コンパクトで見ても乗っても上質だから、セカンドカーにぴったりかも……、と思ったボルボEX30クロスカントリーは、圧巻のポテンシャルを秘めていた。

北欧家具に囲まれているかのようなリラックス感
いささか旧聞に属するけれど、2026年2月に雪深い新潟県・妙高高原でボルボの電動SUV、ボルボEX30クロスカントリー ウルトラ ツインモーター パフォーマンスに試乗する機会を得た。当初は、本連載の「家族とシェアするクルマ」のカテゴリーで紹介するつもりだった。
けれども圧雪のワインディングロードや除雪の行き届いた高速道路など、さまざまなシチュエーションでドライブすると、「こりゃセカンドカーではなくファーストカーだな」という思いが強くなった。
もちろん充電というハードルをクリアする必要はあるにせよ、たとえば家族でボルボEX30クロスカントリーをファーストカーとして共用しながら、ちょっと古いクルマを趣味のセカンドカーとして所有する、といったフォーメーションが目に浮かぶ。

試乗インプレッションの前にこのクルマを紹介すると、ボルボEX30クロスカントリーは、小型BEV(バッテリー式電気自動車)の
車格としてはコンパクトでしかもシンプルなデザインなのに、静止していても上質さが伝わってくるのは、デザイン性の高さによるものだろう。この世界観はインテリアにも通底していて、使い古された表現であるけれど、北欧家具に囲まれているような静穏で豊かな気分になる。デザインにこだわる家族が乗っても、これなら納得するはずだ。
また、現行のボルボ車はGoogleのOSを搭載しているので、「オッケー、グーグル」と呼びかけると、スマートフォンを扱うのと同じ要領で目的地の設定や空調、オーディオなどが音声で操作できる。これもまた、デジタルネイティブな子女に受けるだろう。

あの名車を上回る加速パフォーマンス
カギを持ってクルマに近づくとロックが解除され、運転席に座るとシステムが起動する。ちなみに、EX30は2輪駆動(後輪駆動)と4輪駆動をラインランプするいっぽうで、EX30クロスカントリーは前後にふたつのモーターを備える4輪駆動のみの設定となる。
市街地を走り出して真っ先に感じるのは、その扱いやすさだった。まずサイズ感が日本の街中でちょうどいい。トヨタのヤリス・クロスよりわずかに大きい程度で、路地でのすれ違いや繁華街のコインパーキングでも気を使う必要がない。
BEVらしい滑らかで力強い発進加速に加えて、このクルマはアクセル操作に対してナチュラルにスピードを上げるから、運転に自信がない方や初心者でもドキドキすることなくステアリングホイールを握ることができる。

車内の静粛性はBEV共通の特徴であるけれど、このクルマの場合はタイヤからのノイズやボディが風を切る音も巧妙に遮断されているから、さらに静かに感じる。
結果として、サイズ感と快適性がバランスよく整っているから、乗り手を選ばないファミリーカーに仕上がっている。
興味深いのは圧雪路面の山道でのパフォーマンスで、雪の上なのにぴたりと安定して走るのだ。4輪駆動であることとスタッドレスタイヤがもたらす安定感に加えて、ESP(エレクトリック・スタビリティ・コントロール)が優秀だというのがその理由だ。ESPとは簡単に言うと横滑り防止装置で、タイヤが滑ることを感知すると、電子制御で4輪にトルクを加えたりブレーキをかけるなどして、車体の姿勢を安定させる。
ガソリンを燃やしてピストン運動を行い、それを回転運動に変換してタイヤに伝えるエンジンと違って、BEVの場合は電流を流した瞬間にピピっとタイヤに伝わる。したがって、ESPの伝達スピードも速いようで、それが雪道での安定感につながっている印象だ。

電気自動車は雪に弱いと思われる方もいるかもしれない。もちろん低温下だとバッテリーの性能は低下するし、ヒーターを効かせるほどに電力を消費するから航続距離にも影響する。ただし、こと滑りやすい路面での安定性の高さということだと、むしろBEVのほうが上手だと感じる。加えて、最低地上高が高くなっていることの恩恵で、雪道の轍もきにならない。これは雪道だけでなく、悪路でも強い味方となるだろう。
最後にドライ路面の高速道路で驚いたのは、その素晴らしい動力性能だった。フロントの156ps、リアの272psのモーターを全開にした瞬間のダッシュ力は圧巻だ。高性能車の指標とされる0-100km/h加速は3.7秒、ポルシェ911カレラの4.1秒を軽く上回る。

シックなインテリアのお洒落コンパクトSUVは、都市部のショッピングではスムーズで快適、雪道や悪路では頼りがいがあるSUV、さらにはクルマ好きがスポーツカー並みの加速力を楽しんでもいい。つまりいい意味での八方美人で、そんなクルマはなかなか存在しない。だからセカンドカーではなく、ファーストカーとして推したくなるのだ。

全長×全幅×全高:4235×1850×1565mm
ホイールベース:2650mm
駆動方式:フルタイム4輪駆動
フロントモーター最高出力:156ps
リアモーター最高出力:272ps
価格:¥6,490,000(税込)
問い合わせ
ボルボ・カスタマーセンター TEL:0120-55-8500
サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。



