放送作家として活躍する傍ら、吉本興業のNSCで講師も務める桝本壮志氏。令和ロマン、EXIT兼近、ぼる塾ら人気芸人を数多く育ててきた桝本氏がNSCで説くのは、芸人スキルではなく、社会を生き抜く思考戦略だ。ゲーテwebの人気連載を再編集し書籍化した『時間と自信を奪う人とは距離を置く』から一部抜粋してお届けする。

そもそも大人は「友達づくりに適さない」
悩み:大人になってからの友達のつくりかたが分かりません
私生活でもよく「大人が同性の友達をつくるには?」と聞かれます。
おそらく僕がチュートリアル徳井くんらと約7年間ルームシェアをしたり、吉本芸人に囲まれた生活をしていたりするからでしょう。
知り合いと友達の中間の「ぼんやりとした仲間」を増やす
まず、私たち大人の「同性の友達が少ない」は当然なのであまり悩まないでください。
誰でも子供のころは「友達100人できるかな?」の合言葉よろしく、毎日が「友達増やしゲーム」のプレイヤーなので、どんどん輪が広がっていきます。
が、社会に出ると、仕事攻略ゲーム、恋愛ゴールインゲーム、リアル生活費マネーゲーム、子育てパニックゲームなどの新作を同時プレイしなければならず、旧作に励む人の絶対数が減っていきます。
大人になった私たちに必要なマインドは「友達づくりには適していないステージに上がったんだな」という自覚を持つこと。そして大人になるということは、知り合いと友達の中間にいる「ぼんやりとした仲間」が増えていくことなんだという事実に気づき、学生時代のようにベッタリじゃないけど深入りも干渉もない。それはそれで幸せじゃないか? という人生の本質を受け入れていくことだと僕は思っています。
友達は「友達が必要じゃないとき」につくるもの
現代では、さみしいな、友達がほしいなと感じたら、SNSで「理想の友達」を見つけてアプローチするのが普通になってきました。
しかし僕は、同性の友達づくりのコツは「友達が必要じゃないときにつくること」だと考えています。みなさんもそうでしょうが、ずっと付き合っている生涯の友は、最初に「理想」があって獲得した人ではなく、偶然クラスメイトになったり部活が一緒になったり、たまたまそこに居合わせた者どうしが進化していくことが多いからです。
僕と徳井くんも、たまたまNSCの同期で、たまたま同じ番組に参加し、そこで協力し合ったことで友人関係になり共同生活がはじまりました。そうした経験からも同性の友達づくりとは「とくに必要ではない」と思っているときに、助けてくれるかどうか、得か損かも分からないけど、言葉を交わし、手を貸し、励ましていく。その行為がある日「友達」という名前に変わっていく。そんなものだと思っているのです。
同性の友達と付き合うコツは「友達を演じない」こと
最後は「友達になれそうな人」が現れたときの付き合いかたのコツです。
私たちは「大切な人を失いたくない」という感情から、つい相手に合わせ相手の機嫌を損ねないような人間を演じてしまいがちです。
ある映画の1シーンにこんなセリフがありました。
「映画には主人公とその友達が登場するよね? 君は友達を演じているんだ。主人公になりなさい」
友人関係の本質を突いていますよね。相手を受け入れつつ、ときに勇気を持ってありのままの自分を相手に差し出してゆく主人公にもなること。それで溝ができるのであれば、その人とはそれまでの関係だった。ただそれだけ。ムリに友達を増やすことはないのです。
ちなみに、僕が友達と呼べるのは二人だけ。エンタメ界の人はもっと多いのが普通なのでしょうが、僕には十分。友達なんて簡単にできるものじゃないし、瓶ビール1本を分け合えるくらいが僕のキャパには丁度いいのです。
桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

