PERSON

2025.08.13

武田真治、右足骨折して約1年トレーニングできず、見直したこと

2022年に右足を骨折し、ほぼ1年、身体を鍛えることから遠ざかっていた武田真治。20年以上続けてきたトレーニングを休んだことで、心境や考え方に大きな変化がもたらされたという。その変化とは?【特集 魅せるカラダ2025】

武田真治氏

“運動をしない”ことが習慣になった

20年もの間ルーティーンとしてきたトレーニングを休むことでストレスを感じたのではないか。そう尋ねると、武田は明るい笑顔を浮かべて否定する。

「1年近くも運動しないと、それが習慣になるんですね。怪我をする前は、運動しないと気分が滅入ったり、イライラしたりしていましたが、それがすっかりなくなりました。きっと体質も変わったのだと思います。

26歳でトレーニングを始めた時も、最初の一歩がなかなか踏み出せませんでしたが、運動を休むことも同じですね。50代になって、これまでのトレーニングを見直した方がいいと心のどこかで思いながらも、きっかけがつかめず無理を続けていたんでしょうね。いざ休んでみると、だんだんとそれが“普通のこと”になってくる。人間の順応力はすごいなと思います」

身体をハードに鍛えていた時期も、食事制限はせず、自分が食べたいものを口にしてきた。運動を止めても、その食生活は変わらなかったため、体重や体脂肪率は当然アップ。本人曰く、「人生でマックス」だというが、それでも見事な筋肉は維持している。

「最高潮だった時に比べれば落ちていますが、思ったほど筋肉量が減らなかったのは、ありがたいですね。それは、長年鍛え続けてきたおかげなのかもしれません」

弱い人の立場になってモノを見ることに気づいた

ハードなトレーニングを封印したことは、考え方やものの見方、人生観にも大きな影響を与えた。

「怪我をした直後に、新宿駅前の横断歩道を松葉杖で渡ったことがあるんですよ。片道3車線ずつ、全部で6車線と広い道路で、人が多くて。慣れない松葉杖に苦戦しつつ、人を避けながら進んだんですけど、ものすごい時間がかかって、信号が変わるまでに渡り切れなかった。雨も降っていたから、それだけでびしょびしょ。

こんなことは初めてだったので、ショックでした。でも、同時に、これまで横断歩道をさっさと渡るなんて当たり前だと思っていた自分の不遜さにも気づかされたんですよ。もっと弱い立場の人の目線に立って、ものごとを見なくてはいけないんだと」

かつて口にした「この肉体が名刺がわりだ」という言葉についても、思う所があったようだ。

「この発言って、物差し自体が筋肉なんですよね。筋トレで身体を鍛えている人は基本的には健康ですし、ハードなトレーニングをやり抜くメンタルの強さもあるというのは間違いないと思います。ただ、身体を鍛えていなくても、他の能力に秀でていたり、やり抜く強さを持っていたりする人も当然いる。そんな当たり前のことをしばらく忘れていたかもなと。

50代に入った節目の年に大きな怪我をした意味は、精神的にも肉体的にも、大きな意味があったと思います。あの時怪我をしていなかったら、相変わらずハードなトレーニングを重ね、無茶な仕事を受け、生活にさえ支障が出るようなマイナスのことが起こっていたかもしれませんしね。今は、神様が、『一度立ち止まって自分を見つめ直しなさい』と、怪我をさせてくれたような気すらしているんです」

「立ち止まった意味はもうひとつある」とも、武田は言う。2023年に誕生した娘に、父親としてガッツリと向き合うためだ。最終回となる次回は、武田流子育てについて話を聞く。

武田真治/Shinji Takeda
1972年北海道生まれ。1989年「第2回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」グランプリを受賞し、1990年に俳優としてデビュー。ドラマやバラエティ番組、ミュージカル、舞台と幅広く活躍し、サックスプレイヤーとしても活動。2018年放映の『みんなで筋肉体操』(NHK)出演も大きな話題になった。著書に『優雅な肉体が最高の復讐である。』『上には上がいる。中には自分しかいない。』がある。

<衣装クレジット>
デニムパンツ ¥44,000(ハードバード/フラットヘッド神宮前店 TEL:03-6804-3105 ) その他スタイリスト私物。

TEXT=村上早苗

PHOTOGRAPH=丸谷嘉長

STYLING=伊藤伸哉

HAIR&MAKE-UP=堀江万智子

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