CAR

2025.07.22

レクサスの高級SUV「LX」にハイブリッドモデル誕生。その狙いとは【試乗】

レクサスの旗艦SUVであるLXに、初めてハイブリッドモデルが加わった。なぜLXにハイブリッドがなかったのか、という点に遡って、このモデルのファーストインプレッションを紹介したい。

レクサスLX700h

生きて帰って来るための高級SUV

レクサスLXにハイブリッドモデルが加わった──。

こう書いても、「あっ、そう」という反応で終わってしまうかもしれない。けれども実はこのニュースは、少なからぬ意味を持っている。というのも、先進的なハイブリッドシステムをひとつの武器としてグローバルで戦ってきたレクサスというブランドにあって、レクサスLXにはハイブリッドモデルが存在しなかったからだ。

レクサスLX700h
1996年に北米市場に投入された初代から数えて4代目となる現行レクサスLX。その歴史において、初めてハイブリッドモデルがラインアップされた。

なぜレクサスLXにはハイブリッドの設定がなかったのか? 

このモデルが一番大切にしていることは、どんなにタフな状況にあっても、必ず生きて帰って来られるということ。極寒の雪山でも、灼熱の砂漠でも、密林の奥地でも、堅牢なボディと信頼性の高いパワートレイン、そして4輪駆動システムをフル稼働して、踏破することが求められる。

こうした使い方をしても絶対に壊れないと信頼できるハイブリッドシステムが、これまでは存在しなかったのだ。そしてついにというか、満を持してというか、過酷な環境下でも命を委ねられるハイブリッドシステムが完成した。これを搭載したのが、レクサスLX700hだ。

レクサスLX700hは標準仕様に加えて、ショーファーカーとして使うことを想定して後席を2人掛けにした“EXECUTIVE”と、アウトドアのアクティビティに適した装備を設定した“OVERTRAIL”という計3つのスタイルで展開される。

レクサスLX700h
レクサスLX700hのハイブリッドシステムは、V型6気筒エンジンとトランスミッション(10段AT)の間にジェネレーターを兼ねたモーターを配置するというもの。いわゆるパラレル式だ。

ハイブリッド化で発進加速が上質に

コクピットに収まり、スターターボタンを押してハイブリッドシステムを起動する。スタートして真っ先に感じるのが、極低速域でモーターがエンジンをアシストしているという感覚だ。

純エンジン仕様のレクサスLX600の場合は、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、勢いよくV型6気筒エンジンが「フォン!」と回転を上げた。いっぽう、レクサスLX700hは無音・無振動で黒子のように働くモーターのおかげで、エンジンがそれほど回転を上げなくてもしっかりとした足取りで加速する。ハイブリッドだから燃費がよくなるということとは別に、発進加速が上質で豊かなものに変わったように感じる。

エンジンは、ある程度まで回転を上げないと本来の力を発揮できないのに対して、モーターは電流がピッと流れた瞬間に最大の力を発生できるから、発進加速のような場面はモーターのほうが得意なのだ。

ただし、他のレクサスのハイブリッドモデルやトヨタのプリウスなどに比べると、モーターの存在感は控えめだ。というのも、レクサスLX700hが採用したハイブリッドの仕組みは、他のモデルと異なるからだ。

ハイブリッドシステムには、大きくわけて3つの種類がある。ひとつは、エンジンとモーターの両方を駆動源として使うパラレル式で、レクサスLX700hも採用しているこのシステムが、最もコンベンショナルだと言える。エンジンが発電に専念して駆動はモーターだけで行うのがシリーズ式。エンジンは回転数を上下させると効率が悪くなる(=燃費が悪くなる)けれど、得意な領域で一定回転を保つと効率がいいという性格がある。この性格をうまく活用するのがシリーズ式だ。

そして、両者を組み合わせたのがシリーズ・パラレル式で、発電用と駆動用のふたつのモーターが備わる。状況に応じて、モーターだけ、エンジンだけ、モーターとエンジンのコラボと、シームレスに切り替わる。プリウスや他のレクサスのハイブリッド車の多くが、複雑なこのシリーズ・パラレル式を用いるけれど、レクサスLXはあえてこの得意技を封印した。

というのも、エンジンとモーターのそれぞれを切り離してコントロールできるパラレル式であれば、ハイブリッドシステムになにかトラブルが生じても、モーターを切り離してエンジンだけで走行できるからだ。つまり、なにがあっても、どんな場面でも生きて帰って来られるという性能を担保するために、あえてシンプルなパラレル式を採用したのだ。

レクサスLX700h
レクサスLX700hのハイブリッドシステム。万が一のトラブルが発生しても、高度な4駆システムを備えるエンジン車として機能するように細心の配慮が施されている。

時間をかけて熟成させている

モーターのアシストによって動きが繊細になったほか、速度域を問わないゆったりとした乗り心地や、ステアリングホイールを操作したときの自然なフィーリングなど、ハイブリッド化によって重量が増したにもかかわらず、レクサスLXらしさは保たれている。重量増を見込んで、ボディの基本骨格から対策を施したことが“勝因”だ。

レクサスLX700h
ハイブリッド化に対応すべく、新しい部品の取り付けや素材の強化など、ラダーフレームも改良されている。

レクサスLXは、プラットフォームを共用するトヨタ・ランドクルーザーと同様に、悪路で酷使してもへこたれないラダーフレーム構造を採用している。一般的な乗用車が用いるモノコック構造に比べると、耐久性が高いいっぽうで乗り心地が悪くなるという弱点がある。また、ステアリングホイールを切った瞬間のまったりとした動きに、「よっこらしょ」と声に出したくなるモデルもある。

ただしレクサスLX700hは、後席ではこうしたネガが多少なりとも感じられるものの、少なくとも運転席と助手席は快適だ。こうした美点は4年前のデビュー時から感じられたけれど、さらに煮詰められていることが伝わってくる。新車を発表して終わりではなく、ユーザーやテストドライバーからのフィードバックを受けて、丁寧に改良を行っているのだろう。

こうした快適な乗り心地と、前述したハイブリッドシステムによる上質なドライブフィールとあいまって、ひとつ上のステージに入ったように感じた。ハイブリッドシステムを搭載したことは大きなニュースであるけれど、デビュー以来、パフォーマンスや快適性の向上も地道に続けられていることも知っておくべきだろう。

レクサスLX700h
レクサスLX700h
全長×全幅×全高:5100×1990×1895mm
パワートレイン:3.5ℓV型6気筒インタークーラー付きツインターボ+モーター
システム最高出力:457ps
システム最大トルク:790Nm
価格:¥15,900,000〜(税込)

問い合わせ
レクサス インフォメーションデスク TEL:0800-500-5577

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

TEXT=サトータケシ

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