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2025.12.25

【アイヴァン】養老孟司「世界の本当の面白さは“片付かないところ”」

1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウェアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた仕事人たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「人生を彩る眼鏡」の第29回は解剖学者の養老孟司。「人生を彩る眼鏡#29」「男を起動させる眼鏡」#1〜50

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解剖学者/養老孟司

養老孟司氏
眼鏡はE5 eyevan「m13」¥52.800(アイヴァン PR)。

仕事がなければ、朝から晩まで昆虫標本づくりをしている

「僕はね、道具というのは実用的であることが、いちばん大事だと思っているんです」

そう話す養老さんが選んだ眼鏡はE5 eyevanの「m13」。Form follows role and purpose――「形態は役割と目的に従う」という思想をもとに、道具としての機能性を追求したブランドであるE5 eyevan。ツーブリッジが特徴的なモデル「m13」はメンタルフレームのため、「ちょっと乱暴に扱っても丈夫なのがいい」という。顕微鏡を覗くのに眼鏡のかけ外しが多く、仕事とプライベートの境界のない自身のライフスタイルに適しているのだ。

「そもそも僕の世代はね、物がなかったんですよ。こんなふうに眼鏡を選べる時代がくるなんて思いもしなかった。だから、とにかく大事なのは壊れないこと。それは昔からずっと変わらないですね」

長年、解剖学者として東京大学で研究や教育に打ち込み、独自の視点で現代社会を読み解く著作を発表してきた。代表作『唯脳論』では人間社会を見つめる新しい視点を提供し、ベストセラー『バカの壁』などでは人の思考の限界と他者を理解することの困難を平易に描いてきた。身体性や自然、社会などの入り組んだ関係を読み解く一連の著作は、自明のものとされていた思考の枠組みを問い直す試みとして、広く支持され続けてきた。

そんな養老さんの日常を語る上で欠かせないのが昆虫標本づくりである。

「仕事がなければ、朝から晩までやっていますよ。僕はいつも使いやすい道具を自作して工夫しています。例えば、ピンセットも削って調整する。既製品では指が痛くなることがあるから。道具というのは、自分が何をしたいかに合わせて変えるもの。眼鏡だって本来はそういうものでしょう」

形というものは役割に従って決まる。機能が目的から自然に立ち上がる時、造形としての美しさもまた、そこに生じるということだろう。

それにしても、なぜ養老さんは何十年も虫に惹かれていきたのか。そう聞くと、「虫って、細かさが桁違いなんです」と養老さんは語った。

「人間ではつくれないあまりに多様な世界がそこにはある。それが面白いんですよ。それに分類学では、17世紀頃にキャプテン・クックと一緒に航海した人の標本もイギリスにあるんです。そうした長い歴史の一部を自分も担っている、という思いもありますね」

養老さんは言う。大事なのは物事や自然の多様さや複雑さへ感受性を開き、驚きや好奇心を失わないこと――。「でも、最近の社会は、なんでも“手続き”で片付くようになってしまっていますね」と語る時、その表情には柔らかさの中に厳とした雰囲気が漂った。

「以前、コップの湯に赤インクを垂らし『なぜ色が消えるか』と問うと、“そういうものだと思っていました”と答えた人がいました。考えない方法をずっと教えられてきたんでしょう。僕の考えでは、人は便利になった代わりに、考えなくても生きられるようになった。だけど、それだとね、物事を“面白い”と思えなくなるんですよ。世界の本当の面白さとは、片付かないところにあるのにね」

世界は簡単に片付かないからこそ面白い。そう話す養老さんの眼差しの凄みに、思わずはっとさせられた。

養老孟司/Takeshi Yoro
1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部を卒業後、解剖学教室に入る。東京大学大学院医学系研究科基礎医学専攻博士課程を修了。東京大学医学部教授、北里大学教授を歴任。東京大学名誉教授。『ものがわかるということ』など著書多数。2026年1月14日に『読むこと考えること』が発売される。

問い合わせ
アイヴァン PR TEL:03-6450-5300

【連載「人生を彩る眼鏡」】

TEXT=稲泉連

PHOTOGRAPH=操上和美

HAIR&MAKE-UP=AKANE

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