今回はフェースを閉じてアプローチを打つ際に、バウンスをうまく使うコツを紹介する。

フェースを閉じたアプローチも正解
ゴルフにはさまざまなスイング理論やスタイルがあり、「ゴルファーの数だけスイングがある」と言っても過言ではない。アプローチショットも同様で、その打ち方は個々の骨格や日常の身体の使い方によって自然と変わってくる。
一般的にアプローチは、フェースをスクエアか開いた状態で打つのが基本とされているが、なかにはフェースを閉じて打ちたいという人もいる。
たとえば、フックグリップでクラブを握っているためそのほうが感覚的に合うという人もいれば、通常のショットと同じイメージでアプローチも打ちたいという人もいるだろう。
こうした考え方は、決して間違いではない。実際、PGAツアーの選手のなかにも、フェースを閉じた状態でバックスイングを上げ、アプローチを打つプレーヤーは存在する。
代表的な例としては、2025年5月のワンフライト・マートルビーチ・クラシックでツアー初優勝を果たしたライアン・フォックスだ。プレーオフで勝負を決めたアプローチでは、フェースを閉じたままバックスイングを行い、クリーンにボールをとらえてチップインバーディーを決めた。
ただ注意したいのは、フェースを閉じた状態とはリーディングエッジ(刃の部分)が地面に対して45度以上の角度となり、エッジが下を向いている状態だということだ。そのため、このまま打つとリーディングエッジが地面に突き刺さりやすく、いわゆる「ザックリ」と呼ばれるミスにつながりやすい。
このミスを避けようとして、ボールを上から“カツン”と打ち込もうとする人もいるが、それではボールの一点を正確にとらえる必要があり、アマチュアにとっては非常に難易度が高い。
フェースを開閉し、バウンスを滑らせる
今回は、フェースを閉じたアプローチにおいて、バウンスをうまく使うコツを紹介したい。
具体的には、フォックスの優勝を決めたアプローチがわかりやすいだろう。
インパクトの前後でフェースを巧みに開閉し、地面に沿ってバウンスを滑らせながら、フォロースルーではフェースを開いていた。つまり、フェースの開閉とバウンスの滑りを組み合わせた、理にかなったテクニックが使われていたのだ。
この打ち方を正面から見ると、クラブは「U字」を描くような軌道をとる。一見すると手先でクラブを“こねている”ようにも見えるが、実際にはフェースの開閉とバウンスの滑りを活かした、合理的なスイングだ。
このときに意識してほしいのが、グリップエンドの動き。バックスイングでは、グリップエンドが目標方向を指し、フォロースルーでは目標の反対方向を指すように動かすことが重要だ。「手でクラブを操作しよう」とするのではなく、「グリップエンドの向きをコントロールする」意識を持つことで、手先でクラブを操作する動きを抑えられる。
また、クラブヘッドの軌道についても注意したい。とくに、フォロースルーでクラブヘッドが体の内側に入りすぎると、フェースが過度に閉じる原因となる。ヘッドが目標方向にまっすぐ出るように意識しよう。
フェースを開閉させながら、クラブをまっすぐ動かすイメージを持ち、バウンスを滑らせる。これによりザックリのミスが減るだけでなく、トップのミスも減り、フェースにしっかりボールが乗る感覚が得られるようになる。結果として、距離や方向のコントロールも向上していく。
もちろん、初心者や中級者であれば、最初はフェースをスクエアや開いて使ったほうがアプローチを打ちやすいケースもあるので、無理に閉じて打つ必要はない。
フェースを閉じた方が打ちやすいと感じるゴルファーは、フェースの開閉とバウンスの滑りを意識することで、アプローチのミスを減らすことができるようになるはずだ。
シャットフェースのアプローチの動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。