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2025.09.18

コレステロールが高いほど、がんや認知症になりにくい【89歳医師×精神科医対談④】

89歳の今も現役で活躍するホリスティック医学の第一人者、帯津良一氏と幸齢者の強い味方・和田秀樹医師。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。3回目。

コレステロールが高いほど、がんになりにくく、認知症になりにくい

数値に根拠はない

帯津 そう言えば、和田先生は血糖値を下げないって言ってましたね。

和田 下げないというか、一応朝測って、300を超えたら薬を飲むようにしていまして。

帯津 なるほど。

和田 今の医学は「血糖値が高いのはよくない」と言いますが、「数値がいくつになったら、どの臓器に悪さをする」ということはわかってないんです。それなのに普通の医者は「ここまで下げろ」とギャンギャン言う。

帯津 人間より数値重視なんです。

和田 だけどその数値も本当は怪しい。例えば「HbA1cは6まで下げろ」と言うんですが、アメリカの大規模調査では、この数値が7~8の人のほうが長生きするとわかっています。そもそも人間には個人差がありますからね。全員一律に「ここまで下げろ」って言うのはどうなんだろう。本当にそんな必要あるのかなって思いますけどね。

帯津 本当にね。コレステロールなんかも、神経質に下げる先生がいますよね。私は300を超えても「まあいいじゃないか」って言ってるんですけどね。

和田 コレステロールに関しては「高ければ高いほどいい」という説もある。少なくとも、高いほどがんになりにくいということはわかっています。また高いほど認知症になりにくいということも、わかってきています。そもそもコレステロールは免疫細胞の材料だし、グリアという神経細胞の材料でもある。体に必要なものなんですよ。

帯津 だけどコレステロールがすべての病気の元凶みたいな言われ方をしていますね。

和田 確かに高すぎるせいで病気が起こることもあるとは思うんです。でも悪い面だけを取り上げて「コレステロールは害悪だ」「下げろ」と一辺倒で言う今の医学には納得できません。

帯津 いやあ、先生と話すと安心しますね。いろいろといい話してくれますからね。

帯津良一
帯津良一/Ryoichi Obitsu
医学博士。1936年埼玉県生まれ。1961年東京大学医学部卒業。2004年に東京・池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設。がん治療を専門とし、西洋医学に中国医学や代替療法を採り入れたホリスティック医学を提唱する。著書に『89歳、現役医師が実践! ときめいて大往生』など。

生きる希望を与えられるのが医者

和田 僕はこれからますますAIの時代が来ると思っていて。検査データや画像データを見て診断を下し、処方するだけならAIに勝てないと思うんです。

帯津 おっしゃるとおりだと思います。

和田 医者の仕事っていうのは、やっぱり、患者さんに安心感や生きる希望を与えていくことだと思うんですよ。これからの時代、それが医者の仕事になっていくと僕は思っていて。だけど、今の医学教育がそうなってないんです。

帯津 本当ですね。

和田 帯津先生の患者さんって病院で先生に会うのを楽しみにしてるでしょ?

帯津 そうかもしれませんね。

和田 でも、ほかの病院は違います。気を重くして病院に行く患者さんが多いと思うんです。行くたびに「数値が高いから下げろ」とか「ここが悪い」って言われたら、そりゃあ気が重くもなりますよ。

帯津 そうでしょうね。

和田 だから本当は、もっともっと帯津先生みたいに会いたくなる医者、元気をもらえる医者っを目指す人を増やしたほうがいいって思うんですけどね。

帯津 診察が終わってご本人が廊下に出るでしょ。付き添いの家族は1歩後から出ていくんですが、そのときに私のほうを向いてね、「ここへ来るとなんか元気になるんですよ」と言ってくれるんですよ。

和田 いいですね。

帯津 こっちもほのぼのとしますよね。そうやって家族を励ますのも医療の大事な役割でしょうね。

和田 本当にそう思います。落語のネタでよくあるじゃないですか。待合室の患者さん同士の会話で「あの人今日きてませんな」「ああ、風邪ひいたらしいですわ」なんていうのが。

帯津 面白いね(笑)。

和田 やっぱりね、医者が優秀な病院は、待合室の患者さんも元気なんですよ。反対に、薬を出しすぎたり、検査データを見てうるさく指導する医師のいる病院は、待合室がだいたい暗いですから。

帯津 なるほど。

和田 僕は精神科なので、認知症やうつの人を診ますが、やっぱり患者さんは、風邪をひくとこないんですよ。治ると病院にきて「また先生の顔が見れて嬉しい」なんて言ってくれるんですけどね。つまり、僕がって話じゃなく、患者さんを元気にするのがいい医者だっていう話なんですけど。

帯津 私は、患者さんが診察室を出るときには、必ずこちらも立ち上がって「お大事に」って言うんですね。すると慌てて患者さんも後ろを振り向いて「先生もお大事に」って言ってくれます。これは嬉しいですね。

和田 そういうやり取りだけでも元気が出てきますよね。でも、そういうお医者さん、本当に少ないですもんね。だから帯津先生のような医者は貴重なんです。

帯津 うれしいですね。ありがとうございます。

和田 先生の病院には心療皮膚科の先生もおられましたよね。森田療法の先生だったと思うんですけど。

帯津 はい。心療内科の先生が週に1回、毎週火曜日にいてくれますし、必要なときはお願いしています。

和田 やっぱりそうやって、心を元気にすることを大事にされている。そこが帯津先生のすごさですよ。患者さんって、元気になりたくて病院にくるわけですから。

帯津 そうですね。

和田 でも現実は、検査データを正常にできても、心まで元気にしてくれる医者は、すごく少ないですからね。そういうところも日本の医療の問題点だと、僕は思っています。

和田秀樹
和田秀樹/Hideki Wada
精神科医・幸齢党党首。1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業後、同大附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長に。35年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『80歳の壁』『女80歳の壁』など著書多数。

病院は明るいほうがいい

和田 帯津先生は診察以外でも、患者さんたちにいろいろと教えたりされてるんですか? 例えば、体操とかヨガとか。

帯津 川越の病院には、気功の道場があります。気功が患者さんの自然治癒力を高めると知り、病院を開設したときに道場もつくったんです。中国からも気功の先生がよくきましたよ。コロナの前はね、1週間に12種類の気功を30コマやってました。

和田 すごいですね。

帯津 日曜は休みなので1日6コマずつ。職員が指導するんです。患者さんにもベテランの人が多くてね。そういう人たちも手伝ってくださるので、非常に明るくてよかったんです。

和田 患者さんは、教える側に回ることで心の張りが出ますよね?

帯津 そうなんですよ。ところがコロナで道場を閉鎖することにしたんです。やはり病棟にコロナが入っちゃいけませんからね。今は再開しましたが、まだ昔の勢いがちょっと戻らない。池袋のクリニックはメトロポリタンホテルの中にあるので、上の宴会場を借りてやってましてね。こちらはコロナのときも閉鎖せず、続けていました。

和田 それはすごいですね。

帯津 だからみんな、明るくていいんですよね。

※5回目に続く

TEXT=山城稔

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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