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2026.01.12

M-1審査員はなぜ、「面白い」を一瞬で言語化できるのか。芸人に学ぶコメント力、2つのコツ

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を2025年M-1決勝に輩出した桝本壮志のコラム。

NSC人気講師・桝本壮志

「M-1を見ていて、審査員の芸人さんたちのコメントが凄く分かりやすく、かつ腑に落ちるので、すごいなと思いました。短時間にコメントをまとめたり、簡単な言葉で人に伝えるコツってありますか?」という相談をいただきました。

ハイレベルな漫才師たちのネタを見て、「どこが面白かったか?」「なぜ面白いのか?」「点数が高い(低い)理由は何か?」を、瞬時に言語化し、独自の視点で解析しつつ、端的にまとめる。

なぜ、賞レースの審査員をつとめる芸人さんたちは、自分の「好き」や「面白い」を、あのように歯切れ良く、かつ説得力ある言葉で表現できるのでしょうか?

そこで今回は、1日に120組のネタを見ることもある僕が、記憶に新しいM-1グランプリをもとに、『芸人さんの「好き」や「面白い」を伝える言語化のコツ』を、ゆっくり紐解いていきたいと思います。

コツ①:「何を言うか」でなく「何秒で言うか」

まず、あなたが会議などで発言をするとき、「意見」というより「演説」になってしまっていることはありませんか?

とくに「好き」や「面白い」を伝えようとすると、つい力が入って「語り」になってしまうことがありますよね。

実は、M-1の審査員の念頭には“「何を言うか」でなく「何秒で言うか」”があります。

賞レースは生放送なので、全体を構成する尺に制限があり、審査員のコメントは1人あたり30秒が相場です。

この30秒という尺は、喋ってみると思いのほか短く、遠回しに語ってしまうと、「着地」や「まとめ」が弱くなります。

なので芸人さんたちは、早めに核心部にふれます。例えば、王者・たくろうの1ネタ目の講評では――

礼二さん「しゃべくりではないが、ボケの1つ1つが笑える」
大吉さん「練習していないように見えるスゴさがある」
駒場さん「(ボケが)挙動不審になる理由があった」

といったように、無駄をはぶき自分の感性が捉えたコアから語るので、私たち聴衆は「大トロ」を味わうような満足感を得るのです。

この、芸人審査員の短く分かりやすい講評のヒミツ、「発言のタイムマネジメント」はビジネスシーンでも有用です。

もしも、会議のファシリテーターや取引先に話を振られた場合、「何を言おうか?」でなく「何秒で言おうか?」という思考にシフトチェンジしてみましょう。

そして、会議や相手の重要度、置かれているポジションに応じて、15秒~30秒くらいの体内時計を育てていきましょう。

最初は難しいかもしれませんが、大丈夫。何となくの秒数を念頭に置いておくと、無駄なく、端的に意見を述べ、スマートにバトンを回せる「芸人さんの言語化スキル」に近づいていくはずです。

コツ②:すぐにマネできる「審査員の構文」

M-1審査員は、点数に差異をつけ、その理由を述べなくてはならない難しい役回りでもあります。

これは、部下の企画の選定、仕事の査定、日々の指導をしなければならないリーダーポジションにも似ていますよね。

先日の大会における審査員のコメントを分析してゆくと、ある構文のような「型」に気づきます。

自分のつけた得点が高いにせよ低いにせよ、必ず最初の約10秒間は、前述のような「自分の感性が捉えた面白さ」にふれて――
▼点数が高い場合→ さらに「なぜ面白いか?」、そのメカニズムを独自視点で紡いでいく。
▼点数が低い場合→ 残りの約20秒を使って「強いて言えば」を明かし、加点できなかった理由へと着地していく。

(一例)
「後半の伸びがなく、失速しているように感じた」
「コントより、2人の掛け合いのほうが笑いをとれたのでは?」など。

この「型」から学ぶべきは、
・対象物を「美点」と「欠点」の2つの視点で捉えて、どちらもコメントができるようにメモをとる
・評価点が低くなり、欠点を伝えなくてはいけない場合でも、まずは敬意を払って“美点→欠点の順で語る”
といった手法や態度です。

これは、特に若手育成や、ラポール(信頼関係)が築けていない取引先とのやり取りでも有用でしょう。

皆さんも、M-1の審査員芸人さんの言語化のコツ、「発言のタイムマネジメント」と「順序の型」を取り入れてみてください。

では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。
新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中!
桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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