腕に装着する時計である以上、身体感覚との関係性は無視できない。小径ウォッチは優しく腕になじみ、悪目立ちせず、静かに時間を刻む。【特集 時計をつける悦び】

- 1.グランドセイコー|ヘリテージコレクション SBGW323
- 2.パネライ|ルミノール ドゥエ
- 3.IWC|インヂュニア・オートマティック 35
- 4.レイモンド ウェイル|ミレジム スモールセコンド
- 5.パルミジャーニ・フルリエ|トンダ PF オートマティック ストーンブルー
- 6.キングセイコー|KSK SDKS031
- 7.アントワーヌ プレジウソ ジュネーブ|シエナ
- 8.ベル&ロス|BR-05 36mm マザーオブパール スティール
- 9.ゼニス|デファイ リバイバル ダイバー シャドウ
- 10.チューダー|ブラックベイ 54 “ラグーンブルー”
- 11.モンブラン|モンブラン アイスシー オートマティック デイト ゼロ オキシジェン
- 12.ロンジン|ロンジン レジェンドダイバー
小振りという悦び
ここ数年の大きな傾向として、36㎜前後の小振りなケースをもつ時計が増えている。かつては45㎜前後の大型ケースが人気を集めていたが、その時代の高級時計は富の象徴であり、相手に強い印象を与え、前進する自分を鼓舞するためのものであった。
しかし混迷する時代のなかでは、自分自身の感性や美意識というものが大切な指針となる。自分自身がどういった時間を送りたいかということに目を向けると、着用する時計が、自分に心地よくフィットすることを求めるようになるのは当然だ。
しかも小径ケースは存在自体がさり気なく上品で、すっと腕に収まる。シャツやニットの袖口と干渉しにくいというのもこれからの季節にはメリットだ。
ケースが小さいということは、複雑機構を搭載するスぺースがないため、時計そのものも中三針などシンプルな機構になる。誤魔化しが利かないため、ケースの造形やダイヤルの表現といった部分に心血を注いでいるのも特徴になるだろう。
そういったクワイエットラグジュアリーな部分に魅力を感じることができるのが、成熟した時計愛好家ということ。こんな自己満足が今の気分だ。
1.グランドセイコー|ヘリテージコレクション SBGW323
時計を製造する「グランドセイコースタジオ 雫石」から見える雄大な岩手山の山肌をダイヤルのパターンとして取り入れ、岩手県の県花である桐を思わせる淡い紫に着色。小振りなケースと相まって柔らかな印象に仕上がった。

2.パネライ|ルミノール ドゥエ
軍用時計として生まれたパネライだが、イタリアンラグジュアリーを体現するブランドとしての評価も高い。クッションケースやリューズプロテクターなど象徴的なデザインはそのままにケースを小径化し、シーンを問わない時計となった。

3.IWC|インヂュニア・オートマティック 35
耐磁時計「インヂュニア」から小径モデルが誕生。既存モデルをそのまま縮小するのではなく、細部までバランスを整えて、抜群のプロポーションに。ケースやブレスレットと同系色のダイヤルを組み合わせて、バングル風に楽しめる。

4.レイモンド ウェイル|ミレジム スモールセコンド
35mmという小径ケースと1930年代に流行したセクターダイヤルのデザインを組み合わせることで、レトロな雰囲気を引きだした。カレンダーがないのも高評価。ブレスレットの駒をポリッシュとヘアラインで仕上げ分け、手首を華やがせる。

5.パルミジャーニ・フルリエ|トンダ PF オートマティック ストーンブルー
研ぎ澄まされた審美眼から生まれたスポーツウォッチ。朝空の透明感、凪いだ水面の穏やかな反射を想起させるダイヤル色はストーンブルーと命名。カレンダーも秒針もないミニマルな佇まいが、美の琴線に触れる。

6.キングセイコー|KSK SDKS031
1961年に東京・亀戸で誕生したウオッチブランド「キングセイコー」。その1965年モデル(通称KSK)のデザインを継承しつつ、ケース径は36.1mmとかなりコンパクトに。ダイヤルには1965年当時に流行したバーガンディ色を採用。

7.アントワーヌ プレジウソ ジュネーブ|シエナ
天才独立時計師アントワーヌ・プレジウソが、ブランド創設時にイタリアの古都シエナの有名な時計塔から着想を得て誕生させた時計で、華やかなダイヤルと飾り針で優雅な時を演出。ダイヤルはブルーのマザー オブ パール製。小振りなケースはユニセックスで楽しめる。

8.ベル&ロス|BR-05 36mm マザーオブパール スティール
スクエアケースとブレスレットを融合させ、都会的な雰囲気をもつ「BR-05」に、36mmケースが誕生。個性的なデザインなので、サイズが小さくなっても、手首の存在感は変わらない。ケース厚も8.5mmと薄く、洗練された美を楽しめる。

9.ゼニス|デファイ リバイバル ダイバー シャドウ
防水機能を高めるために、大型化するのがセオリーのダイバーズスタイルの時計たちも、小径化が進む。これぞ、まさに都会で楽しむ日常時計だ。
1969年発売のダイバーズウォッチ「デファイ A3648」を忠実に再現。マイクロブラスト処理を施したチタンで引きだしたダークグレーの世界に、イエローの差し色が効いている。防水性能は60気圧。

10.チューダー|ブラックベイ 54 “ラグーンブルー”
砂浜に打ち寄せる波を思わせるラグーンブルーのダイヤルは、200mの防水性能を持つダイバーズウォッチと好相性。5連ブレスレットのポリッシュパーツの煌めきで、ロマンティックなビーチでの時間を演出する格好の小道具に。


11.モンブラン|モンブラン アイスシー オートマティック デイト ゼロ オキシジェン
SO規格にも準拠する300m防水の本格ダイバーズウォッチで、氷の海をイメージしたダイヤルは、グラテボワジと呼ばれる技法で表現。ケース内は完全無酸素状態になっており、潤滑油の酸化などを防ぐ。

12.ロンジン|ロンジン レジェンドダイバー
1959年誕生のモデルを復刻したレトロ系ダイバーズウォッチだが、ISO規格にも準拠しており防水性能は300mという本格派。双方向回転ベゼルを二時位置で操作するインナー式にすることで時計前面がすっきりし、小振りな39mmケースはさらに小さく見える。

この記事はGOETHE 2026年1月号「特集:つける悦びを知るLUXURY WATCH」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら





