2025年7月、双日がビジネスジェットのシェアリングサービスをスタートした。最新鋭の機体で世界を自在に飛び回ることで、ビジネスのスピードも、人生の密度も大きく変わる! 20年以上にわたりビジネスジェット関連事業に携わり、日本初となる超長距離ビジネスジェットのシェアリングサービスを実現した双日のキーマンが、その全容と想いを語った。

限りある時間の価値を最大化する
毎月1回、ニューヨークへ出張するビジネスパーソンがいたとしよう。
フライト時間は片道15時間。往復で30時間。さらにチェックインや出入国手続きなどを含めると、合計で33時間を移動に費やすことになる。これが年間12回となれば、移動時間は396時間、実に16.5日分に相当する。
この膨大な移動時間を、できる限り短く、かつストレスなく、仕事が前に進む時間へと変える。多忙なビジネスパーソンの時間を有効に活用するための手段として双日 ビジネスジェット事業部が手がけたのが、2026年末に運航開始予定の「シェア ジェット プログラム(SJP)」だ。20年以上ジェット事業に携わり、SJPの立ち上げを主導してきた双日 航空・社会インフラ本部 ビジネスジェット事業部 部長の櫻井洋平氏は、次のように語る。
「ビジネスジェットの最大の価値は、ビジネスパーソンにとって最も貴重な“時間”を最大化できる点にあります。出発30分前に空港へ到着すれば搭乗でき、クイックでストレスのない出入国が可能です。定期便が就航していない空港にも直接行けますし、機内では他人の目を気にする必要もありません。高速Wi-Fiも完備しているため、オフィスと変わらない環境で仕事ができ、移動中にビデオ会議や重要な意思決定を進めることもできます」

さらに、スケジュールの自由度がもたらす価値も大きい。
「フライトスケジュールを自分で決められるので、3日かかっていた出張を2日で終えられることも珍しくありません。浮いた1日をリフレッシュに使うこともできます。移動手段が自由になると行き先が変わり、行き先が変われば出会う人も変わる。20年間この仕事をしてきて、ビジネスジェットは“人生のインフラ”だと感じています。このインフラが変われば、人生が大きく変わる可能性があるのです」
シェアリングは「いいとこ取り」のハイブリッドなサービス

アメリカやヨーロッパでは、個人や企業がビジネスジェットを所有し活用することは珍しくない。ジェット機のシェアリングサービスは1980年代以降に定着し、もはやひとつの文化といえる存在だ。一方で、日本ではなぜこれまで本格的なサービスが生まれなかったのか。
「日本でも小型機を複数オーナーで共同所有する仕組みは存在します。しかし、SJPが提供するのは、太平洋横断が可能な大型の超長距離ビジネスジェットです。この規模のシェアリングサービスは日本初の取り組みになります」
日本では「ビジネスジェット」よりも「プライベートジェット」という言葉が先行し、富裕層向けの贅沢品というイメージが根強い。
「もちろんプライベートでの利用も可能ですが、私たちはあくまでビジネスの生産性を高める手段として提案したい。そのため、敢えて“ビジネスジェット”という言葉を使っています」
超長距離ジェット機のシェアリングという構想を実現するまで、櫻井氏は20年かけて“土壌”を整えてきた。

「これまでは、1機を所有するフルオーナーになるか、その都度チャーターするかの二択しかありませんでした。フルオーナーは、自由度が高い一方、初期費用や固定費の負担が大きい。チャーターはコストを抑えられますが、繁忙期は機体を確保できないリスクがあります。SJPは、その両方の“いいとこ取り”を目指したハイブリッドなサービスです」
SJPでは、利用が重なった場合に代替機を手配できる体制を整えている。
「これまで双日が導入支援・運航管理してきた機体があるからこそ実現できた仕組みです。この体制を築くまでに、本当に長い時間がかかりました」
最新鋭の機体と、最上級のこだわり
SJPで提供する機体は、ボンバルディア社の最新鋭機「Global 8000」と「Global 6500」の2機種。
「数多くの機体を見て、搭乗して、最終的に選んだのがこの2機です。故障が少ないこと、長距離を飛べること、そして何より快適であること。この3点で間違いないと判断しました」
両機に共通するのは、圧倒的な安定性と快適性だ。
「翼が非常に安定していて揺れが少ない。フライト中、テーブルにワイングラスを置いても気にならないほどです。ゼロ・グラビティ(無重力)姿勢で座れる『Nuageシート』、時差ボケ軽減を意識した『Soleilライティングシステム』、業界最高水準の空気清浄度を誇る『Pur Airシステム』など、長距離移動でも疲れにくい設計になっています」
さらにSJPでは、独自仕様にも徹底的にこだわった。
「エントランスや前後の化粧室には床暖房つきのストーンフローリングを採用し、自動温水洗浄機能も導入しました。インテリアはウォルナットとレザーを基調に、高級感と自宅のような安心感を両立させています」
食事をはじめとする機内サービスも含め、最上級のホスピタリティを提供する準備が整っている。
1機を2~6名(社)で共同所有することで、フルオーナーに比べ初期費用・固定費を大幅に抑えつつ、専用機に近い自由度を実現するSJP。価格は1150万ドル(約17億円)から。
「2030年までに10機の販売を目標としています。まずは日本で価値をしっかり伝え、その後はアジア圏へ、さらにグローバルへと展開していきたい」
ビジネスジェットは、贅沢ではなく「自分の時間への投資」。その価値は、使って初めて実感できるはずだ。

2001年日商岩井(現・双日)入社。民間航空・ビジネスジェット分野に一貫して携わり、海外チャーター運航会社への出向を経て、2018年にビジネスジェット事業課を新設。2025年、ビジネスジェット事業部の新設を主導し、現在同部 部長。




