今回はジャスティン・トーマスのスイングのように、地面反力を効率よく使うための練習ドリルを紹介する。

体が浮くほど地面反力を使うジャスティン・トーマスのスイング
2025年4月に開催されたRBCヘリテージで3年ぶりの優勝を果たし、PGAツアー通算16勝目を挙げたジャスティン・トーマス。その力強いスイングに憧れるアマチュアゴルファーは多いだろう。
トーマスのスイング最大の特徴は、インパクトで両足がつま先立ちになり、左足が宙に浮くことさえある点だ。これは「地面反力」を最大限に活かしているからだが、トーマスが意識的につま先立ちをしているわけではない。
幼い頃からゴルフを始めた選手は、自分の体力に対して重いクラブを振るため、自然と地面反力を使うスイングが身につく。その結果、インパクトでジャンプしたり、つま先立ちになる動きが習得されやすい傾向がある。
三代続くプロゴルファーファミリーに育ったトーマスも、ジュニア時代に地面反力を使うスイングを自然と覚え、大人になっても体が浮き上がる動きを継続しているのだろう。
アマチュアはジャンプを真似する必要なし
ただし、アマチュアゴルファーが実際のスイングでトーマスのようなジャンプ動作まで真似をするのは難しい。足を浮かせるインパクトを再現するとバランスを保つのが難しく、打点が不安定になるため、そこまでする必要はない。
重要なのは、上方向に働く地面反力を回転力に変える動きだ。地面反力が上方向に作用することで肩の縦回転が加速し、スイングスピードと飛距離が伸びる。
「左サイドが伸び上がると前傾が崩れてダフるのでは」と心配する人もいるかもしれない。しかし、トーマスは左足を伸ばしながらも肩を縦回転させ、前傾姿勢を保っている。それどころか、深い前傾を維持したまま回転し、インパクトゾーンを長く取ることでアイアンの精度の高さにもつながっている。
インパクトで左足を上げ、抜重のタイミングを習得する
ここからは、トーマスのように地面反力を効率よく使うための練習ドリルを紹介する。
インパクトで左足が浮くほどの地面反力を得るには、ダウンスイングの踏み込みと、その後の「抜重」が不可欠だ。
トーマスは切り返しで左足をしっかり踏み込み、ダウンスイングでは左サイドを伸ばし始める。この左サイドの伸び上がりが「抜重」であり、地面からの反発を上方向に伝える重要な動きだ。抜重と肩の縦回転が連動することで、スイングスピードはさらに増す。
抜重はタイミングが命で、遅れると地面反力をうまく使えない。イメージが湧かない人は、ジャンプを思い浮かべるとわかりやすい。踏み込んだ後、素早く力を上方向に切り替えなければ反発力は生まれない。ゴルフも同様で、強く踏み込みすぎたり、長く踏み込み続けると逆効果になる。
トーマスはダウンスイングの早い段階、左腕が地面と平行になる前から抜重を始めている。踏み込みの強さよりも、抜重を始めるタイミングこそがスイングに大きく影響するのだ。多くのアマチュアは踏み込みまでは意識しても、その後の動きまで意識していないのではないだろうか。
勝負を分ける「抜重」のタイミング
抜重のタイミングを体得するには、インパクトで意識的に左足を浮かせる練習が効果的だ。方法はシンプルで、トーマスのようにインパクトの瞬間に左足を宙に浮かせるつもりでスイングする。
浮かせることが難しければ、つま先立ちでも構わない。ポイントは、強制的にインパクトの抜重状態を作り、その感覚を体に覚えさせることだ。
多くのアマチュアは、現状の感覚では抜重のタイミングが遅く、インパクト時に左足が浮かないはずだ。タイミングを早めるには、バックスイングで左腕が地面と平行の高さに上がった時点で左足の切り返しを意識し、切り返し直後から抜重を始めるイメージを持つとよいだろう。
一見早すぎるように思えるかもしれないが、普段から踏み込みを強調している人にはちょうどいいタイミングになる。
適切な抜重のタイミングが身につけば、トーマスのように飛距離と方向性を両立したスイングが可能になるはずだ。
抜重を身につける方法の動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。