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2025.04.14

プライベートも削って、がむしゃらに働かないとダメなのか?「私生活の充実」の捉え方

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

吉本NSC人気講師・桝本壮志。

20代の会社員からこんな相談をいただきました。

「仕事がデキる人に若手時代の話を聞くと、『がむしゃらに仕事を覚えた』『プライベートを削って働いた』という方が多いように感じます。私は、仕事も私生活も充実させたいのですが、このような考えだと出世できないのでしょうか?」

ワークライフバランス(仕事と生活の調和)という言葉は美しいけど、とくに20代は調和が難しいもの。

覚えなきゃならない業務が山ほどあるし、働きづめの同僚を目にすると置いてきぼりになる気がして、なんだかんだ私生活と睡眠を削って働いてしまう……。

そういった方々も、悩んでいる部下を抱えるリーダーも多いのではないでしょうか?

そこで今回は、毎年1000人をこえる20代をコーチングしている僕が伝えてきた、「仕事と趣味のバランスを整える思考のツボ」を、ゆっくり押さえていきたいと思います。

仕事は、年1回は「趣味でズル休み」くらいの感覚でいい

僕はいつも、「本業と同じくらい趣味に夢中になれ」と生徒らに伝えています。

その理由は“「働きながらの趣味」が、あなたの30代以降のキャリアを下支えするから”です。

私たちに与えられる仕事にはどれも、セオリーやマニュアルがあり、これは絵画でいうところの「筆と絵具」といった“基本セット”のようなもの。

どんな筆づかいでどんな絵を描くかは、その人のクリエイティビティ(創意工夫)にかかってきます。

若手はそのクリエイティビティを、これまでの知見(学業、読書、部活、旅行、恋愛など)で創造していきますが、歳を追うごとにその貯金は目減りし、入社から10年経った30代前後でアウトプット力が弱くなってくる。

それを補うのが「働きながらの趣味」ということなんですね。

教え子のキングオブコント王者・空気階段は、ラジオでも人気を博していますが、日本一のコンビでさえ「人生エピソードは数年で尽き、そこから私生活での話題づくりに励んだ」そうです。

そこから学ぶのは“「私生活の充実」は仕事を怠けているのではなく「未来の自己投資」である”ということ。

よく「趣味に生きるのは定年になってから」という先輩方がいらっしゃいますが、あくまでもそれはセカンドライフの充実。

30代からのキャリアを輝かせたい、同僚とは違った筆さばきでキャンパスを彩りたいのであれば、現役中こそ趣味を愛でていくこと。

なので僕は、生徒たちに「仕事は、年1回は趣味でズル休みするくらいの感覚でいいんだよ」と伝えているんです。

「YouTubeショート」の時代は「趣味もショート」

そうは言っても、「趣味に費やす時間の確保ができない」という方もいらっしゃるでしょう。

気持ちは分かります。放送作家の僕も、いつ仕事がゼロになるか分からないフリーランスですし、土日も働いているからです。

しかし、僕の自分時間はとても充実しています。それは“ショート趣味”をつくれたからです。

僕のかつての趣味は「一人旅」だったので、仕事に追われると出かけることができず、どんどん視野が狭くなっていきました。

そこで編み出したのが、会議や打ち合わせが中止になったときに出かける「1時間のショート旅」。

降りたことのない駅で下車し、史跡の案内板を見たり、老舗で食事をしたりする。やってみると“遠出と近場の違い”だけの充分な旅でしたし、最初の旅から20年が経った今では、都内で見た史跡案内板の数は4000をこえ、さまざまな仕事にふりかける知識スパイスになってくれています。

ご存じのとおり現代は、YouTubeショート、インスタグラムのストーリーのように“ショートが定着した時代”です。

一見、「ショート趣味をつくるのは難しい」と思いがちですが、長いコンテンツと短いコンテンツをつくり分けることができる現代人は、短い趣味をもつことも可能だと僕は思っています。

自分時間が少ない人は短い趣味をつくる。若手を指導するリーダーは「趣味は長さじゃない」という思考を共有していく。それが大切なんですね。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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