CAR

2025.12.23

2025年の新型モデルで、自動車ジャーナリストが「欲しい」と思ったのはクルマはこれだ!

軽自動車からスーパースポーツまで、さまざまな新型車に試乗したなかで、「買いたいかどうか」という視点で選んだのがアウディSQ5スポーツバックだった。

2025年の新型モデルで、自動車ジャーナリストが「欲しい」と思ったのはクルマはこれだ!

第一印象は芳しくなかったけれど……

ありがたいことに、2025年もさまざまなニューモデルを取材することができた。「速い」とか「よく曲がる」、あるいは「デザインがいい」とか「好燃費」などなど、クルマには様々な評価軸がある。いろいろな観点で評価した最後の最後、試乗車から降りるときに目を閉じて、胸に手をあてて考えるのは、「じゃあ、自分でお金を出してこのクルマを買いたいか?」ということだ。

2025年に乗った新型車のなかで、一番強く「買いたい」と思ったのは、夏から日本への導入が始まったアウディSQ5スポーツバックだった。

モデル概要を簡潔に記すと、アウディQ5は同社のミドルサイズのSUVで、スポーツバックはそのクーペSUV版。

標準仕様のアウディQ5/Q5スポーツバックが2ℓの直列4気筒ガソリンまたはディーゼルエンジンを搭載するのに対して、スポーツ仕様のSQ5は最高出力367psを発生する3ℓのV型6気筒ターボエンジンを積む。ちなみにQ5とSQ5のパワートレインは、すべてがマイルドハイブリッド化されている。

左が標準仕様のアウディQ5スポーツバックで、右がハイパフォーマンスのSQ5スポーツバック。ややこしいけれど、クーペSUVではないオーセンティックなSUVスタイルのアウディSQ5もラインナップする。

率直にいって、初対面の印象は芳しくなかった。フロントグリルのメッシュのパターンが大柄になって、イカつくなった表情に違和感を抱いたからだ。それでも真横から眺めたときのルーフラインは流麗だし、なにより運転席に腰掛け、アウディらしい機能的で抑制の利いたインテリアに囲まれると、違和感はすーっと鎮まった。自分が少しだけ頭のよい人間になったような気がする内装デザインだ。

後方に向かって優雅な弧を描くルーフラインの美しさが、アウディSQ5スポーツバックのデザイン的なハイライト。SUVの強さとクーペの美しさの“いいとこ取り”だ。

アウディは、自動運転の未来を見据えて、「スフィア(球体)」というシリーズのコンセプトカーを発表している。これは、乗員を取り巻く環境(球体)を第一に考えてデザインするというもので、従来のクルマが「エクステリア」→「インテリア」の順にデザインしていたことを考えると、斬新な発想だ。

ドライバーを取り囲むように配置された大型タッチスクリーンや、助手席側にも液晶画面が装備されるなど、新型アウディSQ5スポーツバックのインテリアからも「スフィア」の萌芽を見てとれる。

アウディの最新のデザイン・コンセプトに基づいたインテリアで、スイッチやダイヤルなどがほとんど見当たらない。造形や色使いがシンプルなのに上質さを表現しているあたりに、デザイン性の高さが感じられる。

これ1台で、すべてを満たす

走り出して感じるのは、すべてにおいて手応えが繊細だということだ。ハンドルやアクセルペダル、あるいはブレーキペダルに伝えた入力が、素早く、正確に反映されることから、丁寧に開発されていることが伝わってくる。

スタートすると真っ先に、乗り心地がいいことに好感を持つ。試乗した車両にはオプションの「アダプティブエアサスペンション スポーツ」が装着されていて、そのハイテク装置の効果もあってか、路面の凹凸を突破するときのショックを上手にいなす。

いっぽうで、高速でカーブを曲がるときには、足まわりがしっかりと踏ん張って、ロール(横傾き)を上手に抑える。一般に、「しなやかな乗り心地」と「コーナーでの踏ん張り」は相反する傾向にあるけれど、このクルマは両立している。

ハンドルの手応えも良好で、タイヤがどの方向に向いているのか、路面の状況はどうなっているのか、といった情報をキメ細やかにドライバーに伝えてくれる。そしてハンドルを切れば、きれいなコーナリングフォームを保ちつつ、意のままに曲がってくれる。このレールの上を走っているかのような感覚は、アウディ独自の4駆システムであるクワトロの手柄でもある。

パワートレインも緻密に作り込まれている。

まず驚いたのは、マイルドハイブリッドには珍しく、発進時にEV走行を披露したことだ。そして速度が上がると、いつのまにかエンジンが始動して、さらに高速域ではエンジンが主役になる。エンジンとモーターがシームレスに連携するうえに、7段Sトロニックの変速もスムーズだから、オン・ザ・レールのコーナリングとあわせて走行感覚が実に繊細だ。ちなみに変速ショックの少なさには、「MHEVプラス」というマイルドハイブリッドシステムが貢献している。

そして「バランスド」「ダイナミック」「コンフォート」「エフィシエンシー」「オフロード」の5つの走行モードから最もスポーティな「ダイナミック」を選んでアクセルペダルを踏み込むと、V6ターボが「カーン」と耳に心地よいエグゾーストノートとともに回転を上げ、ドラマチックにパワーが盛り上がる。エンジンとともに育ってきた昭和のクルマ好きも、これには納得だ。

高性能車の指標となる0-100km/h加速は4.5秒と、スポーツカーと遜色のない加速性能を誇る。

といった具合に、インテリアとエアサス、そして電動パワートレインで来るべき未来を感じさせるのと同時に、内燃機関の楽しさも満喫させてくれる。SUVスタイルだからそこそこ荷物も載るし、クワトロだからタイヤさえ換えれば雪道も怖くない。スポーティに走らせても楽しいから、これ1台あれば実用からクルマ趣味まで、ほぼすべてを満たしてくれる。

最初は違和感を感じたフロントグリルも、試乗を終える頃には「新しくていいじゃん」と思えてきた。決して安いクルマではないけれど、この内容を考えると価格に見合ったバリューがある。2025年の個人的なMVPに推したい。

アウディSQ5スポーツバック
 全長×全幅×全高:4715×1900×1630mm
パワートレイン:3ℓV型6気筒ターボ+マイルドハイブリッドシステム
トランスミッション:7段AT(Sトロニック)
駆動方式:フルタイム4輪駆動
エンジン最高出力:367ps
エンジン最大トルク:550Nm
価格:¥10,580,000

問い合わせ
アウディ ジャパン TEL:0120-598106

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

TEXT=サトータケシ

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