GOLF

2026.02.27

平均飛距離322Y。その秘訣”下半身主導のバックスイング”のやり方

PGAツアー2026年シーズン、クリス・ゴトラップが圧巻のスタートを切った。開幕戦ソニーオープン・イン・ハワイに続き、熱狂のWMフェニックス・オープンも制し、世界ランキングは一気にトップ5へ。平均322ヤードの飛距離を誇りながら、低弾道のコントロールショットと卓越したマネジメントで勝利を重ねる新世代の主役だ。その強さの背景とスイングの特徴、そして飛距離を生む下半身主導の動きを動画解説とともにひも解く。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン番外編/平均飛距離322Y。その秘訣”下半身主導のバックスイング”のやり方

クリス・ゴトラップがフェニックス・オープンを制覇。PGAツアー新世代の主役へ

2026年シーズン、PGAツアーで最も勢いを感じさせる選手の一人が、クリス・ゴトラップである。

今季開幕戦のソニーオープン・イン・ハワイで勝利を挙げ、一気にその名を知らしめた。さらに2月、大観衆の熱狂で知られるWMフェニックス・オープンでは、最終18番ホールでバーディーを奪い、松山英樹と首位タイに並んでプレーオフへ突入。1ホール目でもバーディーを決め、今季2勝目を手にした。これでツアー通算4勝目となる。

世界ランキングは前年同時期の206位から、この2勝によって5位まで急上昇(2026年2月時点)。この躍進は単なる好調の波ではなく、PGAツアーの新たな主役の誕生を強く印象づけるものとなった。

初優勝から世界トップへ。クリス・ゴトラップの成長を支えた飛距離と技術

ゴトラップの飛躍は、2024年のワンフライト・マートルビーチ・クラシック優勝から始まった。通算22アンダーという圧倒的なスコアで、2位に6打差をつける完勝。この勝利によってシード権を確実なものとし、キャリアは一気に加速する。

翌2025年には、全英オープンの前哨戦として知られるジェネシス・スコットランドオープンを制覇。ローリー・マキロイら世界トップ選手が揃うなか、リンクス特有の強風と硬いフェアウェイという難条件に対応し、ドライビングアイアン(1番アイアン)を駆使した低弾道のコントロールショットで勝利をつかんだ。この優勝により、世界ランキングも上昇し、メジャーでも戦える実力を持つ選手として評価を確立した。

身長約180センチ、体重約95キロの体格から放たれるドライバーショットは、今季平均322ヤード(ツアー5位・2026年2月時点)を記録。PGAツアー屈指の飛距離を誇る。

しかし、ゴトラップのすごさは飛距離だけではない。特筆すべきは、低く強い弾道でターゲットを射抜くショット精度だ。風の影響を受けにくい強い球筋を武器に、リンクスや硬いグリーンといった難条件でも結果を出せる総合力がある。

ソニーオープン・イン・ハワイでの勝利も、その技術が支えた。硬いフェアウェイと海風の影響を受けやすいワイアラエカントリークラブにおいて、ゴトラップは弾道を抑えたショットで正確にフェアウェイをとらえ、風を切り裂くアイアンショットでバーディーチャンスを量産した。

ソニーオープン・イン・ハワイを勝ち切れた最大の理由も、そこにあった。ワイアラエカントリークラブはフェアウェイが硬くランが出る一方、木々でセパレートされ方向性が厳しく問われるコース。さらに海風が吹けば、高弾道のボールはコントロールが難しくなる。

その条件下でゴトラップは、持ち味の低弾道ショットを徹底した。ドライバーでも高さを抑え、硬いフェアウェイを計算に入れて攻めた。アイアンでも風を切りさく強い弾道でピンを狙い、バーディーを量産した。飛ばし屋でありながら、決して力任せではない。状況を読み切るマネジメント力と技術が噛み合ったとき、その強さは際立つ。

さらに今季は持ち前のパワーだけでなく、ストロークスゲインド・アラウンド・ザ・グリーンが前年の82位から17位へと大きく改善(2026年2月時点)。グリーン周りの精度が高まったことで、ゴトラップの総合力は一段と増した。ピンチを切り抜けるショートゲームの進化こそが、今季2勝という結果につながっているといえるだろう。

私はゴトラップがアマチュアだった2022年、プエルトリコオープンで7位タイに入った試合をゴルフ専門チャンネルで解説したことがあるが、その頃からすでにプロのような雰囲気をまとっていた。

物怖じしない立ち居振る舞い、どこかふてぶてしさすら感じさせる態度。そして大舞台でも表情を変えない落ち着き。いずれ成功するであろうという予感を抱かせる存在感があった。以来、私は定期的に彼の成績を追い続けてきたが、その印象は変わっていない。

ゴトラップはグローブのマジックテープ部分を締めずにプレーする独特のスタイルでも知られる。締めつける感覚が苦手で、脱ぎやすい靴を履いているような感覚が好きだという。そのマイペースさ、型にはまらない感性は、単なる個性にとどまらない。周囲の空気に流されず、自分のリズムを守り抜く強さの表れでもある。

技術的な裏付けに加え、揺るがない自己感覚を持っていること。それこそが、接戦やプレーオフの舞台で結果を引き寄せるゴトラップの本質的な強さなのだろう。

クリス・ゴトラップの飛距離の秘密は「下半身主導のバックスイング」にある

1999年生まれのゴトラップは、オクラホマ大学でプレーし、2022年には優秀な大学選手に与えられるハスキンズ賞とジャック・ニクラス賞を受賞。平均スコアは全米トップクラスを記録し、将来のツアープレーヤーとして高く評価されていた。

ちなみに、その年のもう一つの主要タイトルであるベン・ホーガン賞は、プロ転向後すぐに2023年のライダーカップメンバーに選出され、同年のPGAツアー最終戦RSMクラシックで優勝したルドビグ・オーバーグが受賞している。

しかし、プロ転向後の道のりは決して順風満帆ではなかった。

2022年にプロ入りすると、PGAツアー下部にあたるコーンフェリーツアーで経験を積むことになった。2023年は24試合に出場し、トップ10入りはわずか3回。安定感を欠き、思うように結果を残せない時期もあった。

それでも年間ポイントランキング23位に入り、30位以内に与えられる翌シーズンのPGAツアー出場権を獲得。苦しみながらも着実に歩みを進め、最高峰の舞台への切符をつかみ取ったのである。

2026年シーズンは序盤で早くも2勝。これは偶然ではない。大学時代の実績、下部ツアーでの下積み、PGAツアー昇格後に毎年積み重ねてきた経験、そして今季のブレイク――それらすべてが一本の線でつながっている。

クリス・ゴトラップは、もはや将来有望株という段階にはない。PGAツアーの中心を担う存在として、確かな一歩を踏み出している選手の一人である。次に真価が問われるのはメジャーの舞台だ。その頂点にどこまで迫れるのか。今後の戦いこそが、真の試金石となる。

クリス・ゴトラップの飛距離の秘密は「下半身主導のバックスイング」

クリス・ゴトラップのスイングには、野性味とダイナミックさが同居している。その要因は、下半身主導の力強いバックスイングにある。

バックスイングでは右膝が伸びながら地面を強く押し、その力が下半身から上半身へと連動して伝わる。この動きによってクラブは勢いよく上がり、トップで大きな反動が生まれる。シャフトのしなりを最大限に引き出すことで、圧倒的なヘッドスピードと飛距離が生み出されている。

この速いバックスイングを養う方法として有効なのが、「バックステップドリル」だ。右足を目標と反対方向へ一歩踏み出しながらバックスイングを行うことで、足元から始動する正しい力の連動を身につけることができる。

アマチュアゴルファーがこの練習を行う際に注意すべき点は3つある。

まず、手でクラブを上げないこと。右足の踏み込みをきっかけに体を回す意識を持つとよいだろう。

次に、バックスイングの初動で適度に加速をつけ、途中から惰性を使って上げること。ゆっくり上げすぎると反動が生まれず、手打ちの原因となる。

そして、実際のスイングでは踏み幅を小さくし、ドリルで得た下半身主導のリズムを再現すること。練習場でこの動きをスイングに自然に取り込めるよう、練習を重ねてほしい。

この感覚が身につけば、クリス・ゴトラップのように地面反力を効率的に使えるようになり、無理な力を使わずに飛距離を伸ばすことが可能になる。ゴトラップの飛距離は、単なるパワーではなく、合理的な身体の使い方によって生まれているのだ。

動画で解説|クリス・ゴトラップのような飛距離を生むバックステップドリル

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=アフロ

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