PERSON

2025.08.14

俳優・武田真治「上腕筋を鍛えていても、1時間半、哺乳瓶を持っているのは辛かった(笑)」

右足骨折によってトレーニングを中断中、第一子が誕生。「自分よりも大切な存在」を手にした武田真治が、新たに抱くようになった人生観、日々のルーティーンを探る。【特集 魅せるカラダ2025】

武田真治氏

育てるべきは“筋肉”ではなく“娘”

2020年7月、武田真治は、モデルで歯科衛生士の資格も持つ22歳年下の静まなみさんと結婚。第一子となる女児が生まれたのは、怪我によってトレーニングから離れていた2023年6月のことだった。それもまた、「怪我は、自分を見つめ直しなさいという神様からのメッセージ」と、武田が考える理由のひとつだ。

「生まれたばかりの赤ちゃんは3時間おきにミルクを飲むんですが、娘は1回1時間半かかったんですよ。日中は妻がみてくれているから、夜は、基本的には僕の担当。でも、怪我をする前の元気な自分なら、娘のミルクより自分の筋トレやジョギングを優先していたかもしれません。だから神様が、僕に怪我をさせて、『筋肉を育てている場合じゃない、お前が今育てるべきは赤ちゃんだ!』と、教えてくれたのかなって。上腕筋を鍛えていても、1時間半、哺乳瓶をずっと持っているのはかなり辛かったですけどね(笑)」

2歳となった娘は、たとえ遮光カーテンで室内を真っ暗にしていても、わずかなすき間から入ってくる光で目が覚め、陽が落ちれば眠る。本来人間は自然と共に生活するものだということも、娘の誕生によって改めて気づけた。

「40代までは、夜に出歩いたりと、自然のリズムを無視した生活を送っていましたが、それは、人間本来のものではなく、自分にとって都合のいいルーティーン。結婚したことやコロナの影響もありますが、娘が生まれたことで、そのルーティーンから抜け出すことができたのも良かった。50代以降もその生活を続けていたら、たぶん健康を害していたでしょうから。0歳の娘といっしょに、僕も人生を0から再スタートしたような気がしています」

他の子と比べることに意味はない

今、武田が「娘とふたりだけの大切な時間」と楽しみにしているのが、週1回の幼児向けの音楽教室だ。講師からの「シェーカーを振りましょう」「象さんになりましょう」という指示に合わせ、「全力で取り組んでいます」と、嬉しそうに話す。

「音楽は人生の導きになるし、音を聴く能力があれば自分の心の声にも耳を傾けられる気がして。娘には音楽を楽しめる人生を送ってもらいたいし、音楽の構造を知ることで全ての誘惑に踊らされない判断力も持ってもらいたいなと。グループレッスン、すごく楽しいんですよ。週末のクラスなので、僕を含め、付き添いはお父さんばかり。我が家もですが、その時間は、お母さんにとってゆっくり休める時間で、お父さんと子供にとっては“ふたりだけの大切な時間”なのだと思います。

つい先日、運動会にも参加してきました。初めてやる動きが多かったから、娘はあまり上手にできなかったけれど、その姿もまたかわいくて。

ただ妻は、他の子がやれることを娘ができないことに心を痛めていました。運動に限らず、『〇ヵ月になったらこれができるようになる』という情報を知っているが故に他の子と比べたりすること、けっこうあるんですよ。僕は、平均的なタイミングでできないこともいずれできるようになることを身をもって知っているし、現時点で他の子と比べることに意味がないように思っているんですけどね。……でも、両親いずれも気にしなさ過ぎるのも良くないから、ちょうどいいバランスなのかもしれません」

身体を追い込むことと健康は必ずしも比例しない

娘が20歳になる頃、武田はちょうど70歳になる。それまで現役でいるためにも、これからは、身体に過度な負荷をかけるトレーニングではなく、身体を守り、健康を維持するためのトレーニングをまた新たに模索していくつもりだと明かす。

「身体を追い込むことと健康でいることは、微妙に違います。体脂肪率が低過ぎると免疫力が下がると言われますが、まさにその通り。ハードなトレーニングをしていて、体脂肪率1ケタだった頃は、夏でも風邪をひいていましたが、今はひかなくなりましたから(笑)。身体の声に耳を傾け、無理をし過ぎない。とくに、僕の年代以降はそれが大切だと思います。

理想は、事務所の先輩で、尊敬する師匠でもある市村正親さん。何年かに一度舞台で共演させていただいていますが、いくつになってもパワフルで、ベストなパフォーマンスを見せてくださる。僕も、市村さんのような70代になりたいですね」

ずっと現役でいるために、健康維持に加えて必要なのが「楽しみを持つこと」。

「2日前まで地元の北海道に帰っていたんですが、仲間とツーリングをしてきました。バイクはいいですよ。バイクに乗っているという適度な緊張感があるし、風の冷たさや暖かさ、陽射しなどの自然も直に感じられます。周りの景色がどんどん変わっていくのも、良い刺激になっているんでしょうね。こういう時間を持つことは、人生を豊かにしてくれると、しみじみ感じます。

ビジネスパーソンの方々は、毎日仕事に打ち込まれている思います。でも、時々は仕事を忘れ、自然の中に身を置く時間を持っていただきたい。その時間は、きっと新たなパワーになるはずです」

武田真治/Shinji Takeda
1972年北海道生まれ。1989年「第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」グランプリを受賞し、1990年に俳優としてデビュー。ドラマやバラエティ番組、ミュージカル、舞台と幅広く活躍し、サックスプレイヤーとしても活動。2018年放映の『みんなで筋肉体操』(NHK)出演も大きな話題になった。著書に『優雅な肉体が最高の復讐である。』『上には上がいる。中には自分しかいない。』がある。

<衣装クレジット>
デニムパンツ ¥44,000(ハードバード/フラットヘッド神宮前店 TEL:03-6804-3105 ) その他スタイリスト私物。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=丸谷嘉長

STYLING=伊藤伸哉

HAIR&MAKE-UP=堀江万智子

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