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2022.01.13

令和の怪物、ロッテ佐々木朗希の歴史に残る高校時代のベストピッチング──連載「スターたちの夜明け前」Vol.21

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。連載【スターたちの夜明け前】

9回を完投して100球以上。ストレートの平均球速は147.5キロ

毎年多くの新たなスターが誕生するプロ野球の世界だが、今年、最も飛躍が期待できる選手の1人と言えるのが佐々木朗希(ロッテ)ではないだろうか。1年目の2020年は体作りに専念して二軍でも公式戦登板なしに終わったが、昨年は5月に一軍デビューを果たすと、クライマックスシリーズでは第1戦の先発を任されるなどエース格へと成長。レギュラーシーズンの成績は3勝2敗ながら防御率は2.27をマークし、イニング数を上回る三振を奪うなどとても20歳とは思えない結果を残した。シーズン終盤の状態を1年間維持することができれば、今年はタイトル争いに加わってくることも十分に考えられるだろう。

プロ入り前から高い注目を集めていたため、筆者も高校時代の佐々木を現地で4度見ているが、甲子園はおろか東北大会に一度も出場していない選手としてはかなり多い部類と言える。初めてそのピッチングを見たのは2年夏の岩手大会、対盛岡三戦だ。この試合で背番号20をつけた佐々木は先発のマウンドに上がると、試合開始の初球にいきなり153キロのストレートを投げ込むと、2回には当時の自己最速となる154キロをマーク。8回以降は疲れからか少しスピードが落ちたものの、9回を完投して100球以上を投げながらもストレートの平均球速は147.5キロとプロでも上位の数字を残したのだ。

スピードだけではなく189㎝(当時)の長身と長いリーチを持て余すことなく使えるフォームも素晴らしく、もしこの年のドラフトで佐々木が高校3年生だったとしても1位指名を受けていた可能性は極めて高いだろう。結局、次の試合で佐々木が登板せずにチームは敗れたが、この試合を機に佐々木の注目度は一気に高まることとなった。

2019年3月30日作新学院との練習試合。福田真夢との対戦

そして佐々木の怪物ぶりが最も発揮された試合として強く印象に残っているのが、翌年春の2019年3月30日に行われた作新学院との練習試合だ。この日は佐々木の最終学年での実戦初登板ということもあって、会場となった矢板運動公園野球場には日米18球団、45人のスカウトが集結し、テレビ局のカメラまで訪れる物々しさだった。対戦相手となった作新学院の岩嶋敬一部長の話では当初学校のグラウンドで試合を予定していたが、スカウトと報道陣からの問い合わせが殺到したため急遽球場を確保したとのことで、高校生の練習試合として異例中の異例と言える。そしてそんな大注目の中で見せた佐々木のピッチングは前年夏のインパクトを更に超えるものだった。

試合が行われた時間帯の気温は8度と投手にとってはかなり厳しい環境だったにもかかわらず立ち上がりから150キロ台のストレートを連発すると、2回にはこの日最速となる156キロをマーク。この年のドラフト候補に挙げられ、現在は中央大でレギュラーとして活躍している石井巧との対戦でもストレート3球で空振り三振を奪ったが、バットに当たりそうな気配すら感じられなかった。

中でも衝撃だったのが7番を打つ福田真夢との対戦だ。佐々木が投じた内角高めのボールは福田の頭を直撃。球審も動揺してか死球を宣告したが、打者の福田はそのボールに対して確かに空振りしていたのだ。ちなみに福田は打順こそ下位ながら、前年夏の甲子園にも下級生ながら出場しており、決して実力がない選手ではない。そんな選手が頭に当たるようなボールを避けることなく空振りしているということが、佐々木のボールがいかに異次元のものだったかをよく物語っている。

結局この試合の佐々木は不運なスリーベースと自らのエラーで1点こそ失ったものの、3回を投げて被安打1、6奪三振と圧巻の内容でドラフトイヤーの初登板を投げ終えることとなったが、バックネット裏のスカウト陣からも興奮している様子が伝わってきた。筆者も20年以上ドラフト候補のプレーを見続けているが、大学生や社会人まで含めても、間違いなくナンバーワンの衝撃だったのはこの日の佐々木のピッチングである。佐々木自身も高校時代のベストピッチングとしてこの練習試合を挙げているが、この日の快投によって佐々木が“令和の怪物”になったと言えそうだ。

ただ昨年の佐々木を見ているとその才能はまだまだ底を見せていないことは明らかである。プロ入り3年目となる2022年、また我々の想像を超えるような進化を見せてくれることを期待したい。

【第20回 青柳晃洋(阪神)】

Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

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