HEALTH

2026.02.06

40代から脳の異変は始まっている。認知症予防の未来を変える画期的検査

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載の第51回は「認知症予防」。日本では約500万人が認知症を発症しているが、それを防ぐ本当に有効な手立てはないのか? 予防をするならいつから始めたらいいのか? 認知症の最新情報と予防法をニューヨークのマウントサイナイ医科大学病院老年医学専門医の山田悠史先生にうかがった。

堀江貴文連載第51回

米国で承認された画期的検査が認知症予防の未来を変える

堀江貴文(以下堀江) 今回は山田悠史先生に、認知症予防について話をうかがいます。

山田悠史(以下山田) まずはアルツハイマー病と認知症について、整理をさせてください。

堀江 このふたつを混同されている方が多いですよね。

山田 そうなんです。アルツハイマー病は、脳内に特定の異常なタンパク質が蓄積し、その結果として脳にダメージが起こり、認知機能が下がるという病気です。発症すると、その進行を確実に止める治療法は現時点ではありません。一方、認知症は症状や状態を表す言葉で、記憶を中心とした認知機能の障害が大人になってから起こり、日常生活に支障をきたした状態・症状のことを言います。

堀江 アルツハイマー病(脳に異常)があっても、認知症を発症しない人もいるということですよね。

山田 はい。認知症の症状はあるけど、原因がアルツハイマー病ではないケースもあります。アルツハイマー病が原因の認知症を「アルツハイマー型認知症」と呼ぶので、このふたつの言葉はイコールではないのです。

堀江 アルツハイマー病はどのように発症するのですか? 

山田 脳内で起こる“異常”は主にふたつあって、ひとつは「アミロイドβ」と呼ばれるタンパク質が沈着すること。もうひとつは「タウ」というタンパク質が異常を起こして溜まることです。これらの変化は「ATN仮説」と呼ばれ、まずアミロイドβが溜まり(A)、次に異常を起こしリン酸化したタウが蓄積し(T)、神経の変性が起こり(N)、脳が萎縮して認知症になるという流れです。

堀江 アルツハイマー病を診断する際の骨髄穿刺(腰の骨の部分に針を刺して髄液を採る)やPET検査は、コスト・時間・痛みなども含め、患者の負担が大きいですよね。

山田 実はアメリカでは、ここ半年ほどの間に大きな進展があったんです。アミロイドβとリン酸化タウの比率を測る血液検査が承認され、血液検査でアルツハイマー病が診断できるようになりました。この血液検査は、腰椎穿刺と同等またはそれ以上の正確性で診断できるため、今後は、この血液検査に置き換わっていくと思います。

堀江 日本での導入はいつ頃? 

山田 1〜2年のうちに導入されると思います。さらに、この新しい血液検査の進歩により、アルツハイマー病とよく似た症状だけど、実際にはアミロイドβとリン酸化タウがまったく見られない一群も存在することがわかりました。「TDP43」という別のタンパク質が溜まっていることから、「LATE(レイト)」という新たな病名がつけられています。

堀江 血液検査の進化に伴い、将来、認知症の原因の特定も進んでいきそうですね。

40代からアミロイドβは脳に溜まり始めている

山田 それで言うと、ATN仮説の時間軸や、アミロイドβが溜まる時期もより正確にわかってきたんですよ。

堀江 それはいつ頃ですか?

山田 認知症発症時点からさかのぼって、20年〜30年前に溜まり始めると言われています。

堀江 例えば、認知症を70歳で発症するアルツハイマー病の患者さんは、40代でアミロイドβが溜まり始めるということですか?

山田 はい。その後45歳頃からリン酸化タウが増え、55歳頃から脳の萎縮が始まり、70歳頃に症状が出るという計算になります。実際には病気の始まりから症状が出るまでに30年ほどのギャップがあり、ここがアルツハイマー病の治療を難しくしているのです。

堀江 でも、今となっては、血液検査でアミロイドβやリン酸化タウを測れるようになったのだから、アミロイドβが溜まり始める40歳前後で血液検査をすれば予防につながりますよね。将来的には予防医学の文脈でも使えるようになりませんか?

山田 なると思います。今回承認された血液検査は、リン酸化タウがもたらす神経障害や認知機能の低下をある程度正確に予測できるわけですから、リン酸化タウを測って将来の認知症予防につなげるということも大いに期待できます。

堀江 日本だけでも認知症患者は500万人以上いると言われていますよね。

山田 2024年のデータでは、その45%近くがライフスタイルを改善すれば、予防することが可能と言われています。認知症のリスク要因とされているのは、喫煙や高血圧、アルコール、頭の怪我、運動不足など。高齢になると社会的な孤立や大気汚染、視力の低下なども関わってきます。これらの多くは改善可能ですから、そうなると200万人〜250万人の認知症患者を減らせるという計算になります。また、帯状疱疹やインフルエンザワクチンなど、さまざまな予防接種が認知症リスクを下げることに関連しているという報告も出てきています。

堀江 2023年に承認された「レカネマブ」など、“認知症に効く”と言われている薬についてはいかがですか?

山田 レカネマブはアミロイドβを取り除く薬なのですが、アミロイドβと神経の変性ってそんなに相関しないんです。もうひとつ、認知症のカギとなるのはリン酸化タウです。アミロイドβとリン酸化タウの両方をターゲットにした薬を使えば、高確率で予防できるかもしれません。また、抗体薬がうまく効くということが担保されれば、ワクチンという発想も出てくるのではないでしょうか。

堀江 僕はもう50代なので、今から積極的に介入していかないと、間に合わなくなりますね。

山田 おっしゃるとおりです。そして、正しい情報を届けていくことも大事だと思っています。先述の血液検査なども、お金目的のサービスにして販売する人も出てきそうなので。

堀江 「認知症は予防できる病気なんだよ」ということを広く伝えたいですね。

山田 認知症は決して老後の話ではなく、正しい予防知識を身につけることが必要なんです。

堀江 そうですね。ぜひ、お力を貸してください。

山田悠史氏

山田悠史/Yuji Yamada
1983年岐阜県生まれ。慶應義塾大学医学部を卒業後、全国各地の総合診療科を経験。2015年よりニューヨークのマウントサイナイ大学関連病院の内科に勤務し米国内科専門医を取得。現在はマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。『認知症になる人 ならない人』など著書多数。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』ほか著書多数。

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