放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「私はまだ27歳なのですが、会社からリーダーポジションを打診され、しぶしぶ受けてしまいました。大人数をまとめ上げ、成果を出している、桝本さん流のリーダーの心得がありましたら教えてください」という相談をいただきました。
他人に指示を出すリーダー業はストレスが溜まるし、不況下なので個人スキルをどんどん磨いておきたい。
しかし会社側は、離職率が上っているので、早めに責任あるポジションを与えて人材を囲い込みたい。
このような流れで、いま「リーダーになりたくなかった人がリーダーに登用される」ケースが増え、相談者さんのように困惑する人たちが増加しています。
では、そんな時代のリーダー像のトレンドとは、どういったものなのでしょうか?
今回は、東証プライム上場企業で管理職研修も行っている僕が、明日からリーダーになるかもしれない時代だからこそ知っておきたい「3つのリーダー像のトレンド」をシェアしていきたいと思います。
①過剰に「和を語るリーダー」は求められていない
「理想のリーダーは?」と聞くと、多くの人がマンガ「ONE PIECE」のルフィのような、「チーム大切にする」「仲間(部下)を信じる」などの、和を重んじるリーダー像を挙げます。
しかし僕は、「組織づくりのポイント」は、「過剰に和を語る人を中心にそえないこと」だと考えています。
仲間意識を大切にするリーダーはとても美しいのですが、和を過剰に語る人ほど“和を乱した人に過剰に厳しくなる「いびつな和」をつくる”からです。
皆さんもあるのではないでしょうか。仲良しグループやコミュニティの中で、やたら「仲間意識や絆」を語る人がいて、いつしかそれが「掟」のようになり、そぐわない行動をすると、仲間外れや疎外された経験が。
仲間意識は、語るものではなく胸にピン留めしておくものなので、過剰に和を語るリーダーにならないようにしてください。
もしも、チームの和や結束を強くしたいときは、語って聞かせるのではなく、“部下にとってほしい振る舞いを、まずあなたが行動や態度で示す”ことを心がける。これが現代では大切です。
②「やさしいだけのリーダー」は時代遅れ
昭和・平成前期は、部下をビシビシ鍛える「教官タイプ」のリーダーが主流でしたが、やがて、コンプラを遵守し、部下にやさしく寄り添う「共感タイプ」のリーダーが求められはじめました。
そんな流れをうけ、僕も吉本NSCで、全生徒に「さん付け」し、やさしい育成にシフトチェンジした時期があったのですが、ガクンと生徒の成長率が下がったんです。
しかも、生徒のほうから「さん付けだと、冷たく感じます」というクレームや、「僕は大丈夫なので、厳しくお願いします」といった要望まで届きました。
そこから学んだのは、現代若者が本当に求めているもの。彼らは前時代の「指導・育成」のすべてが「そぐわない」と思っているのではなく、昭和歌謡や平成レトロを愛でるように、「良いものは良い」という価値基準を個々に持ち合わせているのです。
なので僕は、「やさしさ」と「厳しさ」を掛け算し、最初は全員「さん付け」だけど、距離が縮まった生徒からどんどん呼び捨てにしたり、基本はやさしく注意するけど、時には愛をもって厳しく伝えるといった、「共感」と「教官」をハイブリッドした育成へと移行しました。
それから約5年が経ちますが、以前よりも多くの芸人さんがメディアや賞レースなどで結果を出し、名前を轟かせつつあります。
③現代リーダーに必要なのは〇〇〇の自覚
最後に、リーダーになるということは、決して「仕事について何でも知っている人」になるわけではありません。
よく陥るのが、「自分の知見と知識がすべて」だと信じ、部下からの新提案を「知らない」「聞いたことがない」でジャッジしてしまうリーダーです。
例えば、若手芸人の漫才に出てくるワードも、時代とともにアップデートされています。
学校をテーマにしたネタ一つをとっても、肌色→ペールオレンジ、現代社会→公共、下駄箱→靴箱、タンバリン→タンブリンなど、たくさんあります。
これを講師が「知らない→面白くない」と切り捨てるのは最も失礼なこと。
判断のものさしを、自分の知見や知識にせず、「自分は知らないことが多いリーダーなんだ」を前提にしなければならないのです。
そう、私たちリーダーに必要なのは“「すべてを知っている人」ではなく、「知らないことについて、より多く自覚している人」”になることなんですね。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。