PERSON

2024.07.22

中間管理職がすぐに手放すべき2つのものは、「完璧」と「関心を引く」

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「吉本NO.1講師」なんて謳っていただいているが、大した人間ではない。仕事をクビになったこともあるし、離婚経験者だし、(20年前には)パワハラをしたこともあります。

「成功の鍵」がどんなモノかは知らないが、たくさん持っていた「失敗の鍵」の一つが、たまたま現在地につながっていたので、どんどんミスや失敗はしていいと思っています。

しかし、クビ宣告や離婚は大量のエネルギーを消費するし精神が滅入るので、できれば皆さんには経験してほしくない。

そこで今回は、自戒を込め「40歳までにやめるべきこと」をシェアしていきます。

「完璧」の勘違いに気づき、手放すこと

完璧の「璧」を、3人に1人が「玉」でなく「土」と書き間違えたことがあるそうです。

漢字さえ“あやふや”なのだから、私たちは「完璧」という言葉をもっと“ゆるく捉えていい”と思っています。

30代になると、主要ポストを任される機会が増え、部下や後輩が増えるリーダーになり、「期待に応えよう」「結果を出そう」が発露し“完璧主義者”が増えていきます。

しかし、完璧を追い求める人は、完璧にいかなかったとき、うまくできなかった自分を責めるか、成果を出せない部下を責めるか、チームを組織した会社を責める。

そう“何かを責める人”になっていくんです。

「うまくいかない」と「頑張っていない」はイコールじゃないのに、完璧であろうとするがあまり、自分にも他者にも長考と労働を求めてしまう。その結果、職場で煙たがられ、孤立していく。

この“完璧主義の罠”は、30代で抜け出すべきです。

30代のとき、僕は18本の番組を担当し、すべての仕事を完璧にやる自分、生産性の高い自分に酔っていました。

しかし奥さんは、仕事ばかりで家庭を顧みない夫に「失格」の烙印を押しました。

職場では完璧主義なのに、肝心の家庭は“完璧の外側”に配置してしまう。僕のような勘違いをしていませんか?

大切なのは“何かに対して完璧を求める”ことでなく“広くまんべんなくベストを尽くしてみる”。そういった姿勢ですよね。

「関心を引く」を手放す

10代の子は、みんな「目立ちたい」という欲求をもっており、「勉強ができる」「スポーツが得意」「オシャレ」といった出口で満たされていきます。

しかし、その欲求が叶わない子は、「グレる」「校則をやぶる」「授業をこわす」といった“悪目立ち”を始めます。

実はこれ、40代からでも起こり得るんです。

例えば、ネット上で誹謗中傷をする人は、40代から急増し、50代男性が全世代の約25%を占めるといったデータがあります。

また、金銭に余裕も出てくることから、特定の異性にプレゼント攻めや付きまといをして、驚かれたり注意をうけることで特別感を味わったりする人も増える傾向があります。

これは、部下へのコンプラやハラスメントへの恐怖心といった中間管理職ならではのストレス、学生時代の親友たちが家庭をもち疎遠になるといった、職場やコミュニティでの“孤独感”が一因と言われていますが、“欲求が満たされないから悪目立ちに走る”といった行為は10代のそれと似ていますよね。

僕はネットで誹謗中傷をしたことはありませんが、彼らなりの「正義感」、言わば“間違えを犯している人を正したい”という衝動は理解できます。

ちょうど40歳になったころ、目上の人にはヘコヘコしているのに、年下のスタッフやADはアゴで使うプロデューサーがいました。

「オレが正さなければ」という妙な正義感から、スタッフ飲み会で、みんなの前でコテンパンに論破し、辱めたのです。

そのときの僕には、正義感だけでなく、周りの気を引き、耳目を集めようとする気持ちもあったと感じます。

40代を境に、こういった“感情の罠”も芽生えます。皆さんは“相手の関心を引こうとせず、相手に静かな関心を持つこと”を大切にしてくださいね。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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