PERSON

2025.01.15

「パチンコと日雇いで食いつないだ」次長課長・河本がNSC同期の桝本壮志と振り返る青春の日々

放送作家を中心に活躍する傍ら、NSC(吉本総合芸能学院)の講師として10年以上にわたって人気投票数1位を獲得している桝本壮志さんが、人気芸人・クリエイターと対談する本連載。今回のゲストはNSC大阪校13期で同期だった、次長課長・河本準一さん。駆け出し時代の青春の日々や、多くの大御所から可愛がられる河本さんの社交術、生活保護受給問題や感極まって涙を流した先輩芸人への思いなどを全7回にわたって聞いた。第1回。

桝本さんと河本さん

野性爆弾、ブラックマヨネーズ、チュートリアル徳井らが揃うNSC13期

桝本 この「恵比寿 代官亭」は僕らがよく来るお店だけど、準(河本)は久しぶりだよね。僕らはNSC大阪13期の同期ってことで、当時の思い出話とかから話そうか。

河本 やんちゃの集まりやったんで、むちゃくちゃだったよ。

桝本 僕らは「不良の13期」って言われてたから。野性爆弾にブラックマヨネーズ、俳優になった三浦誠己、クワバタオハラ、超新塾、チュートリアルの徳井とか……。

河本 あと、8期生やけどもう1回入り直してるチャンス大城(笑)。

桝本 僕と準はNSCに入る前に出会ってるんだよね。当時はNSCに入るための面接があって、僕らは出身が岡山(河本)と広島(桝本)で近かったんで、僕と後の「次長課長社長」の4人で面接受けてね。今は次長課長に「社長」がいたことを知らない人も多いかもしれないけど、社長は山下っていうて、今は美容師やったっけ?

河本 埼玉でお店構えてる。面接受けた時はトリオを組むとか考えてなくて、「とにかく3人で受けてみるか」ってノリだった。

桝本 今でも覚えてるのは、準は昔から喋りが達者やから、面接でも面接官を圧倒するぐらい喋ってたこと。あと、男前の井上が一言も喋らなかったこと(笑)。その時俺らは名前も知らんから「岡山くん」「広島くん」と呼び合っていて、入学式で再会して準に、「あー、広島くん!」って言われたのも覚えてる。

河本 結局4人とも受かった。

桝本 「よかったなぁ」言うて、その日にカラオケ行って。そこで聞いた井上と準のCHAGE and ASKAがメッチャ上手くて。

河本 『万里の河』な。

桝本 そうやった。『万里の河』で井上の声を初めて聞いたわ(笑)。

毎晩のように河本のアパートに集まった同期たちとの青春

桝本 次長課長社長の3人は(大阪市浪速区の)大国町ってところに住んでて、そこが僕らのたまり場になってな。よう行かしてもらったなぁ。

河本 夏のクソ暑いなか、みんなが毎晩集まって、(エアコンを)18度ぐらいに設定して。

桝本 当時から準は、ホスピタリティーの人間。みんなに気を使えるし、誰とでも仲良くなれて。同期では野爆が個性的、チュートリアル徳井も男前で有名だったけど、僕の印象だとその中心にいたのは準。で、僕と準は面接だけでなくNSCのクラスやバイトも一緒だった。

河本 毎日楽しかった。岡山から出たことない人間だったのに、急に全国から芸人を目指す人が集まる場所に来たから、もう驚くことだらけだったね。腹立つほどおもろいやつが多くて。

桝本 「大阪のやつらにワンパン食らわしたろ」じゃないけど、俺らはそんなスイッチ入ってたよな。ブラマヨ、野爆、チュート徳井、チャンス大城っていうツワモノたちに必死に食らいつきたいと思ってた。

河本さん
河本準一/Junichi Komoto
1975年岡山県生まれ。NSC大阪校を経て、同郷の井上聡とのお笑いコンビ「次長課長」として1995年にデビュー。2002年に東京進出後、一躍人気芸人となる。近年はYouTuberとしても活動するほか、地元・岡山での農業や社会貢献活動にも取り組んでいる。

パチンコで30万稼ぐ井上。日雇いを続けた河本・桝本の極貧生活

河本 マスマン(桝本)も俺も全然金なくて、次課長はパチンコがなかったら死んでた(笑)。

桝本 聡(次長課長の井上聡)はパチンコのイメージあるけど、準もやってたんや。

河本 聡がほんまの博才(ばくさい)で、あいつが座ると必ずその台が出る。フィーバークイーンっていうパチンコがあったんだけど、それであいつは1日30万くらい稼いでた。パチンコ以外は、日雇いのバイトしてたね。マスマンと僕、後に作家として活躍する諸岡(諸岡立身)ってメンバーで、渥美組ってところに行って。

桝本 懐かしい。

河本 朝6時半に並んで。「25号車に乗れ。行き先は三宮!」みたいに言われてな。僕らがNSCに入学した翌年に阪神・淡路大震災があったから、がれきの撤去の仕事が山ほどあって、毎日のように行ってた。で、その日雇いの横に『パーラー天国』っていうパチンコ屋があって、全員そこに吸い込まれて、1万円突っ込んで。一緒にそんなことしてた男が、よく今NSCの先生やれてるなと思うよ(笑)。

あと、この男がすごいのはある日突然芸人をやめて、東京に行ったこと。広島から大阪に出てくるだけでも果てしない旅なのに、そこから1人で東京なんて。

桝本 NSC入学から3年目。

河本 そんな時期に東京に行っている人は、13期に誰もいなかった。(吉本興業が運営する)心斎橋筋2丁目劇場が全てだと思っていて、東京のことなんかまず知らないし。

桝本 俺からすると準ちゃんは3年目にしてスターやったし、次長課長は特別だったけどね。

河本 3年目の時は劇場に出てた。

桝本 僕はNSCでノーコメントってコンビを組んでいて、同期のトーナメントで優勝とかしてたんだけど、解散後は鳴かず飛ばずで。でも準ちゃんはNSCの卒業公演で主役をやるぐらいスター性に溢れていて、演技もすごい上手かった。そんな同期見てたら「俺は表に出るんじゃなくて、裏方が合っている」って思ったんだよね。

桝本さん
桝本壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子をM-1決勝に輩出している。

ナイナイの番組でのMVP受賞を機に、大阪での出演番組が増加

桝本 準ちゃんの大阪でのブレイクのきっかけは何だったん?  

河本 一番大きかったのは、ナインティナインさんかな。24時から朝の5時までやっていた『朝までナインティナイン』で僕がMVPに選ばれて、岡村さんに「東京に向いているなあ」と言われたのが自分の中で自信になった。そこから大阪の番組にやたら呼ばれるようになって。

桝本 その時僕もう大阪にいてないんで、今の話を聞くまで知らなかったなぁ。

河本 当時の僕らには東京への意識はなくって、「大阪で何とかセンター取らなきゃ」って思ってた。それが変わったのは、僕のお師匠の木村祐一さんが大阪に帰って番組をやる時に、いつも打ち上げで東京のよさをすごい話してくれたから。

「東京にはダウンタウンさんおるし、お前がもし東京に来た時は松本さんと飯にも行けるで」みたいな情報をキム兄がどんどんくれて。「お前は絶対東京に向いてるから」とも言ってくれた。たまにキム兄が推薦してくれて、フットボールアワーと次長課長をフジテレビの深夜の特番に呼んでくれたりして。

それで、2004年の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」(『とんねるずのみなさんのおかげでした』内のコーナー)と「すべらない話」に出たことで、東京での仕事が一気に増えた。

※2回目に続く

TEXT=古澤誠一郎

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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