まだまだ謎に包まれた男、福田淳(あつし)。なぜだかいつも周りの人間から頼られ、案件を持ち込まれ、奔走する。そして常に国内外を飛び回り、一日一日を本気で楽しむ。多岐にわたる企業の経営を担い、タブーをタブー視せず、変化を模索する男の人生哲学とは? 第16回目は所属するコミュニティのために、自身ができること。

1965年大阪府生まれ。連続起業家。スピーディグループCEO(現任)、STARTO ENTERTAINMENT創業CEO、ソニー・デジタル・エンタテインメント創業CEO。世界19ヵ国での出版事業、日本でタレントエージェント、LAでアートギャラリー運営、リゾート施設展開・無農薬農場開発、スタートアップ投資など世界中でビジネスを展開する。『好きな人が好きなことは好きになる』など著書多数。
均一化されているからこそ日本の都市は深掘りしやすい
とっておきの会員制レストランで、シェフの「おまかせ」をいただく。そんな日があっても素敵ですが、僕はレストランで「おまかせ」できないタイプ。もちろん、お店のお薦めが一番美味しいというのはよくわかりますし、実際に感動したこともあります。プロがその日のベストを出してくれるわけですから、間違いないですよね。
ただ、今日は魚を食べたいとか、好きな順番で食べたいとか、食事は「自分で組み立てて楽しむもの」という感覚があります。与えてもらったものをそのまま受け取るのもいいけれど、どこかで自分なりに「考えて楽しみたい」と思ってしまうんです(ジムの後のディナーだと前菜後回しで速攻フィレステーキが食べたい!)。
“出来ない”があるから出来るようになる
それは「コミュニティ」(ひとつの社会)においても同じです。会社にいる時も、地元のおじさんやおばさんたちと井戸端会議している時でも、常に「このコミュニティのために、自分に出来ることと出来ないことは何か」という視点で考えるようにしています。何か自分で出来るのであれば、コミュニティに対して「おまかせ」の受け身ではいられません。人間ってひとりでは生きていけません。だから無数のコミュニティがあるのです。
そしてそこには常に“出来る人”と“出来ない人”の助け合いがあります。ターザンみたいに強靭な肉体があれば、ひとりで生きていけるかもしれません。でも人間どこかで弱さがあるから、助け合ってコミュニティが出来上がり、人間の文明が進化してきたと思うのです(“出来ない”があるから、出来るようになるんです)。
大阪に「ホームドア」というホームレスの人たちを支援するNPO団体があります。大阪には西成などホームレスの多い地区がいくつかあり、大阪府民は幼い頃から「あのあたりは危ないよ」と教えられます。どうして危ないのか、なぜあの人たちには家がないのか、幼い頃から考え続けていた川口加奈さんが、2010年に19歳で立ち上げた団体です。
ホームレスのなかには、コミュニケーションをとるのが得意ではないから、働けなくなったという方もいます。そういう人には例えば街を歩いてもらって、どこに多くゴミが落ちているかなどiPadでデータをとり、自治体で活用してもらったり、他にも観光用自転車を乗り場まで運んだり、その人に合った仕事で支援しているのだとか。
元来彼らは、関西の気のいいおっちゃんたちなので、必要とされれば「ええで」と頑張ってくれる。そして社会と地域とつながることで立ち直っていった人も多くいるんだそうです。こういう提案型の良質なコミュニティが増えれば、社会ってもっと生きやすい場所になるのでしょう(選択肢がたくさんあるのが豊かな社会だと思う)。
もちろん、新しい出会いを求めて、会員制社交クラブに入るのもいい。だけど同時に、今自分が住んでいる街のコミュニティに対して、自分に何が出来るのかを考えることが大事だと僕は思うんです(この意識でみんなが小さなコミュニティをよくしていけば、全国すべてがよくなる)。僕は沖縄でバナナやマンゴーを作る仕事もしています。地元の人と楽しくやりとりしていますが、最近作りはじめた「乾燥バナナ」の包装は、福祉施設の人たちに手伝ってもらっています。発達障害や精神障害のある方が将来の就労に向け訓練する「就労継続支援B型」というサービスの一環として、来てもらっているのです。皆さんとても丁寧なお仕事をしてくださっています(うちの乾燥バナナはとにかく甘くて美味い!)。

自分に「出来ないこと」を純粋に見つめてみる
「会社」もまたひとつのコミュニティです。そして定年になって会社を去ったあと、次にどんなコミュニティに入っていくのか、しっかり考えなければいけません。コミュニティはひとつ出たら、ひとつ入る、もちろんいくつものコミュニティに入ったっていいでしょう。だって人間は常にコミュニティを求めているのですから。そして、新しいコミュニティを見つけるために大事なことは、純粋に「自分が出来ないこと」を考えてみることだと思うんです。
僕の場合、出来ないことだらけです。映画を作ることは出来ても、料理を作ることは出来ない。だからプロの料理人から料理を教わりたいと、その先も妄想してしまいます。きっと料理が出来るようになったら、振る舞いたくなるだろうな。なら10人くらい入れるオープンキッチンのある場所が欲しいな。でも招待した人がお酒を飲みだしたら長くなるから、昼間に振る舞おう。せっかく昼間なら、お昼休みに街の人が誰でも寄れる場所にしてしまおうか……。こうして新しいコミュニティもできてくるのではないでしょうか。
そもそも定年後の楽しみにとっておかないで、思いついた今、やったほうがいいですよね(老後っていつなんだ!? 歳老いた後って時間は存在しないですよ)。ということで僕は土井善晴さんの料理番組を見て勉強中です(土井さんの適当でよいという手際に憧れます)。
ちょっと蛇足ですが、先日カクテル教室を体験しました。プーケットに行った際に、地元のハーブを使ったカクテル作りを教えてもらったんです。そして、作ってみたカクテルがこれまた……不味かった(笑)。先生曰く、10回以上シェイクしてしまうと水っぽくなってしまうんだとか。でも、笑いながら、そのカクテルを他の生徒さんと飲んでいれば、自然と不味さも楽しさに変わっていくから不思議です。
純粋な気持ちで、自分の出来ないことを見つめ、それを超えていくべく、新しいコミュニティに入っていく。そしてそのなかで、常に「自分に出来ること」を探す。お金があるなら、それが福祉団体やNPOに寄付ということになってもいい。アイデアがあるなら、アドバイスでも企画出しでもいい。僕は「今日は何を食べるか」から「何を作ろうか」と、一歩自分の幅を広げられるように生きて、新しいコミュニティを作っていきたいと思っています。
Editor’s Note|真剣に、お悩みにアドバイス。福田経営塾、開講中
福田さんが最近始めた新しいコミュニティがあります。それが「Mr. F 経営塾」。経営者が経営者に向き合う、本音の壁打ちの場です。毎回6名ほどの経営者の方が、経営の悩みを相談するもの。
「いろいろな経営の悩みがあるのだなとこの塾をやっていて思いますし、みんなそれを乗り越えて社長業をやっている。先日も26歳の起業家が『いつまで続けられるかわからないからもう辞めたい』と言っていました。僕の回答に納得していただけたかはわかりませんが、僕も若い頃にこんなふうに悩みを吐きだせる経営塾があったらよかったなぁと思います」。
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