PERSON

2026.05.15

エイベックス松浦勝人、“ハワイよりも大事”にしている「会食」とは

約5年ぶりに再開した、エイベックス会長松浦勝人による連載。現代を生きる数寄者が語る、社会のこと、仕事のこと、遊びのことと。【その他の記事はこちら】

エイベックス松浦勝人氏

スマホも見ないハワイ生活

毎年、春になると僕はハワイに逃げる。花粉症がひどいからだ。今、また日本に帰ってきたけど、目がかゆくて涙が止まらない。

ハワイでは、とにかく寝ている。僕は普段から睡眠導入剤を使っていて、導入剤を飲めば最初は眠ることができるけど、深夜に目が覚めてしまったらもう眠れない。それが、不思議なことにハワイにいると、昼近くまで目が覚めない。10時間ぐらい眠れる。

だから、1日が早い。起きて、家の中でぶらぶらしていると、すぐに昼になる。昼ごはんを食べて、ひと休みして、午後3時ぐらいからお酒を飲み始める。と言っても、がぶがぶ飲むのではなく、おつまみをつくってもらって、海を見ながらワインをのんびりと飲む感じ。そうすると日が暮れるので、夕飯を食べに出かける。帰ってくるともう8時ぐらいになっている。シャワーを浴びて寝る。それで1日が終わる。

ハワイにいるとスマホも見なくなる。寝る前に確認をするぐらいで、昼間はもう持ち歩かない。知人は、毎年この時期はハワイに行っているということを知っているから、連絡もしてこない。だから、自然にデジタルデトックスになる。日本にいると、多方面の情報を入れておかないと乗り遅れてしまうのではないかという不安があるから、1分でも時間ができるとスマホを見てしまう。その時に余分な情報まで入ってきて、それがストレスになる。

気候のせいなのか、磁場のせいなのかよくわからないけど、ハワイではリラックスできる。

あらゆるものをやめ、唯一残した会食

本当は花粉が完全になくなる季節までいたかったけど、大切にしている会食があるので早めに日本に帰ってきた。見城さん(徹、幻冬舎社長)、秋元さん(康、作詞家)、藤田さん(晋、サイバーエージェント会長)と僕の4人が集まる会食。忙しい人たちのスケジュールを合わせた会食だから、僕の都合で延期をすることはできず、ハワイにいたければ欠席するしかない。それはいやだから日本に帰ってきた。

接待的な会食って楽しくない。社長時代はほぼ毎日“仕事メシ”だったので、それもストレスになっていた。仕事の会食なのだから、ただご飯を食べるだけでなく、何かを決めるとか、少なくても前進させるとかしなければならない。

でも、この4人の会食では何も決めなくていい。仕事の話をしなくていいし、仕事の話をしてはダメということもない。何を話してもいい。この連載でも絶対に話せないような、芸能界の裏話もできる。4人の信頼関係があるから、話した内容が外に漏れる心配もない。

「来年は誰があの集まりに来れなくなるかな?」などという、きつい冗談を平気で口にできる。そんなノリの、構えているものをすべて脱ぎ捨てて楽しめる会。それが、なんだかんだ、もう10年以上続いている。

4人の年齢がうまく離れているというのもいいのかもしれない。一番上の見城さんと一番下の藤田さんでも、親子ほどは離れていない。かといって、兄弟というには離れすぎている。

業種もばらけている。僕と秋元さんは音楽関係だけど、見城さんは出版で、藤田さんはIT。エンタテインメント関連という大きな枠のなかで、うまく業種が違っている。

異業種交流といえばそうなんだけど、一般的な異業種交流会って、皆、何らかの利益を求めて集まっているから、何でも話せるわけではない。冗談であっても「ヤバい話だけどさ…」という話をしてしまったら、それがあっという間にSNSを駆け巡って炎上しかねない。でも、この4人の集まりは、何でも話せるし、何でも受け止めてくれる。世間一般でいう義務的な会食ではなく、これこそが僕にとって本当の意味での“会食”なのだと思う。

こういう関係値は、簡単にはできない。10年、20年かかって築き上げていくものだから。

見城さんとの最初の出会いも、もうよくわからなくなっている。見城さんの記憶だと、僕が都内に個人的に持っているバーがあったんだけど、そこにお連れしたのが最初だという。僕の記憶だと、ある出版社の人間といる時に、見城さんがやってきて同席することになったのが最初。出会いの記憶は食い違っているんだけど、それ以来、目をかけてもらい、親しくさせてもらっている。

秋元さんは売れっ子の作詞家で、当時、おニャン子クラブをスターに育てた存在としてもちろん知っていたけど、実際に知り合ったのはAKB48を大ブレイクさせる前。それから、いろいろ深い話をする間柄になった。

藤田さんとは、彼がまだ20代半ばの時に知り合いになった。サイバーエージェントの上場が見えた時に、僕のところに相談に来たことを覚えている。当時、エイベックスはもう上場していたから「上場とは〜」なんて偉そうに講釈したけど、上場してみたら、あっちのほうが全然大きな会社になっちゃった。それでも彼は上場前と同じように僕を慕ってくれる。

僕はFIREすることを視野に入れて会長になった。仕事上の会食や業界の集まりはすべて黒岩社長に任せた。海外にいたいから、メディアの取材もこの連載を除いてすべて断っているし、誰々を囲む会とか定期的な会食も断るようにした。唯一、残したのがこの4人の集まり。

会長になっても、すぐに肩の力は抜けない。社長の時にしていた心配を、必要もないのにしてしまう。それが抜けるのに数年はかかったと思う。それでも心のバランスを保てたのは、ハワイとこの4人の会食があったからだ。だから、何があってもこの“会食”にだけは出席したい。

松浦勝人/Masato Matsuura
1964年生まれ。エイベックス会長、音楽プロデューサー。24歳でエイベックス創業、ユーロビートブームの発信源となる。浜崎あゆみ、TRFなどのプロデュースを手がけた。
X:@maxmatsuuratwit
YouTube:@masatomaxmatsuura

TEXT=牧野武文

PHOTOGRAPH=長尾真志

STYLING=安部賢輝

HAIR&MAKE-UP=小林潤子(AVGVST)

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2026年6月号

会員制への誘い

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2026年6月号

会員制への誘い

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ6月号』が2026年4月24日に発売となる。総力特集「会員制への誘い」では、最新の会員制クラブをご紹介。ファッション特集「Tied-Up or No-Tie?」では、Vゾーンに着目したお洒落の流儀をお届けする。表紙はKis-My-Ft2・玉森裕太。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

GOETHE LOUNGE ゲーテラウンジ

忙しい日々の中で、心を満たす特別な体験を。GOETHE LOUNGEは、上質な時間を求めるあなたのための登録無料の会員制サービス。限定イベント、優待特典、そして選りすぐりの情報を通じて、GOETHEだからこそできる特別なひとときをお届けします。

詳しくみる