2025年10月29日(水)、東京ビッグサイトにて「ジャパンモビリティショー2025」が開幕した。

2026年に発売されたら、争奪戦は必至
2023年にそれまでの東京モーターショーを引き継ぎ形でスタートした「ジャパンモビリティショー2025」は、クルマとバイクだけでなく、より幅広くモビリティ社会をアピールするイベントだ。
では、今回の注目モデルはなにか。初日のプレスデイ、様々なプレスカンファレンスやワールドプレミアなどが一段落した午後の遅い時間帯。もう一度会場をぐるりとまわって、最も人を集めているクルマを探した。
一番の人気モデルは、すぐにわかった。2025年10月21日に発表されたばかりのトヨタのランドクルーザー“FJ”である。マイクを握ったりカメラを向ける人で車両のまわりは大盛況、ひっきりなしに各国のジャーナリストがランクル“FJ”のブースを訪れていた。

ランクル“FJ”が注目を集める理由は、まず全長4575mmという使い勝手のよさそうなサイズ感と、最小回転半径5.5mという取り回しのよさだろう。ちなみに同社のコンパクトSUVであるカローラ・クロスの全長が4460mmだから、ひと回りほど大きい。ただしカローラ・クロスが一般的な乗用車に用いるモノコック構造であるのに対して、ランクル“FJ”は本格的なオフロード走行に対応するラダーフレーム構造を採用しているという違いがある。

ランクル“FJ”の4輪駆動システムは、リアデフロック機構を備えたパートタイム4WDだから、サイズこそ“ベイビー・ランクル”ではあるけれど、中身は本格派だ。
現時点では、最高出力163psを発生する排気量2.7ℓの直列4気筒ガソリンエンジンを搭載、6段ATを組み合わせると公表されている。発売は2026年の年央が予定されており、価格は明かされていないものの、常識的に考えて520万円からはじまるランクル“250”より価格帯は低くなるはずだ。

個人的にはマツダとMINIに注目
報道陣を最も驚かせたのは、間違いなくセンチュリーだろう。センチュリーがレクサスとは別の高級車ブランドとして独立することや、センチュリークーペのアンベールなど話題は満載で、強いインパクトを残した。
プレスカンファレンスでは、豊田章男会長が登壇した。豊田会長は、失われた30年と呼ばれるなど、活気と元気を失いつつある日本の現状にふれつつ、漫画やアニメ、音楽やスポーツといった分野では世界に日本のよさをアピールしていることを強調した。センチュリーもその役割を担うと語り、このクルマで「次の100年をつくる」と宣言した。つまりセンチュリーとは単なる車名や新ブランドの立ち上げではなく、次の100年をつくる挑戦という位置づけなのだ。
事実、目のあたりにしたセンチュリークーペは、ほかのどの高級車ブランドにも似ていない個性的なスタイルで、オーラをまとっていた。
実車はどんな形で登場するのか、そのブランディング戦略をはじめ、今後に要注目だ。

最後に、個人的に気になったモデルを2台紹介したい。
1台は、マツダ・ビジョンXコンパクト。資料をめくると「クルマと気取らない会話ができ」など、能書きはいろいろとあるけれど、単純にスタイリングが好ましい。実用車らしくシンプルな面とラインで構成しながら、ペットのような愛くるしいキャラクターも備えている。現行のマツダ2(発表当時の車名はデミオ)は2014年に発表されているから、とうに10年は超えている。もしこのまんまのデザインで新型マツダ2が登場したら……、と期待がふくらむ。
もう1台は、「ジャパンモビリティショー2025」がワールドプレミアの場となったMINIクーパーの「ポール・スミス ディション」。これにはちょっとした思い出があって、1998年にクラシックMINIにも「ポール・スミス ディション」が発表されて、ものすごく憧れたけれど当時は手元不如意で手が届かなかった。四半世紀の時を経て、再び「ポール・スミス ディション」が目の前に現れた!

フェラーリが参加しないなど、モビリティショーは東京モーターショーに比べて寂しくなったという声もある。それも理解するけれど、実際に会場に足を運ぶと、手の届かない夢のクルマからサプライズの新ブランド、さらには次の愛車候補まで近くで見ることができて、なんやかんや言ってもやはり楽しい催しなのだ。

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。




