家族やパートナーとシェアするセカンドカーを考える不定期企画。今回は、フランス生まれのコンパクトSUV、ルノー・キャプチャーを取り上げる。

アール・ド・ヴィーヴルを体現したクルマ
パートナーとセカンドカーをシェアしようというときに、予想されるリクエストは「運転がしやすいクルマがいい」ということだろう。すると適度なサイズ感で、着座位置が高い(=見晴らしがいい)コンパクトSUVが有力な候補になる。
もうひとつ、「お洒落なやつがいい」というリクエストも予想されるけれど、これが難しい。「どないだー!」とぎんぎらぎんに飾るようなお洒落もあれば、削ぎ落としたシンプルな美しさをお洒落だとする向きもある。だからまったくの主観になってしまうけれど、いま日本で買えるコンパクトSUVのなかで一番お洒落だと感じるのは、この夏にマイナーチェンジを受けた新しいルノー・キャプチャーだ。

どこがお洒落かというと、フランス人が言うところのアール・ド・ヴィーヴル(art de vivre)を表現している点だ。この言葉は直訳すると「暮らしの芸術」となるけれど、実際はそんなに難しいことではない。お気に入りの食器を出し惜しみせずに毎日の食卓で使うとか、忙しくても読書や音楽を聴く時間を大切にするといったようなことで、要は丁寧に、自分らしい生活を送りましょうということだ。
ルノー・キャプチャーは高級車というわけではないけれど、長らく愛用している食器や家具のように普段の生活を心地よくしてくれるクルマで、そのさり気ないところにお洒落を感じる。
まずマイナーチェンジで一新されたフロントマスクは、パッと見、直線基調のシンプルなものだ。ただし、よくよく観察すると左右のヘッドランプの間に配置されたポリカーボネート製のカバーや、凝った形状のデイライトランニングランプによって、華やかな雰囲気が醸し出されている。
機能的な造形でありながら、ちょっとした遊び心を感じさせるという世界観はインテリアも共通だ。縦長の大型タッチスクリーンを操作する現代的なインターフェイスと、シフトセレクター周辺が宙に浮いているように見えるアイデアが相まって、毎日使える安心感と、毎日使っても飽きない楽しさが両立している。

石畳の市街地から高速走行まで幅広くカバー
ルノー・キャプチャーは、E-TECHと呼ばれるフルハイブリッドと、マイルドハイブリッドの2種類のパワートレインが設定されている。簡単に言うと、E-TECHはより強くモーターの存在を意識させ、モーターだけで走るEV走行も可能だ。いっぽう、マイルドハイブリッドはエンジンが主役で、普通に走っている限りモーターの存在を感じることはほとんどない。
カタログ値の燃費を比べると、E-TECHが23.3km/ℓ、マイルドハイブリッドが17.4km/ℓとそれなりの違いがある。ただし、実際にステアリングホイールを握って感じるのはキャラクターの違いで、E-TECHは静かで上品、マイルドハイブリッドは力強く元気に走る。
これは好みで選ぶほかないけれど、「運転がしやすい」というリクエストに応えるならば、モーターが低回転域でアシストしてくれるE-TECHのほうが、ストップ&ゴーが連続する市街地では扱いやすい。
コンパクトなサイズでありながら、高速道路でしっかりとした安定感を見せるあたりは、制限速度130km/hのオートルートで鍛えた強靭な足腰の賜物だろう。ステアリングホイールから伝わるしっかりとした手応えも安心感につながり、市街地での取り回しのよさとハイスピードでの信頼感がバランスしている。
普段は石畳の街をくるくると走り、休日にオートルートで都市間を移動するようなフランス人のクルマの使い方が、ルノー・キャプチャーの万能性を生んだと推察する。


リラックスして高速走行できるのには、ルノーの伝統ともいえるシートの出来のよさも大きく貢献している。どこか一点で体を支えるのではなく、体を包みこむようにホールドするあたりは見事としか言いようがない。
ゴージャスではないし、ものすごくエキサイティングというわけではない。でもおいしいブレッド&バターのように、日々の暮らしのクオリティを上げてくれる。かなりセンスのいいセカンドカー選びではないだろうか。

全長×全幅×全高:4240×1795×1590mm
パワートレイン:1.3ℓ直列4気筒ターボ+モーター
エンジン最高出力:158ps/5500rpm
エンジン最大トルク:270Nm/1800rpm
価格:¥3,890,000〜(税込)
問い合わせ
ルノーコール TEL:0120-676-365
サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。