PERSON

2025.09.12

連続起業家・福田淳。長生きのために、会議の出席者全員に課していること

まだまだ謎に包まれた男、福田淳(あつし)。なぜだかいつも周りの人間から頼られ、案件を持ち込まれ、奔走する。そして常に国内外を飛び回り、一日一日を本気で楽しむ。タブーをタブー視せず、変化を模索する福田淳という男の連載、第8回目はなぜ人は長生きしたいと考えるのか、一風変わった視座に迫ります。

トレーニングする福田氏
福田淳/ATSUSHI FUKUDA
1965年大阪府生まれ。ソニー・ピクチャーズを経て、ソニー・デジタル・エンタテインメント創業。同社退職後、自身の会社スピーディ設立。LAでアートギャラリー、リゾート開発、沖縄で無農薬ファームなどの事業を行う。『好きな人が好きなことは好きになる』など著書多数。

笑いのない仕事で寿命をすり減らしてはならない

僕の趣味は、「長生き」です。月に1度の高濃度ビタミンC注射に、血液浄化は欠かしません。さらに自分の血液からリンパ球を分離採取し、活性化させてから体内に戻す「自己リンパ球免疫療法」は3年以上続けていて、医者からは「ウイルスへの抵抗力、疲労や炎症のコントロール力は、30代並みの数値」と言ってもらえました。ジムには1回2時間を週4で通い、幹細胞・ミトコンドリアの活性化のために高強度インターバルトレーニングも始めたところです(死ぬ気で取り組む長生き!)。

けれどそんな僕が、長生きのために一番必要だと思っていること、それは「笑いのセンス」です。健康のためにさんざんお金をかけておいて何を言っているんだと、それこそ笑われるかもしれません。でも僕は真剣にそう思うのです。だってギャグとか笑いは、心の余裕がないと出てきませんから。そして心の余裕がない人が果たして長生きできるでしょうか。もっといえば心に余裕がなくイライラしながら、あるいは笑いのない世界で120年生き続けることに、意味はあるのでしょうか。生きるために笑い、笑って生きることそのものを楽しむ。そうしていればどんどん長生きにつながっていくのではないか、そう思うのです。

もちろん、僕は常に心に余裕があるわけではありません。「つまらない会議に出るのが嫌だな」と思うこともあります。でもイライラしてはいけない、「どうやったら自分の心に余裕を持たせられるか」、どんな時もそのことにとにかく集中しているのです。

だから僕は「1会議1ギャグ」を義務化しました。無理やりにでもギャグを言うことで、少しずつでも笑いが生まれる。そして会議は少しだけ楽しいものに変わります。笑いのない仕事で寿命をすり減らしてはなりません。人生の貴重な時間を会議に費やしているわけですから、楽しまないとなりません。この「1会議1ギャグ」は会議の出席者全員に課しています。つまり1人1ギャグです(その義務がストレスだったりして! 笑)。

でも実際はギャグを言うことに慣れてくると、年代や立場を越えて仕事の議論が楽しくなってくるものなのです。笑いがあれば否定の意見も、多様な意見に様変わりするのです。怒りベースとした昭和的な職場環境は苦しいばかりで生産性が上がりません。だから、ギャグセン高めの企業ほど伸び代もあると思います。怒ってばっかりのボスだと、みんなやる気をなくしますよね(ボスは、笑点の円楽さんの気持ちで会議に挑むべし)。

物事を疑う柔軟さが笑いと長生きにつながる

生きていれば日々、ストレスはあります。嫌なことを言われる日もあります。でもその相手に対していちいち腹を立てていたのでは、長生きはできません。貧すれば鈍する、です。怒りで心を貧しくしてはいけません。何を言われても笑いで返せば、相手と別の次元にいられて、腹を立てることもなくなるんです。

ではどうしたら、怒りを笑いに変え、周りを爆笑に導くセンスを手に入れられるか。大事なのは「ツッコミ」だと思うのです。何か言われたら「え〜? それホント?」とツッコミを入れてください。最初に提起されたプランA(ボケ)に対して、プランB(ツッコミ)を加えると、通常ならA対Bの対立になるところが、ツッコミ力によっては、C(予想外の展開)に生まれ変わることがあるのです。

そうなれば、たちまち脳みそに余裕ができるのです。常に柔軟な考え方、視点を持っていれば、それは笑いになるし、固定観念を壊すこともできる。

以前住んでいた街で、「カラスがゴミ捨て場のゴミを荒らす」という議題の町内会に参加したことがありました。議論は主に「ゴミを散らかすカラス対策として集積所に網か箱を置く」というものでした。「網か箱か」で結論が出ないなかで、僕は思い切って「カラスハンターを雇って、巣からやっつけますか」と言ってみました。もちろんギャグです。そしてその瞬間、室内が静まり返りました。で、その後、笑いが起きたのです。その笑いは、「網か箱か」だけではない、なんなら守りだけではなく攻めの方法もあるのだ、と違う視点に皆さんが気づいた、固定観念から解き放たれた、そんな瞬間でもあったと僕は思いました(数年後、当時の石原都知事がカラス駆除を推進、あながちギャグではなくなりました)。

話はさらに飛びますが、先日テレビを見ていたらインドで114歳のおじいさんが亡くなったと報道がありました。その方は確か86歳の時に「健康に気をつけなければいかん!」と目覚め、ランニングをスタート。走っていると街の子供たちがついてきて、毎朝一緒に走り、114歳になるまで続けたということです。しかも亡くなったのは交通事故だったということ、身体自体はまだまだお元気だった。

この方は、コミュニティで愛されていたのでしょう、走っていれば自然と子供たちがついてきた。あるいは走ることでコミュニティができたのかもしれません。どちらにせよ、余裕や笑いがないコミュニティのなかで、人はこんなに長生きできないでしょう。きっと幸せだったに違いない、そうニュースを見て思いました。改めて心に余裕を持つ強い意志が大事だと。

人の好奇心が自分の好奇心へと変わる

僕が長生きしたい理由、それは「人の好奇心」にあります。友人や尊敬する人、好きな人が持っている好奇心が、どんなことなのか知りたい、それを追求していくといくら時間があっても足りないです。

先日も、友人が「能登に2日間行く」と言うので僕もついていくことに決めました。僕は能登には縁もゆかりもないのですが、行くとなれば地図をじっくり見てみる。「震災の被害はここまであったのか」などと知っていくうちに、じゃあこの土地に自由に商売できるような楽市楽座をつくってみようかなと、土地を購入。地元のいろんな方からアドバイスをもらうようになりました。こうして「誰かの好奇心」が僕自身の好奇心に変わっていった。

長く笑いながら生きていれば、多くの人と巡り合いその人たちの好奇心に触れて世界が広がる。そしてもっと生きたいとさらに願う。今日も僕は笑いながら、必死に長生きのための策を講じています。

Editor’s Note|パーティで名刺を配ることに意味は果たしてあるのか

人の好奇心に生かされているという福田さん。人間は好きだけれど同時に「パーティーなどは嫌い!」と断言します。

「たくさんの人に会うのは苦手(笑)。昔営業マン時代に『パーティーで名刺100枚配ってこい!』と上司に言われ、『100人に配るくらいならそのなかの一人とじっくり語ったほうが意味あるのでは』と思ったことがありまして」とのこと。

とはいえそういう場に行くこともあり、名刺を切らさないよう名刺入れは常に3つ持ち。「出しやすいものがマスト。出すのに手こずって相手の時間を奪ってはなりませんから!」

福田氏の名刺

TEXT=安井桃子

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