指して、高跳びをしては壁をバンッと叩き、『ここまでイケた』と確認しながら、さらに上を目指している感覚です。後に振り返った時に、あの時が最も高かったと判明するにしても、今はまだ、その高さを更新しているつもりでいるんです」

その時代における最適解を選び続ける

自らの限界を更新し続けるという感覚は、彼が「ブレない」という言葉に距離を置く理由とも深く結びついているかのよう。

「かつてロックは、酒や快楽と同じ文脈でくくられ、それがクールだとされていた時代がありました。でも今は、自己管理をきちんとするストイックさや、なんならタバコも吸わないほうが今はカッコいいと僕は思っています。自分自身を顧みると、昔から変わってない部分なんて、もしかしたらひとつもないかもしれない。それは、時代や状況に応じて考え方を柔軟に変えないことには、井の中の蛙になってしまうから。要は選択のセンスの問題です。『ブレない』ことがいいという価値観もいいと思うけれど、僕の場合は、『ケース・バイ・ケースで最善を選んでいくのが最もスマート』という結論にいたっているだけなんです」

価値観をアップデートし、セルフケアを徹底することで身体と精神のクリアな状態を保つ。そのうえで変化を恐れず、常に最適解を選び続けることで自身を進化させるということは、トップランナーとして35年を走ってきたその姿が雄弁に物語る。

もちろん、こうした思考は一朝一夕に獲得したものではない。

「普通の人が十代で気づくようなことに、あとから気づくことが多かった」と自身が振り返るように、若い頃は練習をせずに歌番組の本番にのぞむなど、破天荒であることこそがロックだと考えていた時期もあった。だが、いい歌を歌うためには練習が必要であり、知識や教養が表現を豊かにすることも、年々リアルな実感として身にしみていったという。「やっとプロとして人前に出られるようになった」と語る現在の自己評価は、HYDEという唯一無二の存在に、さらなる奥行きを与えている。

創作の循環を保つことが瑞々しさを保つ原動力に

2026年から再始動させた「静」のフェーズも、ビジネスに置き換えれば「攻め」と「整え」のバランスをとった結果だといえるだろう。激しいライヴパフォーマンスから、オーケストラを率いる静謐な世界観へと一気に振り切る。その極端な切り替えが創作の循環を保ち、クリエイターとしての新陳代謝をより活発にしているように見える。

「ニューアルバム『JEKYLL』は、歌に集中することが大きなテーマではありますが、一方で、王道にとどまらず、スタイリッシュな雰囲気やジャジーなムードも盛りこんでいます。この『静』のフェーズから、また数年後には『動』に切り替わっていくことになると思いますが、70歳、80歳になってこれまでのような激しいライヴができるとは到底思えない(笑)。最終的には、ピアニストと一緒に小さなクラブにいて、酒を飲みながらしっとりと聴いてもらうようなことができたらいいなと思ってて。そうした将来像に向けての布石としても、このアルバムは位置づけられると思っています」

激しさと静謐を往復しながら、HYDEは表現のフェーズを切り替え続けてきた。そのたびに価値観を更新し、身体と感性を整え、次なる高みへと跳躍する。完成形に安住することなく、変化のなかに身を置き続けること。それは、時代ごとにカッコよさを問い直し続けるという、表現者としての矜持と美学に他ならない。その姿勢こそが、35年を経た今もなお、HYDEのクリエイティヴを瑞々しく息づかせている理由なのだろう。その更新の連なりこそが、彼を待つ多くの観客のために、長く走り続けるための、彼なりの真摯な答えでもあるのだ。

HYDE
和歌山県生まれ。1994年にメジャーデビュー。L'Arc-en-Ciel、VAMPS、THE LAST ROCKSTARSのボーカリストであり、ソロとしても活躍。最新アルバム『JEKYLL』が好評配信中。2026年5月にオーストリアのウイーンでの公演も開催決定。https://www.hyde.com

TEXT=畠山里子

PHOTOGRAPH=HIRO KIMURA

STYLING=高見佳明

HAIR&MAKE-UP=荒木尚子

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