大変革期にある自動車業界で、その先頭集団を走るBMWのフラッグシップが新型に移行した。はたして、クルマはどの方向に向かうのか?

ショーファーカーとしても魅力的
言うまでもなく、BMW7シリーズはこのブランドの旗艦モデルだ。新しい技術はまず高付加価値の7シリーズに導入され、次第にその他のモデルに降りてくるようになる。したがって最新の7シリーズを見ればBMW、ひいては自動車がこれからどの方向に進むのかを推察できる。
この4月、そのBMW7シリーズが大がかりな改良を受けた。自動車業界の常識で言えばマイナーチェンジのタイミングであり、実際エクステリアはこれまでの流れを継承しているように見える。けれどもその中身をじっくり観察すると、「マイナー」という表現がふさわしいとは思えない大変革を受けている。
BMWのデザインの特徴といえば、まずキドニー・グリルがあげられる。キドニーとは「腎臓」の意味で、腎臓をふたつ並べたようなフロントマスクがBMWの特徴だ。そしてこのキドニー・グリルをLEDでふち取って強調する、「Iconic Glow」は引き続き7シリーズに採用されている。群雄割拠の高級車市場にあっては、BMWらしさを強烈にアピールすることが大切なのだ。
BMWに限らず、「らしさ」を上手に伝えることは、どこの自動車メーカーでも重要性を増すだろう。

興味深いのはカラーバリエーションの拡充で、500以上のカラーとカラー・コンビネーションが用意され、好みのコーディネイトを選ぶことができる。つまりビスポークの方向に進んでいるということで、BMWのラインナップ全体でも車格に応じて「オーダーメイド」「パターンオーダー」「イージーオーダー」などなど、好みの仕様に仕立てる方向に進むと推察する。
実際、BMWグループ傘下のMINIはその手法で人気を博しているわけで、自動車全体でビスポーク化が進むと思われる。
インテリアはがらりと変わった。ドライバーの眼前に広がるインストゥルメントパネルは「BMWパノラミックiDrive」と呼ばれるデザインで、OSも「BMWオペレーティングシステムX」と、いずれも最新のものになっている。注目していただきたいのはフロントガラスの下端部分で、ここにさまざまな情報が表示されているのがおわかりいただけるだろう。
OSを含めて、実際にドライブしてみないと使い勝手は判断できないけれど、インテイリア全体から「クルマのインターフェイスを改革したい」という意欲が伝わってくることは確かだ。
後席を見ると、改良前と同様に8Kの解像度で31.3インチと巨大な「BMWシアタースクリーン」が設定されている。ただし機能は大きな進化を果たしており、カメラが加わったことで移動中のオンラインミーティングに対応している。オーディオが「Dolby Atomos」対応になっていることと、インテリアにも約700通りの選択肢が用意されていることも目を惹いた。BMW7シリーズはどちらかといえば「駆け抜ける歓び」を提供するドライバーズカーというイメージが強かったけれど、ラグジュアリーなショーファーカーとしても魅力的なのだ。

パワートレインに関しては、BEV、プラグインハイブリッド、マイルドハイブリッドシステムと組み合わせるディーゼルとガソリン、そして純粋なエンジン車をラインアップするという。電動化を軸に、現時点ではすべてのパワートレインを磨いている。
先進運転支援システムのトピックはAIの技術が導入されたこと。たとえば、以前の先行車両追従型のクルーズコントロールは、ドライバーがブレーキを踏むと自動で解除されていた。ところがAIを活用した「BMWシンバイオティックドライブ」は、ドライバーの操作が入ってもアシスタンス機能を継続するという。このあたりの有用性は、試乗して確認したい。

祝70周年! いつの時代も7シリーズは最先端だった
駆け足で新型BMW7シリーズを紹介したけれど、来年2027年は初代7シリーズが登場してから50周年のアニバーサリーイヤーとなる。50年でどれだけクルマが進化したのか、初代7シリーズを題材に振り返ってみたい。
1977年、初代7シリーズは、当時のメルセデス・ベンツSクラスよりひとまわりコンパクトなサイズで登場した。全長は4860mmで、最新の7シリーズと比べると500mm以上も短く、最新のホンダ・アコードの4975mmよりもコンパクトだ。

1978年型のBMW733iが搭載していたのは、絹のように滑らかな回転感覚から「シルキー・シックス」の異名をとった3ℓ直列6気筒エンジンで、最高出力は197ps。最新の7シリーズの3ℓ直列6気筒ターボエンジンは381psだから、約2倍。50年でエンジン出力は約2倍になっている。
手元の資料によると、1978年の日本におけるBMW733iの価格は746万円とあるから、価格も約2倍になっていることがわかる。


ただし、端正なフォルムや機能的なインテリアはいま見ても魅力的で、「ヤングタイマー」や「ネオクラシック」と呼ばれる1970年代、80年代の名車が人気を集めていることも理解できる。
ちなみに初代BMW7シリーズは、厳格な自動車評論で知られ、日本のエンスージアストからも「PF先生」の愛称で親しまれた故ポール・フレール氏が「この最高のBMWに欠点を見出すことは難しい」と書いている。
はたして、最新の7シリーズも最高のモデルに仕上がっているのか。2026年7月より生産が始まるという。

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BMW/BMW i カスタマー・インタラクション・センター TEL:0120-201-438
サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。



