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2024.05.22

「北京五輪後、引退も考えた」髙梨沙羅、ジャンプを続けるきっかけになった言葉とは

アスリート、文化人、経営者など各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第7弾が、2024年5月15日、16日の2日間にわたって開催され、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、スキージャンプの髙梨沙羅さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※2024年5月20日〜5月31日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より

髙梨沙羅

日々の努力をつないで、壁を少しずつ超えていく

ジャンプを始めたのは小学2年生のとき。父も兄もスキージャンプ選手で、小さな頃から飛ぶ姿を見ていたので、その流れで自然に「私も」という感じでしたね。世界を目指すきっかけになったのは、元女子スキージャンプ選手の山田いずみさんとの出会い。自分ならではのスタイルを持っていて、強くてカッコいい。ジャンプだけでなく、見た目もいつもキレイ。いつか自分もこんな凛とした女性になりたいなと思いました。

少しずつ試合で好成績を残せるようになり、17歳の時にソチオリンピックに出場。スキージャンプ競技で女子がオリンピックの正式種目として採用された初めての大会です。オリンピックに出たいという憧れは以前からありましたが、女子は正式種目ではなかったので、夢でしかなかった。その夢の舞台に立てて感動しましたね。

でも、結果は4位。オリンピック前のワールドカップで13戦中10勝を挙げ、周囲からも「金メダル候補筆頭」と言われていたのに、結果は残せませんでした。「この場に立てるのは、多くの人の支えのおかげ。結果で恩返ししたい」という思いをかなえられなかったのが悔しい。試合後は、自分へのやるせなさと申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。

オリンピックの敗戦で壁を感じました。でも、スキージャンプ競技を続けるなら、その壁を乗り越えていかなければなりません。私は気持ちを切り替えて、一気に壁を乗り越えるなんてことはできなかった。目先の試合ひとつずつに集中し、それを繋いでいくことで少しずつ壁を乗り越えていく。そんな意識を大切にしました。

4年後の平昌オリンピック。結果は銅メダル。うれしいというより、「役目を果たせたかな」というホッとした思いが強かったですね。小さな頃から憧れだった山田いずみさん、その時は私のコーチでした。大きな試合で成し遂げた時にお姫様抱っこをしてくれるのが恒例だったのですが、いずみさんにメダルセレモニーでお姫様抱っこしてもらったのがうれしい思い出です。

ただ、結果に満足はしていなかった。やっぱり金メダルを取れないと、心からの納得はできないんだなと。試合後に「北京に向けて頑張ります」と宣言。言葉に出したことで、次の目標が定まりました。

失格処分を受けた北京を経て、2026年のミラノへ

2022年に開催された北京オリンピック。新種目の混合団体でスーツの規定違反となり、失格の処分を受けてしまいました。一緒に出場した選手や、これまで支え続けてくれたスタッフに申し訳ない。そんな思いでいっぱいでした。

北京オリンピックの後、引退も考えました。もやもやとした気持ちを抱えながらも競技は続けていて、サマージャンプの練習をしている時に、そこで思いもかけず、観客のひとりから「あなたのジャンプを見ていると元気になる。ありがとう」という言葉をいただきました。こんな自分でも社会のためにできることがあるのなら、ジャンプを続けよう。いつまで経っても、周りに助けられるばかりです。

2026年のミラノオリンピックに向けて再スタートを切りました。2022-23シーズンに大きなケガをしてしまいましたが、そのおかげでケガをしないための予防や準備に強く取り組めるようになった。どんな経験も糧になる。百聞は一見に如かず。何事も身をもって経験しないと、わからないんです。

今、振り返れば、何も考えなくても勝てていた頃は、ただ試合を消化しているだけという感じだった。それが今は試合に勝つことが、心からうれしい。チームの仲間と喜び合えるし、たくさんの人に心から感謝することができる。だから、ミラノでは自分の役目を果たしたいんです。

▶︎▶︎髙梨沙羅さんの講義全文を動画でチェック。
2024年5月20日〜5月31日18時までの無料限定公開。申し込みは画面内右上もしくは下の「視聴登録はこちら」より。※アーカイブ視聴申し込みは5月31日18時まで

髙梨沙羅/Sara Takanashi
小学2年生からジャンプを始め、2011年2月のコンチネンタルカップにて国際スキー連盟公認国際ジャンプ大会での女子選手史上最年少優勝を果たす。その後、FISワールドカップにおける4度の総合優勝などを経て、2018年平昌冬季五輪では銅メダルを獲得。FISワールドカップでは男女を通じて歴代最多の63勝、また女子歴代最多116回目の表彰台に立つ偉業を成し遂げた。

TEXT=川岸徹

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