CAR

2025.05.13

業績好調。「ベントレー」最新モデルはインテリジェント・モンスターだった【試乗】

世界的に業績が好調なベントレーのラインアップで、フォーマルな位置づけとなるのが4ドアセダンのフライングスパーだ。新型に切り替わったこのクルマに試乗した。

ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション

外界から隔絶されているような走行感覚

2024年秋に、「ベントレーの歴史でも最もパワフルな4ドアセダン」というふれこみで登場した第4世代のフライングスパーのデリバリーが始まった。そのファーストエディションに試乗する機会を得たので、インプレッションを報告したい。

ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
エクステリアのデザインは、従来型の第3世代からあまり変わっていない。いっぽうで、パワートレインは大きく電動化に踏み出している。

簡単にフライングスパーというモデルを紹介すると、2ドアクーペのコンチネンタル GTの4ドアセダン版という位置づけになる。第1世代は2005年に発表され、以降、改良を加えながらモデルチェンジを重ねてきた。今回試乗する第4世代の最大の特徴は、ベントレーが「ウルトラ パフォーマンス ハイブリッド」と呼ぶプラグインハイブリッド(PHEV)の新しいパワートレインを搭載することだ。

ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
ベントレー・フライングスパーは、まず高性能版の「スピード」から投入され、高級仕様の「マリナー」、続いて「ベーシックグレード」と「アズール」がラインアップに加わった。

このパワートレインの最高出力は782ps、最大トルクは1000Nmだから、4ドアのスーパーカーと呼んで間違いない。

ただし、システムを起動して走り出すと、スーパーカーという言葉から想像する猛々しさはまったく感じない。というのも、バッテリーに十分な電気が蓄えられている状態では、可能な限りEV走行をするセッティングになっているからだ。

EV走行といっても、遅くてかったるいということはない。フライングスパーのモーターは、190psの最高出力と450Nmの最大トルクを発生する。内燃機関だと排気量2ℓのディーゼル・ターボ並みのパフォーマンスだから、余裕をもって交通の流れをリードすることができる。

ちなみにEV走行は140km/hまで可能で、最大で76kmの航続距離を確保している。使い方によっては、排気量4ℓのV型8気筒ツインターボエンジンが目覚めないまま一日を終える、というケースも考えられる。

EV走行中の車内はほぼ無音、無振動で、タイヤと地面の間に隙間があるんじゃないかと思えるほど快適なエアサスペンションの乗り心地とあわせて、外界から隔絶されているような錯覚を覚える。

金持ちケンカせずとはよく言ったもので、設えのよいインテリアに囲まれてステアリングホイールを握っていると、「どうぞお先に行ってください」という、おおらかな心持ちになる。

ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
標準の「B」モード、「コンフォート」モード、「スポーツ」モード、そして各自で設定する「カスタム」という4つのドライブモードが存在、状況に応じて紳士にもモンスターにも変身する。

業績好調の要因はオーダーメイド

けれども、ドライブモードを「スポーツ」モードにシフトして、アクセルペダルを踏み込むと、事態は一変する。V8ツインターボエンジンが目覚め、美爆音が高まるのと同時に周囲の景色がコマ送りになるような怒涛の加速を見せつける。

こういった状況でも野蛮だと感じないのは、前述したエアサスペンションがボディの姿勢を保ち、高度な4輪駆動システムが適切にトルクを4つのタイヤに配分するからだ。モンスターであることは間違いないけれど、知的なモンスターなのだ。

フライングスパーのインテリジェンスは、快適性や高度なパフォーマンスを実現するだけでなく、ウェルネス方向にも使われている。オプションのウェルネスシーティング スペシフィケーションは、シートの各ゾーンの温度と湿度を自動で調整するように、ヒーターとベンチレーションが作動している。また、シートと身体の圧力を変える絶妙のマッサージ機能で、疲労も低減してくれるほか、室内の環境を整える空気の清浄機能も充実している。

ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
タッチスクリーンにインターフェイスを集約するモデルも増えたけれど、このクルマはスイッチやダイヤルを残しているのが特徴。走行中はこちらのほうが操作しやすいのでありがたかった。

このように至れり尽くせりのフライングスパーであるけれど、世のスーパーカーとの違いは、たたずまいが控えめということだろう。スーパースポーツのようにド派手にアピールすることもなければ、スーパーSUVのような威圧感を感じさせることもない。あくまで、自分自身が豊かな時間を過ごすことを目的にしたクルマなのだ。

ベントレーは2024年、105年の歴史で4番目の収益を記録している。好調を後押ししたのはマリナーというオーダーメイドシステムで、顧客の70%が利用しているという。多くの方がオーダーメイドを利用することによって1台あたりの収益はこの2年間で10%も増え、これが高収益につながっている。

こうした情報から想像できるのは、見せびらかすことが目的ではなく、自分が納得できるクルマ生活を送りたいと考えるオーナー像だ。

ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
内外装は、色や素材の組み合わせが無限といえるほど用意されるので、自分だけの1台を仕立てる楽しさも、フライングスパーを所有する喜びに含まれている。

PHEVの採用によって、静々と走る電動高級セダンから、怒涛のパワーを誇るスーパースポーツまで、フライングスパーのダイナミックレンジは大きく広がった。電動化は環境対応技術であるけれど、いっぽうで静かさ、滑らかさ、加速力など、トータルでパフォーマンスを向上させることにも寄与する。

幸運にもこのクルマのオーナーになった方は、いままでよりさらに深い満足を得られるはずだ。

ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
ベントレー・フライングスパー スピード ファーストエディション
 全長×全幅×全高:5316×2220×1474mm
ホイールベース:3194mm
パワートレイン:4ℓV型8気筒ツインターボ+プラグインハイブリッドシステム
システム最高出力:782ps
システム最大トルク:1000Nm
価格:3,3792万円〜(税込)

問い合わせ
ベントレーモーターズ ジャパン/ベントレーコール TEL:0120-97-7797

サトータケシ/Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。

TEXT=サトータケシ

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