放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年以上にわたって人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんが、人気芸人・クリエイターと対談する本連載。今回のゲストはNSC大阪校13期の同期で、桝本さんと同居していた時期もあるチュートリアル・徳井義実さん。ネタ作りの秘訣や漫才づくりの裏側、仕事や人への向き合い方、近年のM-1に対する見解などを全7回にわたって聞いた。第4回。

最先端ツールはとりあえず触ってみる
桝本 今回の対談の第1回で「流行を取り入れた漫才は作らない」って話をしてたけど、徳井くんは色んなトレンドにとても詳しい。徳井くんと一緒に暮らして一番驚いたのは、あらゆる最先端ツールを触ってるってこと。Uber Eatsもいち早く使ってましたし、TikTokが出始めた頃もずっと見ていましたから。
徳井 それは可愛いお姉ちゃん見てただけや(笑)。でもたしかに、「これみんなが使うツールになるかもしれんな」と思ったら取りあえず触ってみるな。僕は”調べ魔”なんですよ。何でもすぐに調べるから、スマホ離さへんし。新しいテクノロジーが好きっていうのもあるし、触らな分からへんこともあるやん。

1975年京都府生まれ。NSC大阪校を経て、幼馴染の福田充徳とのお笑いコンビ、チュートリアルを結成し1998年にデビュー。2006年にはM-1グランプリで優勝した。近年は自身で撮影と編集を行うYouTubeチャンネル「徳井Video」も人気で、キャンプ用品などの商品開発・販売も行う。
桝本 面白いと思ったモノをさらに深堀りしていくことが、キャンプ動画のコンテンツにつながったりしてるんやな。
徳井 昔からやっていたことがどんどん形になったというか、仕事になってきた感じはしてるね。僕はカメラも好きで実際に機材を買ってもいたんですが、YouTubeを始めることになってそれが活きた。あと、僕のYouTubeのひとり飯やキャンプ動画は、お笑いに直結したコンテンツではないんですけど、「自分で作ったモノを出している」という意味では、新ネタ作ってお客さんの前でやるのに近い感覚もあって、すごい好きです。
買い物はエンターテインメント
桝本 徳井くんはリュックとか調理器具とか色んなものを作って販売してるんですけど、これがどれも可愛くて使い勝手もいいんですよ。僕の親戚から、徳井くんのフライパンについての問い合わせがメッチャ来ますから(笑)。
徳井 『モノ・マガジン』みたいなモノ雑誌は片っ端から買ってたし、作り手の思いが感じられるモノは特に好き。
桝本 包丁とかも作ってるよね。
徳井 うん。僕は買い物ってエンターテインメントに近いんじゃないかと思っています。「買い物という体験」「そのモノを持っている時間」「それを使う時間」がトータルで幸せになれるプロダクトが作れたらいいなと。
桝本 徳井くんのこの才能、俺はかなり昔から気づいてましたけど、「そっちに行くな!」と思っていたんですよ。なぜなら、まだまだテレビでの徳井義実を見たかったから。でもあなた、そっちの才覚もあるからね。審美眼があるし、人と交渉しながらひとつのモノを作り上げる力も持っている。
徳井 職人さんとか、モノを作る人と喋るのもすごい好きなんですよ。ネタ書く人とか小説家とかも同じですけど、ちゃんと思いを持って何か作る人って、一定の共通認識がありますから。

――ご自身の商品を販売する「TOKUI VIDEO STORE」もリニューアルしたそうですね。
徳井 タレントプロデュースのブランドにしたくなかったので、ほんまは自分の名前を入れたくなかったんですよ。でも誰が作っているのかがわからないから、いったんは徳井という名前をつけといた。それで3、4年くらい色々な商品を作ってきて、満を持してTOKUIという名前を外し、「Mystify」というブランド名で4月1日から再出発しました。
桝本 カレーまで作ってるし。
徳井 うちのカレーって、いわゆるルーでもレトルトでもなく、フレーク状なんです。フレーク状のルーを作れる工場って日本に3つくらいしかないらしいんですけど、偶然そのうちのひとつの会社の方と出会った。その方が僕のYouTubeを見てくれていて、「よかったら一緒にやりませんか?」と声をかけてもらいました。
その会社のフレーク状のルーは基本無添加で、余計なものが入っていない。全部生食品を加工して作っていて、カレーを食べた後に胃がもたれるとかもない。身体への負担が少ないルーなんです。
桝本 商品説明も完璧やん(笑)。
徳井 僕は買い物体験自体がエンタメだと思っているので、お笑いと同じように興味を持ってくれた方々の人生や生活を彩れたり、楽しませられるモノが作れたらいいなと。
※5回目に続く

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。2連覇した令和ロマンをはじめ、多くの教え子をM-1決勝に輩出している。