PERSON

2023.08.21

もう「自己肯定感」って言葉に悩むの、やめませんか?

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位の桝本壮志のコラム。今回のテーマは「自己肯定感」。

それは「自己肯定感の低さ」というより「人間らしさ」では?

「自己肯定感を高めたいですか?」

いま僕は約1500人の生徒を受け持っていますが、ほぼ100%が「YES」と答えます。

「じゃあ、なぜ高めたいの?」

そう聞くと、実にさまざまな理由が返ってきます。

  • 失敗やミスを恐れてしまう
  • 他人の目や評価が気になってしまう
  • ライバルや同僚と自分を比べてしまう
  • 否定や忠告されると怒りが湧いてくる
  • 自信がないので恋愛に消極的etc.

たしかに「自己肯定感=ありのままの自分を肯定する感覚」は高いほうが良いでしょう。

生徒が答えたような「自己肯定感の低い人の特徴」はネットやSNS上に溢れ返っていますが、僕の見立てでは、その多くは誰もが該当しそうな“人間あるある”。

言い換えると“人間らしさ”なのに、ネット社会によって「高めなければ」という人を量産している気がします。

なので、まずは「自己肯定感」という言葉に捕らわれ、悩むのをやめましょう。

そして、自己肯定感の高い人を「能力のある人」だと思っている方も多いです。その自己肯定感の捉え方は「IQ」に近い感覚です。

肯定感の高い芸能人は「嫌われてもいい」生き方を選んだ

しかし、自己肯定感の高さは、生まれ持った能力や資質ではありません。“気の持ちよう”です。もっと言えば、偏差値のように努力して上げていくものではなく、サウナで“ととのう”に近いです。

体内の血流を良くし、脳に酸素を送り、リラックス状態をつくる、これが一番です。

では、日ごろ生徒たちに送っている酸素を、少し届けてみましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。

1、まず「高めたい」と思った自分をホメる。

「私、自己肯定感が低いんです」と相談してくる生徒に、僕は「あなたは、すでに課題に気づけている人だよ」と答えます。このコラムを読んでいる方も同様です。

例えば「自転車に乗りたい」と思った子供は、いつか乗れるようになります。これは無意識に「乗れた方がいい」という課題に気づいて実行したからです。

同じように“肯定感が低い”と思った人も自己課題を見出せた人ですし、「改善していこう」という心が起動している人。

“乗りたい”と思った人だけが“乗れるようになる”ように、あなたはもう“肯定感を高める入口に立っている人”なんです。なので、気づけた自分を誇りましょう。

2、「欠点」は、あなたの「欠かせない点」でもある。

誰にでも欠点はありますが、同じくらい美点もあります。

例えば、前述した「失敗やミスを恐れてしまう人」は“丁寧な生き方をしている人”ですし、「自信がないので恋愛に消極的な人」は“奥手な自分を題材にしたコラムや小説を生み出せる人”でもあります。

欠点と美点は表裏一体ですし、欠点はあなたにとって欠かせない点でもあるので、眉毛を抜きすぎると“整わなくなる”ように、欠点をムダ毛だと思って抜くと美点まで抜いてしまうのでご用心!

3、肯定感が高い人は「選ばれし人」ではなく「選んだ人」

メディアで生き生きしているように見える芸人やアイドルも、実は“元・肯定感が低い人”がとても多いんです。では、なぜ彼らは快活に見えるのでしょう?

僕は“思考を変えることを選んだ人”だと思っています。

例えば、「楽しいから笑顔なのか? 笑顔だから楽しくなるのか?」これは難しい問いですが、彼らは“まずは笑顔でいこう”を選択しました。表情から感情をつくっているんです。

「嫌われたくないか? 嫌われていいか?」この問いに対しては“嫌われてもいい”。

所詮、私たちがどのように行動しても、嫌いになる人は必ずいます。みんなに好かれようと努力しても、なかには八方美人が嫌いな人もいます。これが社会です。

彼らは、嫌われることを恐れるより、自分を好いてくれる人を愛でることを選択しました。そう、自己肯定感が高く見える人は、選ばれし者ではなく、選んだ人なんですね。

それでは、また来週お会いしましょう。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

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