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2024.03.26

「ほぼ仕事ゼロ、ドン底だった人生が一変」麒麟・田村裕を救った芸人仲間

発行部数200万部超えの大ベストセラーとなった自叙伝『ホームレス中学生』のヒットから約17年。お笑いコンビ・麒麟の田村裕が新境地を切り開いている。関西ローカルに複数のレギュラー番組を抱えながら、数年前からバスケットボールに関わる仕事が増え、バスケスクールも複数運営するなど“バスケ芸人”としての地位を確立。浮き沈みの激しい芸人人生の末にたどり着いた、ポジティブに仕事と向き合う姿に迫る。

「あなたはめちゃくちゃ面白い」

お笑い芸人・田村裕の人生を変えた、自叙伝の爆発的ヒット。

2007年8月刊行の『ホームレス中学生』が200万部を超える大ベストセラーになると、田村は周囲から「先生」ともてはやされた。

相方である川島明とのコンビ・麒麟でM-1グランプリのファイナリスト常連となり、着実に芸人としての力を伸ばしていた時期ではあったが、『ホームレス中学生』によって田村は一気に世の中から注目され、信じられない量のスポットライトを浴びることになった。

「本がヒットした後は、みんなチヤホヤしてくれた。でもそれも一時期のことで、徐々に熱が冷めていき、近くにいた人たちはスーッと去っていきました。世間からは見下され、少しでもテレビに映ると、SNSで『まだ生きてたんだ』とか書かれる。『川島と違って田村は終わった』とか、そんなことも散々言われました」

川島のピンでの露出が増えるのとは対照的に、田村の仕事量は右肩下がり。2017年頃には「探偵!ナイトスクープ」を除けば、ほぼテレビ出演の仕事がない状態に陥る。

元来ネガティブな性格だったこともあり、精神的にもかなり追い詰められ、まさにドン底だった田村。しかし、そんな状況のなか、ある芸人仲間の言葉に救われたという。

「僕はNSC(吉本タレント養成学校)時代からずっと、周りから『お前は才能がない』と言われ続けてきて、主役を活かす盛り上げ役に徹することが自分の生きる道だと叩き込まれてきました。『自分は面白くない』と卑下するのが当たり前になっていて……。でも、『探偵!ナイトスクープ』で同じ楽屋だったスリムクラブの真栄田が、そんな僕に対して『あなたはめちゃくちゃ面白い。だから自信を持て』と会うたびに言ってくれたんです」

最初は「誰にでも同じことを言っているんやろ」と相手にしていなかったが、しつこく何度も同じ言葉をかけられるうちに、心が動いた。

真栄田賢は田村より年上だが、芸人としては後輩。言葉選びのセンスが抜群で、田村にとっては後輩ながらも尊敬する存在だった。

「あの真栄田がそこまで言ってくれるなら、もういっそのこと『自分は面白い!』と開き直って生きていくことにしようと思いました。ウケなかったら、僕をフォローしきれない周りの芸人が悪いし、僕の面白さを理解できないお客さんが悪いんだ、と」

田村裕/Hiroshi Tamura
1979年大阪府生まれ。1999年に川島明とお笑いコンビ・麒麟を結成。2007年に発売した、幼少時代から川島との出会いまでを綴った自叙伝『ホームレス中学生』が大ヒット。200万部を超えるベストセラーとなる。「週8でバスケをしている」と公言するほどのバスケットボール好きで、バスケスクールの運営や指導などバスケ関連の仕事も多数こなす。また、2014年からは3x3(3人制バスケ)チーム「TOKYO DIME」の共同オーナーも務めている。

多少無理矢理でも、自分に自信を持つ。そう考えるようになってから、田村の人生は一変。力みやネガティブな感情がなくなることで前向きになり、たとえスベったとしてもめげずに粘り、別の笑いを生みだす逞しさもついた。

そして自分に自信が出ると、自然と笑顔も増えていったという。

「僕は、笑顔を“ニコニコクッション”と呼んでいるんです(笑)。普段から笑顔でいると、嫌なことがあってもあまり落ち込まなくなって、娘が笑ってくれたとか、信号がタイミングよく変わったとか、些細なことでもすごく幸せを感じることができる。生きるのが楽しくなったし、人生は自分の心構えひとつでこんなに変わるんだと驚きました。僕に対するSNSでのネガティブな発信も、気にならなくなりましたね」

大好きなバスケを仕事にしたい

学生時代はバスケットボール部に所属。仕事がかなり減ってきていた2014年頃から、趣味のバスケを仕事につなげていく活動をスタートさせる。

当時はまだBリーグ創設前で、今と比べてバスケ人気が低迷していた時期。

先輩芸人からは「芸能界で仕事になるスポーツは、野球かサッカーか競馬」と助言されたが、「僕が本当にやりたいのはバスケの仕事。嘘をついて仕事をもらうよりも、好きなものを好きと言って仕事にならなかったら仕方ない。バスケと心中しよう」と腹をくくった。

NBAや、当時の日本男子トップリーグNBL、bjリーグはもちろん、女子のWリーグ、大学・高校バスケまでくまなくチェック。

第1子を授かったばかりの時期だったが、育児そっちのけでバスケ観戦の日々。妻には「いつか仕事につながるから」と相談して理解を得ていたという。

2016年のBリーグ発足を機に、国内のバスケ人気も沸騰。田村にもバスケ関連の番組やイベント出演などの仕事が舞い込み、徐々にバスケ芸人としての地位を確立していくことになる。

※2回目に続く

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=鈴木大喜

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