“甲子園の主役”は、なぜ遠回りしたのか――。ロッテ・藤原恭大が今季、打率.300超と確かな結果を残している。高校時代から追ってきた記録と記憶から、その進化の軌跡をひも解く。

ロッテ・藤原恭大が打率.300超え
開幕から約1ヵ月。近年は投高打低の傾向が強くなっているプロ野球界において、2025年から2026年にかけて打撃成績を大きく伸ばしているのがロッテの藤原恭大だ。
昨年はプロ入り後初めて規定打席をクリアして111安打を放ち、パ・リーグ10位となる打率.271をマーク。今年も既に9度のマルチヒットを記録するなど開幕からヒットを量産し、リーグ4位となる打率.309をマークしているのだ(2026年4月30日終了時点)。
1年時から別格だった“身体能力”とセンス
そんな藤原は兵庫県尼崎市の出身で、中学時代は強豪として知られる枚方ボーイズでプレーしており、小園海斗(現・広島)とはチームメイトだった。大阪桐蔭に進学後も根尾昂(現・中日)とともに早くからその能力の高さは話題となっており、1年夏には早くもセンターのレギュラーに定着している。
そのプレーを現場で初めて見たのは1年秋の大阪府大会、対汎愛戦だった。藤原は1番、センターで出場しているが、そのプレーぶりは1年生離れしたものがあったのをよく覚えており、当時のノートにも以下のようなメモが残っている。
「シートノックから動きの良さは外野手の中でも一人だけ際立っている。全身を使って投げられており、腕の振りが鋭く、返球の強さも抜群。低くて伸びるボールの勢いは高校生レベルではない。
打撃も振り出しのスムーズさ目立ち、ヘッドスピードも十分。もう少し踏み込みの強さが出てくればなおよし。脚力も一級品」
この日は内野安打1本に終わっているが、その1本もノーアウト一・二塁からの送りバントを足で稼いでヒットにしたものであり、とにかくスピードはレベルの高い大阪桐蔭のなかでも際立っていた。
2年春に出場した選抜高校野球では5試合で5安打に終わったものの、ホームラン2本を含む長打4本の活躍でチームの優勝に大きく貢献。この活躍もあって、2年から藤原の名前は全国に鳴り響くこととなった。
順風満帆ではなかった高校時代の停滞
ただその後の藤原は決して順風満帆だったわけではない。
2年夏の甲子園では3試合で2安打に終わり、チームも3回戦で敗退。秋には膝を負傷し、3年春の甲子園では連覇を達成したものの、持ち味のスピードをアピールすることはできなかった。
覚醒の兆し。5打数5安打に見た“打撃の変化”
しかし3年春から夏にかけて、藤原はさらに進化を遂げることとなる。
特に印象深いのが選抜後、初めての公式戦出場となった2018年5月26日の明石商との試合だ。第1打席の初球をいきなりライト前ヒットとすると、その後の打席でも勢いは止まらず5打数5安打1四球で6打席すべてで出塁し、タイムリー2本で2打点とトップバッターとしてこれ以上ない活躍を見せたのだ。
当時のノートにも以下のようなメモが残っている。
「攻守ともに故障明けということを感じさせないプレー。厳しいコースのボールは無理にフェアゾーンに打とうとせずに強く振り切って強烈なファールにし、その後に来たボールをしっかりとらえてヒットにする。
強く引っ張るだけでなく、センターにも強い打球。追い込まれてからは強引にならずに上手く合わせることができており、ミート力は以前と比べて明らかに上がった印象を受ける。
芯でとらえた時の打球の速さも間違いなく超高校級。次の塁を積極的に狙う姿勢、センターからの低くて強い返球も見事という他ない」
甲子園で証明した“完全体”のポテンシャル
そして迎えた3年夏の甲子園。藤原は4番打者として6試合で26打数12安打、3本塁打、11打点、打率.462という圧倒的な成績を残し、チームを春夏連覇に導いて見せた。
初戦の作新学院戦ではライト前ヒットを相手が後逸して一気にホームインするという場面があったが(記録はシングルヒットとライトのエラー)、この時のベース一周のタイムは14.70という数字が残っている。
ベース一周は15秒を切れば俊足と言われており、スピード面も完全に戻ったことを印象づけるプレーだった。
プロで伸び悩み、それでも消えなかった“期待値”
プロ入り後は1年目にいきなり開幕スタメンに抜擢されたものの、怪我と調子の波などが課題でなかなか一軍定着を果たせずにいたが、冒頭でも触れたようにようやく2025年からレギュラーに定着している。
ただ、高校時代の輝きを知っているファンからすると、まだまだできるという印象が強いのではないだろうか。それだけに2026年はこの調子をキープして、タイトル争いに絡むような活躍を見せてくれることを期待したい。
■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

