HEALTH

2025.07.20

1時間以上はダメ? たんぱく質はたくさん摂る? ビギナーが陥りがちな筋トレ3つの罠【バズーカ岡田】

健康維持のため、ボディメイクのため、いざトレーニングを開始した際、多くの人が陥りがちな落とし穴があると、骨格評論家・バズーカ岡田として活躍する、日本体育大学教授の岡田隆氏は言う。トレーニングの習慣化、その先にある目的達成のために、罠にハマらないように注意したい。

Unsplash/Ryan Snaadt  ※写真はイメージ   

罠①過度な筋トレ|筋トレは1時間やらなくていい

ジム通いやトレーニングをスタートしたとき、まず気をつけたいのが、張り切り過ぎないこと。スタート直後は誰もがやる気に満ち溢れているものだが、だからこそ、ブレーキをかける必要がある。

「強度や頻度を高め過ぎたり、トレーニングの時間を長くし過ぎたりすると、当然ケガのリスクが上がります。ジムに行くと1時間はトレーニングしないといけないと考えている人が多いのですが、この1時間という数字に合理性はありません。

たとえば、健康効果を考えるなら、1週間に30〜60分程度の筋トレをすると、死亡リスク、心筋梗塞などの心血管疾患、糖尿病、がんの発症リスクが10〜17%低下するというデータがあります。つまり1日5〜10分の筋トレでも得られるものは大きいというわけです。

“ジムに行ったら1時間トレーニングをする”と決めてしまうと、それが精神的なハードルになり継続を妨げる要因になってしまいます。運動初心者がいきなり1時間ランニングするのが難しいように、今まで運動をしてこなかった人が1時間筋トレをするというのはとてもハードなことであるという認識を持ちましょう」

罠②睡眠時間を削って筋トレ|まずは7時間睡眠を確保!

Unsplash/michelen studios  ※写真はイメージ  

多忙なビジネスパーソンが、筋トレを始めるとき、やってしまいがちなNG行動が睡眠時間を削ること。日々、忙しく働いているからこそ、十分な睡眠時間を確保するべきだと、岡田氏は言う。

「睡眠時間が6時間未満になると、心疾患のリスクが上がるという研究報告があります。睡眠時間を削ったことによるネガティブなイベントが起こるのは、10年先、20年先の話なので、働き盛りのビジネスパーソンは睡眠時間を削りがちなのですが、6時間睡眠の人が運動時間の確保のために睡眠時間を5時間にするというのは、まったく推奨できません。できれば、6時間睡眠を7時間にしてほしい。そのうえで運動時間を確保するのが、理想的な身体作りと言えるでしょう。

日々の生活を全部書き出してみて、どこを削れるか考える。スクリーンタイムを減らす、夜の会食をランチにするなど、できることはあるはずです。私自身、研究者に加え経営者としても働いていて、やろうと思えば無限に仕事がある感覚は理解しているつもりです。しかし、コンディションを良好に保ち、高いパフォーマンスを発揮するために、睡眠時間の確保は非常に重要なのです」

運動は、体作りだけでなく自己理解力の向上にもつながる。

「大谷翔平選手が良い例です。自分が何に対してストレスを感じたり、どのくらい睡眠時間をとって何を食べると翌日快適にパフォーマンスできるかを理解している。これはビジネスパーソンにとっても役立つ能力ではないでしょうか」

罠③タンパク質信仰|焼き魚か刺身定食があればそれで良し!

Unsplash/kouji-tsuru ※写真はイメージ

筋肉の合成に欠かせないタンパク質。ボディメイクのために、トレーニング後に積極的にプロテインを摂取しているという人も多いはずだ。しかし、ここにも落とし穴がある。

「タンパク質を摂れば摂るほど筋肉が成長すると思っている人が少なからずいるのですが、これはもう科学的に完全に否定されています。以前は1日に体重1kgあたり2gのタンパク質を摂取しましょうと言われていましたが、現在は体重1kgあたり1.62gを超えるタンパク質を摂取しても筋肥大に影響はないとされています。体重70kgの人であれば1日に約113gのタンパク質を摂取すれば十分というわけです。

一度の食事でタンパク質を大量に摂取しても上手く消化・吸収できません。朝、昼、晩と3度の食事でバランスよく摂取することが大切です。過度なタンパク質摂取は、腸内環境を悪化させ、健康を害する可能性もあるので注意しましょう。

またタンパク質よりも不足している人が多く、積極的に摂ってほしいのが腸内環境の改善、血糖値上昇の抑制といった働きがある食物繊維。大麦、玄米、野菜、豆類、きのこ類、海藻類などに多く含まれています」

プロテインを含むサプリメントに頼り過ぎないことも大切だ。

「私もプロテインのプロデュースをしていますが、あくまでも食事でのタンパク質摂取が不足しているときのみ活用しています。そして何を食べるかと同様に、何を身体に入れないかも重要です。サプリメントにはさまざまな添加物が含まれています。私がプロデュースしているプロテインは、極力余分なものを排除していますが、それでも製品化のために最低限の添加物を使用しています。添加物が悪というわけではありませんが、サプリメントに頼るということは、本来摂らなくてもいいものを大量に摂取する可能性が出てくるということになります。サプリメントはあくまでも栄養補助食品ということを忘れないようにしましょう」

岡田隆氏(バズーカ岡田)
『最高の除脂肪食』は、トレーニングやダイエットに役立つ食事術について解説している。

筋力は魅力的。だからこそ生涯続けられる筋トレを

最後に筋トレを始めるビジネスパーソンに忘れないでほしいことがあるという。

「筋肉は人を魅了するものがある。だからこそ、筋トレを始めるとどんどんとのめり込んでいき、もっと頑張りたい、早く結果を出したいとなって、3時間おきにタンパク質を摂る…といった理論を取り入れ始めます。ただ、それを何十年もずっと続けられますか? と問いたい。きっとつまらない人生になりますよ。

私が45歳になった今でも筋トレを続けられているのは適度に緩めているからです。お酒も飲むときは飲みます。私のようなナチュラルなボディビルダーたちが大好きな食事はメインが魚、鶏の和定食。結構普通なんですよ。できないことは続かない。1年間だけやって終わりだったらいいけれど、それでは元に戻ってしまいます。健康的に一生続けられるものを選んでください。身体づくりはイベントではなく、人生そのものなのです」

岡田隆氏(バズーカ岡田)
岡田隆/Takashi Okada
1980年愛知県生まれ。日本体育大学 教授。博士(体育科学)。理学療法士。骨格評論家・バズーカ岡田としても活動。学術研究から得られた知見を実践できる場としてパーソナルジム「STUDIO BAZOOKA」やボディケアサロン「ACTIVE RESET」を展開。公式YouTube「新・バズーカ岡田チャンネル」。新刊として7/24に『究極の筋トレ休息法』
(ポプラ社)
、8/7に『運動0でお腹が凹む! 「脂肪燃焼」食』(講談社)が発売される。

TEXT=神津文人

PHOTOGRAPH=野﨑慧嗣

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