PERSON

2026.03.13

秘書はつけない、「やめる」は即断。トライ&エラーを繰り返し人生を探究し続けるのが“最高の贅沢”【福田淳】

まだまだ謎に包まれた男、福田淳(あつし)。なぜだかいつも周りの人間から頼られ、案件を持ち込まれ、奔走する。そして常に国内外を飛び回り、一日一日を本気で楽しむ。多岐にわたる企業の経営を担い、タブーをタブー視せず、変化を模索する男の人生哲学とは? 第14回目は人生を豊かにする真の贅沢、時間の使い方について。

福田淳氏
福田淳/Atsushi Fukuda
1965年大阪府生まれ。連続起業家。スピーディグループCEO(現任)、STARTO ENTERTAINMENT創業CEO、ソニー・デジタル・エンタテインメント創業CEO。世界19ヵ国での出版事業、日本でタレントエージェント、LAでアートギャラリー運営、リゾート施設展開・無農薬農場開発、スタートアップ投資など世界中でビジネスを展開する。『好きな人が好きなことは好きになる』など著書多数。

失敗を自分で背負うことはまさに、自由の証

僕のつくる部屋には、アンティークの地球儀があります。これまでいくつか家を建てたり、オフィスをつくったりしてきましたが、どの物件にもそれぞれ地球儀を置いているんです。どれも古いものなので、今はすでにない国名が書かれていて、それを見るたびに「人の営みって儚いものだな」としみじみ思うのです。国ですらいつかはなくなるのだから、地球からしたら僕らの一生なんてもっとあっという間。だから一瞬一瞬を大事にしなければならない。そう改めて自分に誓うことができるのです(宇宙から地球を見てる感覚を持てるのが面白い!)。

だから「あなたにとって最高の贅沢ってなんですか?」と聞かれれば、僕は「自分の人生の時間! 自分の時間を自由に生きることこそ、贅沢」と答えます。人生の時間は有限だということは、頭では誰でもわかっています。でも不思議なことに、日々の雑事や惰性のなかで、その事実は簡単に曖昧になってしまう。だからこそ、意識的に自分の時間の質を上げていかないといけません。さもなくば人生の大半が「誰かの都合」に使われてしまうのですから。でも自分のことだけで時間を使うのってつまらない。やっぱり好きな友達やみんなのために時間を使うのが最高に楽しいのです(だからエンタメの仕事が好き!)。

福田淳氏の地球儀

時間を有効に使うための「やめる」という決断

そういうわけで、僕は自分の人生の時間を大切に使うために、個人オフィスをつくりました。雑居ビルの一室に打ち合わせ用のデスク、トレーニングマシンや、世界中の有名無名問わず好きなアート本を配置。一室で事務所、ジム、書斎を兼ねていてとっても効率的(事務所とジム兼用なので「福田ジム所」と呼んでいます!)。雑居ビルですので、大きなオフィスビルと違い入室のたびに受付を通り名乗るという手間もありません。打ち合わせに来るお客さんにも「すぐ入れて気楽」と評判です。僕以外に誰もいないので、気を遣うこともなく、打ち合わせの合間にはマシンでトレーニングができますし、考え事をしたければ本棚に並ぶアート本を眺めて過ごします。

ちなみに僕は時間を有効に使いたいから、秘書もつけません。社長なら普通、時間を節約するために秘書にサポートしてもらいますよね? けれど僕はその逆です。だって秘書がいなければ、説明する時間、気を遣う時間、すれ違いを修正する時間──そういう細かなロスがなくなって、自分の時間が生まれるんです。もちろんスケジュール管理は自分でしますので、たまにはスケジューリングのミスもやらかしてしまいますが、そういう失敗を自分で背負うこともまた「自由」の証なんです。プロジェクトごとに、秘書的役割を買って出てくれる方々には感謝(でも、何でも自分でできるって素敵じゃないですか!?)。

同じように「時間を大切にしたい」という理由で、僕は「やめる」という決断も非常に早いです。これまでいくつかの事業も、即断でやめてきましたし、いっとき開いたバーなんか開店初日に「こりゃダメだ」と閉店を決めたほどです(笑)。やめることで失うものは確かにあります。でも、やめたことで得られる自由な時間のほうが、圧倒的に価値がある。「もうやりきった」と思うなら、すぐに次の世界へ行くべきですし、「違うなぁ」と思うことを嫌々続けているのなら、それこそ時間が無駄になってしまう。人生の「原液」は時間なんです。それが、どんどん薄められてしまうのを防ぐのは自分しかいません(やめたら、必ず次の地平線が見えます)。

自分で自分を満たす時間をいかにつくるか

「贅沢」といえば、日常のちょっとした自分へのご褒美を買うことがあります。例えばイチゴが食べたいと思った時に、600円と2000円のイチゴがあったら、僕は迷わず2000円のほうを選びます。ご褒美なのですから、確実に甘いほうがいいですよね。イチゴそのものではなく、自分の心を満たす「選択」ができるということに贅沢を感じます。もちろん「自分の目利きで安くて甘いイチゴを見つけられる!」という人もまた、その時間を楽しんでいるわけで、それもまた贅沢。要はどれだけ自分で自分を満たすための時間を過ごせるか、ということなんですよね。

僕が最初に自分への大きなご褒美として買ったのは、20代後半で初めて建てた一軒家でした。自分なりに間取りにこだわり、家づくりはとても楽しかった。そしていざ住んでみたら、めちゃくちゃ住みにくかった(笑)。先輩たちからは「何軒も建ててみてやっと住み心地のいい家が何かわかるよ」と言われていました。以来、僕の家づくりの探究が始まり、今回の雑居ビルのオフィスへとたどりつくわけです(いろんな家をつくってきたけど、結局は滞在時間が長い東京をベースに世界中に部屋をつくってる!)。家ひとつとっても、自分の人生の時間の過ごし方についてトライアンドエラーを繰り返しながら、とにかく探究し続けること、そういう生き方、プロセスこそが贅沢だって僕はやっぱり思います。

ちなみに、この雑居ビルのオフィスにどんな本やアートを置こうかも、いろいろ試行錯誤を繰り返しました。「あれを置こう!」と閃いて持ってきて、違ったら即倉庫に戻す(笑)。そもそもアートとは何か、ふさわしい空間とはどんな場所か。そこに答えなんてないはずです。それでもとにかく自分が好きかどうか、自分の感情をさらけだしてそこに価値を見つけ、わからないまま引き受ける。その行為自体が、すでにかなり贅沢だと思うし、心の余裕を持たなければできないことです(だからアートのない広い家ってあまり信用できない(笑))。

まぁ、今回もまた取りとめのないお話をしました。僕の贅沢と自由の象徴である雑居ビルのオフィスに、次はどんなアートや本を置こうか、ここで何をしようか、ワクワクしながら最近は地球儀をクルクル回して過ごしています。

Editor’s Note|ネットで買えない本が詰まった本棚こそ、もっとも価値がある

福田さんの新オフィス「福田ジム所」の本棚には、今は絶版になった貴重なアート本がぎっしり。

「ウェブマガジンはサーバーが消えてしまえば二度と読めませんが、本は絶版になっても現物さえ残れば、時代を超えて人を熱狂させることができる。本棚は持ち主の嗜好を表すものですが、その価値はネットで検索しても出てこない本がどれだけあるかどうかだと思います。ちなみに僕の映画の教科書であるヒッチコックやトリュフォーなどの映画本もこの本棚に入れて、アイデアを練る際はページを開いています」

福田淳氏の本棚

TEXT=安井桃子

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