まだまだ謎に包まれた男、福田淳(あつし)。なぜだかいつも周りの人間から頼られ、案件を持ち込まれ、奔走する。そして常に国内外を飛び回り、一日一日を本気で楽しむ。第12回目はゲストを招いた番外編! ラジオ番組でともにパーソナリティをつとめる明石ガクトさんとの対談テーマはショート動画。時代の核心に鋭く切りこむ!

ショート動画から長尺へと導く
福田淳さんと、動画クリエイターでワンメディア代表の明石ガクトさんは、現在ラジオ番組『UMP〜未確認人物倶楽部〜』で共演中。ショート動画とポッドキャストの可能性、メディアの今後を熱く濃く、語り合う。
福田 本連載で初のゲストとなるのは、明石ガクトさんです!
明石 初ゲスト、光栄です!
福田 ガクトとの最初の出会いは、著書『動画大全「SNSの熱狂がビジネスの成果を生む」ショート動画時代のマーケティング100の鉄則』を拝読したことがきっかけ。そもそも僕は映画が好きで、少年時代に『戦艦ポチョムキン』などエイゼンシュテインの作品を何度も見ていました。そのなかで「カメラワークってこういうものなのか」と映画づくりの法則を学んだんです。ショート動画においても、法則を知りたくて、ガクトの本を読み、『これはショート動画界のエイゼンシュテインだ!』と感動して、お会いしたのが最初です。
明石 そこから、一緒にラジオ番組のパーソナリティをさせていただくことに。福田さんは大先輩ですけど、「アーチー」と呼ばせていただいております(笑)。
福田 「淳」なので沖縄の人からは頭文字をとって「アーチー」って呼ばれているものですから。
明石 このラジオ番組は、まだ世間に名を知られていない面白い人物をゲストに招くんです。今、「界隈」って言葉がよく使われていますけど、メディアが多様化するなかで「界隈」ってすごく細分化されている。ということは「その界隈では有名」だけど、全国的には知られていない面白い人がたくさんいるということで、そんな人を紹介するんです。
福田 第1回のゲストは、ユリエ・コリンズさんというスタンド・アップ・コメディアンでした。名前は知られていませんが、彼女の芸は切り抜かれてショート動画で拡散されていますので、実はその姿を見たことがある人は多い。ショート動画って自分とは別の「界隈」に立ち寄ることができて、一度再生したらアルゴリズムでどんどん新しい「界隈」が提示されるようになる。今までのメディアと違う世界観の提供の仕方なんです。そのなかで、新しい才能を見つけるのが面白いかもと。
明石 ここしばらく「TikTok売れ」という言葉が言われています。人気TikTokerが、筒井康隆さんの『残像に口紅を』という作品を紹介したところ、女子高生に大ヒット。1989年の作品が、数十年ぶりに重版がかかったそうです。要は若い人は新しいものとの出合いを、ショート動画のレコメンドを通して求めているということ。
福田 数十秒のショート動画が、読むのに時間がかかる小説へ、つないだってことですよね。
明石 ショート動画って瞬間的なもので、人の浅いところまでしか入りこめない。でも「本物」につなぐことはできる。そういう流れのなかで、僕らはポッドキャスト×ショート動画がアツいなって思っているんです。
福田 アメリカ大統領選の時に、ジョー・ローガンというポッドキャスターとトランプが対談した番組が、CNNやNBCの放送の倍以上の視聴者に見られていたんだそうです。これはなぜかというと、ショート動画として切り抜かれて拡散され、それを見た人が番組にアクセスしたから。
明石 本編を聞かずとも、切り抜かれたショート動画を何編か見れば、番組を全編見ていたような気になります。そうしてじわじわトランプ人気が上がった。だから僕らの番組も切り抜いてショート動画にしております! 見やすいショートで誘導して本編に来てもらうという。
福田 人間って根本的に、ひとつのことを理解するために、複数のものに触れ、ゆっくり時間をかける必要があります。ショート動画がキッカケとなって、3時間を超える映画『国宝』のような作品までヒットしていますよね。ナラティブ(語り手が紡ぐ物語)が必要なんです。
明石 ショート動画を見て細切れの時間を過ごす人が増える一方で、その反作用としてスマホの電源を切って、長尺の作品を堪能したいと思う人が増えていると、2014年に動画の会社を立ち上げてから、年々僕も強く感じるようになりました。

1965年大阪府生まれ。連続起業家。スピーディグループCEO(現任)、STARTO ENTERTAINMENT創業CEO、ソニー・デジタル・エンタテインメント創業CEO。世界19ヵ国での出版事業、日本でタレントエージェント、LAでアートギャラリー運営、リゾート施設展開・無農薬農場開発、スタートアップ投資など世界中でビジネスを展開する。『好きな人が好きなことは好きになる』など著書多数。
明石ガクト/Gakuto Akashi(右)
1982年静岡県生まれ。動画プロデューサー。ワンメディア代表取締役CEO。YouTube・TikTokなどを軸に動画コンテンツの企画・制作プロデュースを行う。著書に『動画2.0』(幻冬舎)『動画大全』(SBクリエイティブ)など。直近では「TikTok Ad Awards 2025 Japan」のクリエイティブ部門にてグランプリに選出されている。
SNSから逃れる若者と囚われ続ける中年
福田 ショート動画が連れて行く先は、こうした長尺の、しっかりと理解をして楽しむ「本物」のエンタメになっている。ちなみに24歳以下の若者のSNSトラフィックは2022年をピークに世界的に下がっています。SNSから若い人は距離をおきつつあるんです。
明石 確かに日中がっつりスマホに張りついているのは中年が多いかも。
福田 20代前半の方とお話ししたら、日中は機内モードにしていると! しょうもないメッセージで自分の時間を細切れにされたくないそうです。
明石 即レスするのは中年の証拠ってことなのかな……(笑)。ポッドキャストの可能性の話に戻りますが、意外と「耳が空いている」人はいるなという印象で。仕事に家事に忙しくても作業をしながら、の「ながら」の時間にはまだエンタメが入りこめる余地がある。
福田 忙しい人こそ、ポッドキャストを聞くらしいね?
明石 そうなんです。そこにも可能性があって。だってソファに寝転んでスマホをスクロールして、目と手がふさがっている人より、目と手は仕事して、耳だけ傾けている人のほうが、生産的ですよね。生産的活動をしている人たちに何かを届けられたら、それはビジネスとしても意味があることでしょう。
福田 確かに。
明石 あと、ポッドキャストって、実は聞いている人同士の仲間意識がすごいんですよ。
福田 そうだね。特にラジオよりもポッドキャスト配信だと、時間の規定もないし「曲を流さないといけない」というルールもないから、仲間内で話している感が濃くなる。最近悩みをAIに相談する人が増えていますが、その感覚で番組にお悩みメールを送ることもできますよね。
明石 世代を超えて、プロダクティブな人たちの熱い支持を得られたら、コンテンツとして強い。あとは、居酒屋とかで隣の会話が面白くて、聞き耳をたててしまうことがまれにありますけど、ポッドキャストの番組にはそういう魅力がありますよね。整えられた番組より、リアルなものを多くの人が求めている印象があります。
福田 そうですね。ちなみに各アイドルのそれぞれのファンに「ファンダムネーム」ってありますけど、あの名前があることで、「みんなでつくっている」という一体感が生まれます。ポッドキャストのリスナーにもこの名前をつける番組が増えましたね。僕らの番組は「部員」にしていますが。
明石 未確認人物をともに探す部活なので。一緒に部活を盛り上げましょう、って(笑)。

福田 映画の話に戻るけど、昔は映画のネタバレって厳禁だったけど、今はネタバレを見てから劇場に行く人が増えているんですよね。
明石 そうかもしれないですね。ストーリーを把握して、それを追体験するために劇場に行く。
福田 Netflixのような動画配信サービスが始まったばかりの頃は映画ファンが怒っていたんですよ。「2時間の映画を30分でやめて続きを後日見るなんて」とか。で、これは僕の予測なんですが、劇場映画と動画配信サービスのコンテンツって今後は共存しなくなると思う。映画は映画館でしか見られなくなり、配信サービスは独自の作品のみを流すようになる。映画という体験価値と、動画配信サービスの価値は別のものになっていくのではと。
明石 そういえば最近は映画やドラマの公式がつくる切り抜きのショート動画も多いですよね。この秋話題だったドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の公式ショート動画は素晴らしかった。あれでドラマを見た気になって語る人もいるし、本編を見た人もたくさんいたはず。
福田 そうなんだ〜。
明石 先ほど、アーチーは映画を途中でやめるなんてけしからん、と言っていた映画ファンがいるとおっしゃっていましたが、なら本編から切り抜いてショート動画つくるなんて、もっとけしからんですよね(笑)。でもショート動画って、素晴らしい原液がないとつくれないんです。美味しくないウイスキーを炭酸で薄めても、美味しいハイボールにはなりません。
福田 ガクト、すごいよ!
明石 え、何がですか?
福田 僕のこの連載は、毎回「ゲーテ」の特集とリンクした内容にしたいと思ってるんだけど、今号の特集は「お酒」なんですよ。それをガクトに言ってなかったのに、見事につなげてきた……。
明石 ならもっと! そもそもクリエイターはハイボールを生産しようとしてはならないんです。世間に薄められたらもうそれはただの炭酸水になってしまうんですから。実は縦型のショートドラマだって、しっかりとした脚本があって役者もしっかり演技をし、つくり込まれていて、編集で短くされているだけ。最初から薄いものをつくろうとはしていないんです。
福田 うんうん。
明石 いきなり強い酒を流しこんだら喉がやけてしまうから、一旦飲みやすいショート動画という形で体験して、徐々に原液の濃さ、素晴らしさを味わえるようになれば、いいですよね。
福田 お酒につなげてくれてどうもありがとう(笑)。というか今ふと思ったけど、映画評論家の淀川長治さんって、ショート動画のハシリじゃない?
明石 どういうことですか?
福田 昔はテレビで映画放送する前に淀川さんの解説見てから、映画を見たでしょう? 淀川さんの解説そのものが面白いから、それだけで見た気になる人もいたし。淀川さんの過去のインタビューを見たら、「どんな映画にも必ずひとつはいいシーンがある、そこを語ればいい」とおっしゃっていて。まさに一番濃いところを「切り抜いて」いる。
明石 なるほど。
福田 僕もいつか、淀川さんみたいに時代を解説したいな。
明石 ん? でも淀川さんになってしまうと、「切り抜く」側になっちゃいません? アーチーには原液をつくってもらわないと。
福田 ああ、そうか(笑)。そして話は飛びますが、ガクトのワンメディアが「TikTok Ad Awards 2025 Japan」でグランプリを受賞しました。これは優れた広告クリエイティヴとして高い評価を得たということですね。
明石 ありがとうございます。「YOLU」というビューティーブランドのPR動画で受賞させてもらったのですが、これは見ている人に「切り抜いてもらう」という仕かけをつくりました。6人組のアイドルが、それぞれのライヴ配信中に寝落ちしてしまうというもの。配信は6人同時に行うのでファンは全員分を見ることができず、お互いに切り抜いて共有し、拡散してもらうというものです。
福田 ファンが協力し合うんだ。これこそさっきのファンダムネームの話に近くて、まさにファンが団結してひとつのものをつくっている、その過程が楽しいし、PR商品もより印象に強く残りますね。
明石 はい。僕らは完成したものを視聴者に渡すのではなく、飲み方は自由、好きに楽しんでと、原液を渡すイメージだったんですよ。
福田 やっぱり旨い原液がなければ、お酒もエンタメも盛り上がらないってこと。濃くて美味しい原液をこれからもつくり続けましょう!
Editor’s Note|今週はどんな未確認人物が!? 『UMP〜未確認人物倶楽部〜』
毎週木曜日22時半からふたりがパーソナリティをつとめるラジオ番組がinterFMで放送中。
”福田部長”を筆頭に、まだ世の中に知られていない才能を持った「Unidentified Mysterious Person(UMP)」を捜索、ゲストに迎えてその正体を根掘り葉掘り聞く番組。ラジオでの放送後はPodcastにて未放送トークも含めた1時間のロングバージョンが配信される。「より濃ゆいトークになっていますので、ぜひ配信も聞いてみてくださいね」(福田)


