“筋肉の人”として再ブレイクを果たし、50代になった今も均整のとれた肉体美を保つ武田真治だが、2年前からハードなトレーニングを封印している。その理由を明かしてもらう。【特集 魅せるカラダ2025】
体重も体脂肪も今が人生MAX
はちきれんばかりに隆起した胸筋、たくましき上腕二頭筋、くっきりと割れた腹筋。2021年に撮影した時に披露したギリシャ彫刻のごとき武田真治の肉体美は、52歳の今なお健在だ。
筋肉美の代名詞となっている武田だが、20代半ばまでは”アンチ運動派“で筋肉とは無縁。食が細かったこともあり、驚くほど華奢で、端正な顔立ちもあいまって中性的な“フェミ男”として一世を風靡した。
「運動を始めるようになったのは、顎関節症を発症した26歳の時。心身の不調に陥り、思うように仕事ができなくなって芸能界引退も頭をよぎりました。そんな僕に、当時お世話になっていた鍼灸師さんが、顎の負担を軽くするために全身の筋肉を鍛えた方がいいとアドバイスしてくれたんです」
まず取り組んだのは、縄跳び。運動経験ゼロからのスタートゆえに、連続100回跳べるようになるのに約1ヵ月かかったが、身体を動かす効果を実感。体力がついてからは、ジョギングや筋トレにも励み、肉体を鍛え上げてきた。その肉体美が話題になり、2018年～2021年にNHKで放映された『みんなで筋肉体操』に出演。一躍“筋肉の人”に。
ところが、「実は、最近あまりトレーニングをしていないんですよ」と言う。
「もともと数字は気にしないので測っていませんが、体重も体脂肪率も、人生でMAXだと思います。以前番組で測定いただいた時は体重55㎏でしたが、今は62㎏くらいあるんじゃないかな。お腹回りも、以前より脂肪がついた気がします」
“昨日の自分”に負けてもいい
1回12～15km、毎月累計100kmを走り、当時の体重の倍の110㎏のベンチプレスを10レップあげていたたこともあるなど、肉体を追い込んできた武田が、トレーニングから遠ざかった背景には大怪我があった。
「2022年の夏、右足のかかとを骨折してしまい、しばらく車いすと松葉杖の生活を送っていたんですよ。走ることはできないし、脚も動かせないけれど、上半身なら問題ないだろうと思ってベンチプレスを続けていたら、右の肩や肘や手首の腱を痛めてしまって。どこかをかばいながら生活していると、身体の軸がずれてしまうんでしょうね。
ペットボトルのキャップすら回せなくなって、妻に『開けて』と頼んだら、『なんのための筋肉なの？』と突っ込まれて（笑）。このことがきっかけで、無理をせず、怪我が完全に治るまでトレーニングから離れることを決めました」
2021年のインタビューでは、「この肉体が名刺がわりになっている」と発言していた武田。それは、ハードなトレーニングを続けられるということは、困難があってもあきらめず、責任を持って仕事をまっとうできる証明になるという考えからだ。そうした信念からか、怪我や病気をしていても日課のトレーニングは必ず行ってきた。
「自分で決めたことを実行できないのが許せなくて、我ながら、かなり無理をしたと思います。盲腸の手術後三日後に15㎞走ったり。だけど、右足を骨折したことで、運動しない自分を受け入れられました。身体を動かせないのだから、もう仕方がないと。それに、50歳になった頃から、身体を追い込み過ぎるハードなトレーニングを見直すべきかも思い始めたんです。
ジョギングをしながら、『こんな暑い日に15㎞も走ることないじゃん。もうやめて、ビール飲もうよ』という声が聞こえてきても、『この先にしか達成感はないのだから』と打ち消して、ひたすら走り続けてきました。かつては、その声が理想へと導く天使の囁きだと疑わなかったんです。でも、夏に風邪をひくほど体力を削るようなトレーニングを引き止める声が、怠惰を勧める悪魔の囁きとも限らないなと。
『昨日の自分に勝つ』という言葉をよく聞きますし、僕自身、それを目標に20年以上トレーニングを続けてきました。でも今は、『昨日の自分に負けることがあってもいいかな』と思っています。それよりも、自分の身体にとって何が必要かをきちんとキャッチし、無理をしない方が大切なんじゃないかなと」
晴れ晴れとした顔で、そんな言葉を口にする武田。次回は、その真意を探る。
武田真治／Shinji Takeda
1972年北海道生まれ。1989年「第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」グランプリを受賞し、1990年に俳優としてデビュー。ドラマやバラエティ番組、ミュージカル、舞台と幅広く活躍し、サックスプレイヤーとしても活動。2018年放映の『みんなで筋肉体操』（NHK）出演も大きな話題になった。著書に『優雅な肉体が最高の復讐である。』『上には上がいる。中には自分しかいない。』がある。
＜衣装クレジット＞
デニムジャケット ¥55,000、デニムパンツ ¥44,000（ともにハードバード／フラットヘッド神宮前店 TEL：03-6804-3105 ）
