今、世界中を夢中にさせているガールズグループXG。そのXGの所属するXGALXのCEO兼Executive Producerを務めるのが、韓国音楽業界で活躍し続けてきた
アメリカ×日本×韓国というアイデンティティが、前例のない音楽や文化を生みだす
今、世界を熱狂させ、K-POPでもJ-POPでもない、「X-POP」というジャンルを確立しているアーティストがいる。7人組のHIPHOP/R&Bガールズグループ・XGだ。彼女たちの人気を牽引するのが、Executive ProducerのJAKOPS(SIMON)である。
「韓国は今、音楽シーンの歴史を変えるほどの影響力を持ち、K-POPは大きな産業として成長しています。それは自分自身も嬉しいし、むしろエモいとさえ思う。やっぱりK-POPは自分にとってものすごいモチベーションと原動力と、やる気にしてくれる大事な存在ですね」
日韓のミックスとしてアメリカで生まれたJAKOPS(SIMON)氏。日本、韓国、アメリカでの音楽活動を経て、2010年DMTN(DALMATIAN)のメンバーとして韓国でアーティストデビューを果たす。2010年と言えば、少女時代やKARAといった、いわゆる「第二世代」と呼ばれるK-POPグループが続々と日本デビューを果たし、日本におけるK-POPブームの火付け役として大ブレイクを果たした年とも重なる。
韓国のエンタメ、そしてK-POPが本格的にアジア、そして世界に向けて大躍進していくなか、JAKOPS(SIMON)氏は、アーティストとして、作家として、そしてプロデューサーとして、さまざまな立ち位置からK -POPの躍進期をあますところなく経験してきた。
「間違いなく、韓国の音楽マーケットはスタート地点からグローバルを視野に入れざるをえなかったことが、結果、今の世界的人気につながっています。日本は国内だけで巨大な市場を持っていたり、地理的に有利な条件だったり、今でも音楽産業でいえばアメリカに次いで第2位を誇る。国内で音楽産業が成り立っているのに対し、韓国は市場規模の限界もあるので、『国を超えてものをつくる』という、そもそもの意気込みや姿勢がまず日本とは違います。
ビジネスとして、生きるか死ぬかの話なので、厳しい練習、熾烈な競争を含めて、世界と競ってよりよいものをハイペースでつくらなければならない。だからある意味で今のK-POPの地位は予言されていたのではないかなとも思いますよね。そんな韓国の音楽業界の中心にいれたことに感謝しています」
日韓のミックスという背景から生まれる唯一無二のユニークネス
「JAKOPS」というプロデューサー名は、JAPAN+KOREA+Produce by SIMONに由来する。K-POP業界で経験を積んできたなか、なぜ、K-POPグループではなく、日本人ガールズグループにこだわったのだろうか。
「半分日本人の魂を持ち、血が流れているからこそ、JAKOPS(SIMON)らしさとは? を考えた時、日本人アーティストを手がけてみたいという想いが湧き上がりました。そしてグローバルな視点で考えた時に、日本の音楽業界で新しいものを生みださないといけないとどこか感じていて。音楽、仕事、自分自身への向き合い方、そのアティテュードに疑問を感じていた。
自分が日韓のミックスで、両国で経験したからわかること。歴史も含めて複雑な部分があるからこそ、日韓の文化のスペシャルな部分と、自分のもうひとつのアイデンティティであるアメリカの文化を、とても大変ですがひとつにまとめて、前例のないハイブリッドな文化や音楽をつくり世界に発信していくことが、僕の使命なんじゃないかと」
XGが世界に響かせるポジティブなエネルギー
メンバーの選抜から、育成、制作、マネジメントまでの全分野において指揮をとり、自身がCEOを務めるXGALXにとって初のプロジェクトとなったXG。2022年にデビューしてからの彼女たちの人気は飛ぶ鳥を落とす勢いで世界中に広がっている。それはメンバーたちが、それぞれの個性を最大限に輝かせ、自分がオリジナルであることを心から楽しみ、常にポジティブなエネルギーを発しているからに他ならない。
「もともと、世間一般が考えるステレオタイプな女性像に対して、疑問を持っていたし、一般的な“ガールズグループ”って、表現の幅がとても狭い。その表現の幅を破っていくほうが自分の新しい挑戦、音楽の可能性にもつながるし、日本でも韓国でも、女性たちが見る景色が変わるんじゃないかと思ってやってきました。本来女性って、いるだけでどんな個性を持っていても“美しい存在”なんですよ。それをわざわざカテゴライズしたり、肩書きをつけて価値を与えちゃう。それはちょっと違うのではないかと。
だからXGのメンバーに対しても、世界で輝きたいという夢を持つ10代の頃から、本気で本音で向き合い、それぞれがオリジナルであるということ、個性という本質を伝えていく勇気、それは僕自身ものすごい努力をしてエネルギーを使って向き合ってきたことのひとつ。それが、彼女たちの音楽や姿勢を通して世界に伝わっていたら、こんなに嬉しいことはないですね」
すべてをかなえる、自信と確信
言霊を大切にする人である。現在、XGはワールドツアーの真っ只中。ドキュメンタリーシリーズ『XTRA XTRA』では「XGが(アメリカの)スーパーボウルのハーフタイムショーに立つのが夢」と語る。世界に向けて「X-POP」を拡大していくために、どんなビジョンを思い描いているのだろうか?
「いっぱいあって全部言ったら、びっくりしますよ」と、どこか自信を漂わせながら軽やかに笑う。
「今思い描いていることに対して、自分はできる、という自信と確信しかない。この考えって、3歳くらいの時から多分変わらない(笑)。言ったことをすべてかなえてきたんです。スーパーボウルもやるし、宇宙人にも会うし、パリコレもやるし、福祉事業もやる。それができる機会を、僕は絶対につくるんです」
期待を超え、裏切ること、インパクトを起こすことがエンタメの神髄
先月開催された2025SSパリコレでは、森永邦彦氏率いるANREALAGEのショーでサウンドプロデューサーを務め、また新たなキャリアを重ねた。
「パリコレは、個人的な仕事でもあり、社運をかけたプロジェクトでもあります。というのも、自分がやりたいことをやるためにXGALXという会社をつくりました。その代表である自分が、ちょっと変わった動きをするということは、この会社に文化的価値を根付かせる大事な活動です。
個人が持つ、それぞれオリジナルのアイデンティティがより重要視され、求められる今の時代。多分僕、映画もつくると思います。それはXGALXにいるアーティストたちが、将来、自分たちにはこんな広い世界があるんだ、と、失敗を恐れずにやりたいことに挑戦できる環境を整えることに他ならないし、その文化に共感、共鳴してもらうことに、会社をつくった価値があると感じるから。
期待を超える、期待を裏切る。いろいろなインパクトを起こしていくことがエンタメの基礎だし、人を楽しませる神髄だと思うんですよね」
JAKOPS(SIMON JUNHO PARK)氏着用衣装:シャツ¥501,600、ニット¥315,700、パンツ¥198,000、シューズ¥170,500(すべてZEGNA/ゼニア カスタマーサービス TEL:03-5114-5300)
この記事はGOETHE 2024年12月号「総力特集:昂る、ソウル」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら