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2024.05.24

市村正親「30年間同じ役を演じても、飽きることなど一切ない」

アスリート、文化人、経営者など各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第7弾が、2024年5月15日、16日の2日間にわたって開催され、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、俳優の市村正親さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※2024年5月20日〜5月31日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より

市村正親

好きな道であれば、必ず未来は開ける

川越商業高校時代に演劇に目覚め、卒業後は舞台芸術学院に通いました。3年間、真面目に1日も休まずに授業に通い続けた。だって、授業料を払っているんだから、回収しないともったいないでしょう。途中で脱落する生徒が多く、入学時に50数人いた同級生は卒業時には12人になってしまいました。

卒業後、俳優の西村晃さんの付き人をやらないかと声がかかった。真面目で付き人にぴったりのタイプだと思ったのでしょうね。誘いに応じ、3年間、付き人を務めました。これが人生にとって大きなプラスになった。西村晃さん、森繫久彌さんをはじめ、たくさんの役者を見ることができましたから。

座長クラスの売れている役者は、酒を飲んでいても麻雀をやっていても、芝居の話しかしない。売れてない役者は、飲んでいる時に愚痴や不満ばかりを言っている。手本にしたい人と、ああいう人間にはなりたくないって思う人の両方と接することができました。

3年後、付き人を辞めて劇団四季のオーディションを受けました。学校3年、付き人3年、そろそろ自分のことを第一に考える時期かなと思ってのことです。演目は『イエス・キリスト=スーパースター(後のジーザス・クライスト=スーパースター)』。会場に行ったらものすごい人数で、イエスやユダなど主要キャストは到底受からないだろうと思いました。そこで複数の出演者を募集している役を狙い、第一希望は群衆、第二希望は使徒を選択。だって、オーディション参加費用として5000円を支払っている。何か役を取らないと元が取れないでしょう。

思惑通り、群衆役に合格。後にヘロデの役もいただきました。そのヘロデが好評で、劇団四季から「正式に入団しないか」と声がかかったんです。

『ミス・サイゴン』エンジニア役を30年

劇団四季入団から17年、長く演じた『オペラ座の怪人』のファントム役を降板することになりました。僕の代表作といえる役ですから、ショックを受けましたね。でも「42歳だし、ちょうどいい“役(厄)落とし”ができた」と考え、劇団を辞めることにしたのです。

そして挑んだのが、帝劇ミュージカル『ミス・サイゴン』のオーディション。狙うは主役のエンジニア役です。劇団四季を辞めた今、何がなんでも取りたい役。その意気込みで目をギラギラ輝かせてオーディション会場に入っていった。後で聞いたら、会場のスタッフは僕が入った瞬間に「あっ、エンジニアが来た」と感じたそうです。

初演から30年、今もエンジニア役をやらせてもらっています。「30年間、同じ役を演じてマンネリしませんか」と聞かれることがありますが、飽きることなど一切ありません。飽きるどころか「1回1回を大事にしよう」という意識が強まるばかりです。

とはいえ、常に100%全力というわけではありません。初めの頃は100%の力を出し切る気持ちで演じていましたが、『ミス・サイゴン』のアメリカ側のスタッフから「今までの半分の力で演じてくれ」と言われました。周りのキャストのパワーが追いついてきたからちょっとうるさい感じがすると。実際に50%の力でやってみたら、客との距離が縮まった気がしました。

僕が言いたいのは、100%の力を出すなということではありません。「最初は100%の力でやる。だから50%の力に抑えることができる」ということ。みなさんも、まずは全力で挑んでください。好きな道であれば、必ず未来は開けるはずです。

▶︎▶︎市村正親さんの講義全文を動画でチェック。
2024年5月20日〜5月31日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より。※アーカイブ視聴申し込みは5月31日18時まで

市村正親/Masachika Ichimura 
1949年1月28日生まれ、埼玉県出身。1973年に劇団四季『イエス・キリスト=スーパースター』でデビュー、翌年、劇団四季に入団。1990年までの在籍中に看板俳優として活躍する。退団後もミュージカル、ストレートプレイ、一人芝居など様々な舞台のほか、テレビドラマや映画、アニメや洋画の吹き替えなどの声優としても活躍している。2007年には紫綬褒章、2019年には旭日小綬章を受章。

TEXT=川岸徹

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