チュートリアル徳井、2019年税金申告漏れ騒動を振り返る「その何年も前から迷いながら仕事をしていた」【桝本対談⑤】

放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC（吉本総合芸能学院）の講師として10年以上にわたって人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんが、人気芸人・クリエイターと対談する本連載。今回のゲストはNSC大阪校13期の同期で、桝本さんと同居していた時期もあるチュートリアル・徳井義実さん。ネタ作りの秘訣や漫才づくりの裏側、仕事や人への向き合い方、近年のM-1に対する見解などを全7回にわたって聞いた。第5回。

「たくさんの人に迷惑をかけたのが嫌だった」

桝本　ちょっと話しづらいとは思うんだけど、税金の申告漏れで自粛してた時のこともみんな聞きたいと思う。徳井くんにとって大きな出来事やったと思うねんけど、自粛の間は何考えていた？

徳井　まずは、周りの人たちに迷惑かけてしまったのでそれが本当に嫌やったな。

桝本　徳井くんっぽいねえ。

徳井　我々はニーズがあって何ぼの世界やから、オファーがなくなったら終わりやん。仕事がなくなることは俺のせいだからしょうがないし当然だけど、スタッフの人たちは俺が映ってる番組の再編集とかせなあかんし、スポンサーの人とかにも迷惑かけたし。

桝本　人生の大きなタ―ニングポイントだった？

徳井　うん、ほんまにデカかった。あれは2019年やったんけど、実はあの件が起こるまでの5、6年間くらい、ずっと迷いながらテレビの仕事をしていて。MCの仕事も増えるなかで、「使ってくれてる番組の期待に応えたい」と必死にやっていたんやけど、一方で「最近モノ作りしてへんなあ。これでええんかな」みたいな思いもあったのよ。

桝本　それは初耳、そんなこと思ってたんや。

徳井　MCもいっぱいやらせてもらってたけど、俺は自分がMC得意だと思ったことは1回もなくて。MCって後藤（フットボールアワー・後藤輝基）とか小杉（ブラックマヨネーズ・小杉竜一）とかツッコミの人がやるべきやと思うし。「自分の本当にやりたいことができてないなあ」と思ってたなかでああいうことが起きて、図らずもすべてを失うことになった。仕事が全部なくなって「自分は今後どうやって生きていこうかな」というのはすごい考えたね。

桝本　あの頃、徳井くんと一緒に番組もやってて、「徳井くんものすごく調子いいな」と俺は思っていたんだけど、裏でそういうことを考えてたのか。

徳井　傍から見たら、タレントとしてノっていた時期やと思います。せやけど、毎回MCをやるたびに「大した仕事できてへんな……」と思ってた。でもテレビって僕みたいなMCの方が都合のいい場合もあるんですよ。「そんなニーズにハマってるんやな」って思いながら毎日やってたな。

桝本　2019年に徳井くんが自粛することになったけど、あの頃の徳井くんは僕が今まで見たことないくらい怖い顔してた。今では笑い話ですけど、一緒に飲んだ時に部屋の中でずっとバイクのヘルメットを被っていたこともあって（笑）。とにかく外に出たいんやろうなと思った。

「もういらない」と言われたらしょうがない

桝本　世の中には芸能人じゃなくても、何か失敗をして世間や周囲から叩かれて、自信を失っている人って多いと思うのよ。徳井くんはそこからどうやって浮上できた？

徳井　芸能の仕事に関しては、「徳井はもういりません」と言われたらもう終わらなしょうがないなと思ってた。無理やり戻りたいとかいう気はなかったから。

桝本　言うてた、言うてた。

徳井　でも、どんだけ世間の人に怒られようがニーズがなくなろうが、「結局俺の人生やから、自分で充実させないと」と割り切ったな。自殺でもせん限り自分の人生は続くわけで、「人に迷惑かけなければ、自分の好きに生きていいじゃん」って。

――正直、辛い時期は死が頭をよぎったりもしたのでしょうか……？

徳井　何回か、マンションのベランダから下を覗き込んだこともありましたよ。もちろん、本気ではなかったですけど。

桝本　徳井くんの家で飲んでベランダで一緒にタバコを吸っていた時、「最近、下見てまうねや……」って言ってた時は、ちょっとゾクっとしましたね。でも今だにすごいなと思うのは、徳井くんって自粛してた時も誰の悪口も言わないし、誰かを妬むこともなかったんです。

徳井くんは他人を責めずに自己反省ができて、「明日から自分が何をすべきか？」をすごい速度で計算できる人間なんですよね。「人に興味ない」って言っているくせに、人への察知能力も高いですし。落ち込んでいる人への言葉のかけ方とか、上手すぎて気持ち悪いくらい。一番それが発揮されるのは、女の子が相手の時なんですけどね。

徳井　女の子好きやからね（笑）。

※6回目に続く