PERSON

2025.02.06

ロッテ35年ぶりの球宴MVP&ベストナイン受賞。打てる捕手・佐藤都志也

プロ入りから“打てる捕手”を目標に掲げ、プロ5年目にしてオールスターMVP、初のべストナインに輝いたロッテ・佐藤都志也がスターとなる前夜に迫った。

東洋大時代の佐藤都志也。

球宴MVPに輝き、初のベストナイン受賞

プロ野球とアマチュア野球で最もレベルの差があると言われるポジションが捕手だ。近年は扱うデータ量も増えており、複数のキャッチャーを併用して戦っている球団も増えている。

なかでも貴重な存在が打撃力も備えた捕手だが、2024年そのポテンシャルを大きく開花させたのが佐藤都志也(ロッテ)だ。

プロ5年目で初めて規定打席に到達すると、パ・リーグで4位となる打率.278をマーク。オールスターに初めて選ばれると第2戦では、球団では35年ぶりとなるオールスターMVPに輝き、初のベストナインも受賞した。

軽快なフットワークとスローイング

佐藤は福島県の出身で中学時代は軟式野球部でプレー。高校では地元福島の強豪である聖光学院に進学した。

初めてそのプレーを見たのは3年春に出場した東北大会の対柴田高校戦だった。まず目立ったのがその軽快なフットワークとスローイングだ。

キャッチャーのイニング間のセカンド送球のタイムは2.00秒を切れば強肩といわれるが、この日の佐藤は4度2.00秒未満を記録し、最速は1.90秒をマーク。

また、5番を任されていた打撃でも第3打席で四球を選んで出塁し、第5打席にはライトオーバーのタイムリースリーベースを放ってチームの勝利に貢献した。

当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「地肩の強さも十分だが、それ以上に捕球から送球の持ち替えるスピードの速さが目立つ。肩に頼らずフットワークを使って投げられ、バント処理での出足も鋭い。余裕を持って投げてセカンド送球は1.9秒台。

(中略)

打撃も無駄な動きがなく、コンパクトに鋭く振り出しており、スイングの形の良さが目立つ。しっかりとらえた打球は楽にライトオーバー。捕手ながら脚力も抜群。

ただ、足を生かそうとし過ぎて時折、走り打ちになるのはもったいない」

メモにもあるとおり俊足でも目立つものがあり、第2打席の送りバントでの一塁到達タイムはスタートが遅れながらも4.01秒を記録。この約2ヵ月後に出場した夏の甲子園ではトップバッターを任されており、そのスピードをよく物語っている。

攻守の安定感

高校卒業後は東都大学の強豪である東洋大に進学。2年春には打撃を生かしてファーストとして起用されると、いきなり打率.483をマークして首位打者とベストナインを獲得。

3年からは本職である捕手に戻ると、それ以降は大学日本代表の常連となった。

大学時代はプレーを見る機会も多かったが、特に際立っていたのが攻守の安定感だ。

大学日本代表として出場した試合も含めて合計17試合を見ているが、ノーヒットに終わったのは1試合だけだった。

また、セカンド送球のタイムもすべての試合で1.9秒台をマークしている。

大学生の場合、下級生の頃からレギュラーになると、上級生になるにしたがって少し力を抜いたようなプレーを見せる選手も多いが、佐藤に関してはそのような様子はまったく見られなかった。

プレーの安定感は実際の成績にもよく表れている。

レギュラーを獲得した2年春から4年秋までの6シーズンの打率を見てみると.483(2年春)、.345(2年秋)、.358(3年春)、.220(3年秋)、.306(4年春)、.302(4年秋)と5シーズンで3割以上をマークしているのだ。

東洋大が所属している東都一部は全国でもトップのレベルを誇り、毎年のように上位指名される投手を輩出している。そのなかでここまでの成績を残し続けられる選手、しかもキャッチャーというのはなかなか出てくるものではない。

ドラフト2位という高い評価でプロ入りしたが、それも妥当だったと言えるだろう。

プロ入り後も田村龍弘、加藤匠馬(現・中日)、松川虎生などとの競争でレギュラー獲得は簡単でなかったが、着実に力をつけて完全にチームの看板選手へと成長している。

冒頭でも触れたように、現代のプロ野球界で打てるキャッチャーは貴重な存在であり、そういう意味でも佐藤の台頭はロッテにとっても日本球界全体にとっても大きなプラスと言えるだろう。

このオフにはソフトバンクで長年正捕手として活躍してきた甲斐拓也がFAで巨人に移籍しただけに、攻守にさらなる存在感を示して名実ともにパ・リーグナンバーワン捕手となってくれることを期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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