まだまだ謎に包まれた男、福田淳(あつし)。なぜだかいつも周りの人間から頼られ、案件を持ち込まれ、奔走する。そして常に国内外を飛び回り、一日一日を本気で楽しむ。多岐にわたる企業の経営を担い、タブーをタブー視せず、変化を模索する男の人生哲学とは? 第13回目はMade in Japanの新たな価値基準について。

1965年大阪府生まれ。連続起業家。スピーディグループCEO(現任)、STARTO ENTERTAINMENT創業CEO、ソニー・デジタル・エンタテインメント創業CEO。世界19ヵ国での出版事業、日本でタレントエージェント、LAでアートギャラリー運営、リゾート施設展開・無農薬農場開発、スタートアップ投資など世界中でビジネスを展開する。『好きな人が好きなことは好きになる』など著書多数。
実は、海外から見れば日本はいまだに“黄金の国(ジパング)”
僕が大学生だった頃、ISSEY MIYAKEやコム デ ギャルソンなど日本のデザイナーズブランドが次々に世界に進出していきました。いわゆるバブル期、ソニーがコロンビア・ピクチャーズを買い、三菱地所がロックフェラーグループを買収する、そんなニュースが日々流れるなかで、「日本ブランドが世界で躍進する」ことがすごいことだとは、20歳そこそこの僕らは特別なことと感じていませんでした。むしろそれがデフォルトのように思えたのです(給与安かったのに、先輩が毎晩港区でご馳走してくれてリッチ感満載でした)。
経済そのものは、その後40年、あの頃より盛り上がることはなかったかもしれません。けれど日本ブランドは脈々と育ち続け、今もなお、新しいニッポンが世界に発見され続けています。観光で、京都、ニセコは常識となり、今やリピーターも多いから、「富山市ガラス美術館」や、白神山地(青森県と秋田県にまたがる広大な山地)を走る列車「リゾートしらかみ」からの絶景はスイスみたいにバズってます。それまで日本人が自ら光をあててこなかった場所に海外の人がつめかけています。
さらには名もなき里山やコンビニ、自販機の風景にすら、彼らは魅力を発見しているのです(新宿ゴールデン街は、異国そのもの!)。そう、日本はいまだにマルコ・ポーロが『東方見聞録』に記した「黄金の国ジパング」のままなんです。日本のモノや風景は外から来た人たちが「見つける」もの。当人である日本人は、たいしたものだとは思っていないものを「宝だ!」と彼らが発見していくのです(売りこまなくても発見してくれるので楽)。
そういえば大ヒットした映画『国宝』も、実はチュニジア出身のカメラマンが撮影しています。日本の伝統を、日本人が撮らなかった。それだけで、映像の重力が変わったといえるかもしれません。それに何より内側にいると「あたり前」になってしまうものも外から見れば時に「価値ある美」として浮かび上がってくる。日本の魅力が「再発見」される時、自分たちにもこうした「外の目」感覚が必要になってくるのかもしれません。

日本のブランドは発見されてナンボ
逆に色気を出してしまうとなかなかうまくいかないのが日本。「見つけてもらおう」と思えば思うほど、なにかしらの演出や誇張が入ってしまい、本来のものと遠ざかってしまいますから。例えば、政府が巨額の予算とともに日本企業を世界に売りこもうとした「クールジャパン機構」の失敗なんかが顕著です(ラーメン店の世界進出は成功しましたが……)。必死になると本来のよさが見失われてしまう悲しさよ、です。
だから今までどおり、丁寧にものづくりを続けながらも、例えばAIを使ってホームページに英語版を入れるとか、SNSで英語の発信をするとか、そのくらいでいいんです。誰かひとりの訪日外国人が発見してくれたら、たちまちうまくいってしまうかもしれませんよ。そうなってきたら、次は世界進出も夢ではない。「白い恋人」はドバイで、「ウスターソース」はロスで大人気なんですよ。
いいと思うモノは頑固にしっかりつくり続けて、それを発信するのにAIや若者、アーティストの力を借りて知らせていく。頑固親父ひとりでは見られなかった景色を見られるはずです(ブルーカラーミリオネアと言います=一次産業が強くなる)。
日本のブランドは「発見されてナンボ」。だけど発見されるまでうまくマネジメントできず、オープンソースのように世界に流れだしてしまった例もたくさんあります。例えば「和牛」なんかがそのひとつ。本来、日本で生まれて特別に育った牛肉のことを「和牛」と言いますが、今、海外では日本固有品種の牛の血統を元に、繁殖、肥育された牛が「WAGYU」として売られてしまっています。
そうそう「モバイルインターネット」だって最初に形にしたのは日本なんですよ。iモードが1999年にサービスを開始して、数年で2000億円のコンテンツ市場を国内につくった。iPhoneよりもはるかに早かったのに、今ではガラケーとともに跡形もなくなってしまいました。自分たちの財産、特に知財に対して世界進出する気がなかったのが衰退の原因です(空港に行って、この島を出るだけなんだけどね!)。
一方で、日本の技術が人によって伝わり、海外で活かされているのを見ると、それは素晴らしいと思うのです。盆栽は海外で人気ですが、生き物なので日本から海外に持っていくことが検疫で簡単にはできない。そこで海外の木で、日本の技術をもって、盆栽をつくる。スペインの木で、日本人から学んだスペインの職人がつくったとしても、それは「日本の盆栽」と言えると僕は思います。だから、多くの日本の技術が世界に伝わっていく今、「Made in Japan」という概念を変えていってもいいと思うのです(小栗旬くんが韓国ドラマに出てるのも誇らしい)。
これからたくさんの外国の人が日本で働くでしょう。他国の人たちを幅広く受け入れていかないと、社会が成立しなくなっていく。そうして「多様性」を認め、世界の一員になるという広い気持ちを持つことが大事になってきます。そうして新たなMade in Japanをつくっていく時代に入っていると思います。
Made in Japanの新たなる希望
最近のMade in Japanの技術ですごいなと感じたのが、友人の早川尚吾くんが開発した「CoeFo
nt」というAI活用した同時通訳アプリです。日本語で話しかければ、ほぼ同時に外国語で通訳してくれる。かなり正確でタイムラグも少ないので、もしこれがZoomなどにビルドインされれば、世界中の人と第一言語のままスムーズに会話ができるようになってしまうのです。今まで日本人が長きにわたり抱えてきた「外国語ができない」というコンプレックスを、技術が解決してくれました。
日本人はずっと自信がなかった。島国の中で勝手に自分たちを評価してきました。けれど「普通」と思っていた技術や風景が発見され、「英語はわからないので」と言って避けていた「世界への発信」も、技術によってすぐできるようになってきたんです(さあて、世界中の人と話せるぞ)。今、僕は60歳にして再び、Made in Japanの技術に大きな希望を感じ始めています。
Editor’s Note|知られざる農園の名トマトを発見!
海外の人は日本人でも知らない日本の素晴らしいスポットやモノを発見するのが上手、という今回のお話。実は福田さんも「発見上手」。
「海外の人は日本よりも休暇が長く、かつその間、たくさん会話をしているから情報交換が活発です。あとは興味のあることに、とにかくアンテナを張りまくっている。ちなみに僕はトマトが大好きで、どこのトマトが美味しいかいろんな人に聞いているのですが、そのなかで見つけた農家(千葉県柏市の『ファッショントマトハウス深野』)からいつも直送してもらっています。深野さんは味が悪い年は売ってくれない。そんな、すごいトマト愛があるのは、なかなかのものですよ(笑)」


