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2025.12.31

羽生結弦、町田樹、桃田賢斗…2025年最も読まれた記事BEST5【アスリート編】

引退、挫折、競技人生の転機──。勝敗の裏にあった葛藤と決断、その先に見えた生き方に迫る。2025年、GOETHE WEBで多くの共感を集めたアスリートインタビューを厳選してお届けする。※2025年2月〜11月掲載記事を再編集

アスリート5選【まとめ】

1.「引退を決めたのは当日」フィギュア・町田樹はなぜ、大学准教授になったのか

町田樹

町田樹、35歳。ソチ五輪フィギュアスケート男子シングル日本代表であり、國學院大學 人間開発学部 健康体育学科の准教授だ。この若さで准教授となることは容易ではないが、町田は「実のところ大学学部生時代は長いこと留年をしていて、大学7年生まで過ごしているんです(笑)。ですから、もう時間を無駄にできないと思い、修士と博士の課程は最速のストレートで突っ走りました。博士号を取得直後、ありがたいことに國學院大學が助教として受け入れてくださったんです」と謙虚に微笑む。

町田が研究するのはアーティスティックスポーツにおける著作権問題や、フィギュアスケート業界におけるプログラム(作品)のアーカイブ、マネジメント問題など多岐にわたる。

フィギュアスケート選手としては異色のキャリアを歩む町田は、研究とそれに伴う実践の活動、フィギュアスケート中継の解説やスポーツ教養番組の制作、関連イベントのゲスト出演など多忙な日々を過ごしているが、大学では学生たちと触れ合う教育者でもある。2020年からゼミを受け持ち、これまでに40人強を社会に送り出してきた。

「彼らの成長過程は見ていてうれしいですし、自分も安住してはいけないなと刺激を受けます。このインタビューのテーマにかけるわけではないですが、成長するために挑戦を続けることは大事だなと思います」

研究室の本棚の一角には、卒業生たちの卒論が並べられている。一段の左半分は学生の卒論、右半分は町田の個人の業績だという。

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2.桃田賢斗、賞金5000万獲得、バド界の頂点に立ち代表退いた今も「もっと上手くなりたい」

桃田賢斗

桃田賢斗は2024年、日本代表からの引退を発表し、今シーズンからは所属するNTT東日本でコーチ兼任として活動している。

「普段の生活や練習はこれまでと変わらないです。ただ代表をやっていると1年の3分の1くらいを海外で生活することになるので、それが大きく変わったところ。落ち着いた日々を送っていられる感じはします。コーチ兼任はまだ始まったばかりでよくわからないところもあるんですが、選手時代よりバドミントンを俯瞰して見るようになった気がします。選手だけをやっているとどうしても勝ち負けが気になって1プレー、1プレーに力が入ってしまうんですが、いまはもう少しリラックスして、広い視野を持てるようになった。穏やかな気持ちでバドミントンと向き合えています」

まだ30歳、とはいえチーム内ではベテランだ。それでも自分に甘くなることはない。毎朝7時半に起きて30分ランニング。9時から12時までの午前練習を終えると、いったん休んで14時から17時半まで午後練習。チーム練習後には筋トレなどの自主練に時間を割く。

「バドミントンは個人だけでなく団体戦もあるので、監督が僕を使いたいとなったら、いつでも期待に応えられるような準備はしています。でも自分がいちばんで、絶対に誰にも負けないみたいな気持ちはもうないかもしれない。若手選手を育てるためには自分がひかなければならないこともわかっていますし、若手選手のためのいい練習相手にならなきゃならないという思いもある。いまは、“勝ちたい”というよりも“上手くなりたい”。もっと上手くなって、理想のバドミントンを追求したいという感じで練習を重ねています」

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3.“空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ”植草歩。東京オリンピックでの挫折、海外で取り戻した自分らしさ

空手家・植草歩

当時、社会人で空手を続ける選手はほとんどおらず、大学卒業後、植草歩さんは競技からの引退も考えていたが、空手が東京オリンピックの正式種目に追加される可能性を受け、現役続行を決意。

2015年9月、空手は正式に五輪種目に決定し、空手の注目度を上げる活動にも積極的に関わるようになる。スポンサーもつき、メディア出演やイベントも増え、街や大会会場で声を掛けられる機会も多くなった。

おしゃれで、明るく、天真爛漫。そんな素顔から、当時は「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」と呼ばれ、メディアの露出も増えていた。

「オリンピックに出ると決めたからには、やらなければいけない。周りが自分に何を求めていたのかもわかっていたので、一生懸命自分を奮い立たせていました。でも振り返ると、無理にポジティブでいようとしていただけなんですよね」

そうつぶやいた後、植草さんが明かしてくれたのは、東京オリンピック直前のエピソードだった。

「当時のフィジカルトレーナーに『どんな自分で優勝したい?』と聞かれたんです。私は『キラキラ輝いている最高の自分で、最高の優勝をつかみとりたい』と答えました。そうしたら、『そんなメディア向けの言葉を聞きたいんじゃない』と言われて……」

その後に思い浮かんだのも、「空手で勝つことだけにフォーカスする。そのために、アスリートとして規律ある生活をし、全力を尽くす」という言葉。フィジカルトレーナーに問われた一言によって、みんなが求める言葉しか出てこない自分に気づかされたのだ。

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4.たった1年で昌平を全国制覇させた、元日本代表の指導哲学「勝つためだけにプレーするな」「ミスして笑っても責めない」

玉田圭司

――引退後、玉田圭司さんは解説者には転じなかったですね。
「サッカーを見るのは好きですし、海外サッカーもJリーグもよく見ているけれど、解説をやってみたいとは思わなかったんですよね。いろんな考え方があると思うんですけど、僕は指導者を目指すと決めていたので、まっすぐにその道に進みました」

――2024年春に埼玉県の名門、昌平高校サッカー部の監督に就任しました。前監督(現チームディレクター)の藤島崇之さんは、高校時代のチームメイトだったそうですね。
「昌平の強化部には藤島以外にも習志野の仲間が揃っていて、以前から『いっしょにやろう』という話をしていました。僕が引退したことで、より現実味が増して。僕自身も子どもたち、ユース世代を指導することは大きな経験になると考えて、最初はスペシャルコーチという形で1年関わり、その後監督になりました」

――春に監督に就任し、夏のインターハイで全国優勝。快挙とも言われています。どんなエッセンスをチームにもたらすことができたと考えていますか?
「もともと、技術力のある選手が揃っていたし、組織としての戦術、規律という土台のうえに、選手個々が活きるようなサッカーをしたいと思っていました。だから、『成長するために何をすべきかを考えよう』と。『個性を発揮することが大事だよ』と伝えていました。どんな試合でも勝つことは大事。インターハイでも選手たちは『絶対に優勝するぞ』という気持ちでまとまってくれた。とはいうものの、日頃言っていたのは『勝つためだけにプレーするな』ということです」

――勝利至上主義ではないと。それでもトーナメント戦であるインターハイでは、どうしても「勝つためのプレー」を選択してしまうのでは?
「勝利を目指すなとは言ってない。ただ、勝つためだけにサッカーをしていると、すごく雑なプレーが増えるんです。リスクを冒さず、消極的なプレーになってしまったときは、『絶対にそういうプレーはしないでくれ』と伝えました」

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5.30歳・羽生結弦「自分がいいと思うことを貫こうと決めた」

手を顔に添える羽生結弦さん

国民的スケーターの羽生結弦に、安易な美辞麗句はいらない。2022年7月、プロ転向を表明し、約2年半が過ぎた。自身が制作総指揮を務める「アイスストーリー」は、東京ドームでの単独公演「GIFT」を皮切りに、「RE_PRAY」「ECHOES OF LIFE」と3作品を完走。壮大なミッションを乗り越えることでしか得られない充実感もあるのだろう。穏やかに道のりを振り返る。

「大変だったな、充実していたな、の両方ですかね。自由な世界に放りだされ、やはり自由だからこその不自由さや、自分の能力の足りなさ、突き詰めるべき道のりなど、本当にいろんなことを探しながら、手を伸ばしながら、そして、やっといろんなことがわかり始め、突き詰めてきた3年目だと思います。

映像やプロジェクションとのリンクや、ストーリーとプログラムのリンク自体もかなり深まってきた。それはきっと僕がスケートだけではなく、いろんなものに一生懸命に手を伸ばしながら養分を吸い取ってきた枝葉や根っこが、やっとちょっとずつ木の幹になってきたのかなという感じがしています」

羽生が舞う空間に一歩、足を踏み入れると、襟を正されるような不思議な感覚に包まれる。アイスストーリーを通じて演じるテーマは、生きることの意味。全身全霊の舞いで、哲学的な問いを現代社会に投げかける。

「自分の命って何だろうと幼い頃から常に考えてきました。例えば、物心ついた時は既に名前がついていて、自分はもう生きているということを既に始めてしまっている。幼い頃、物心ついた自分が初めての記憶として認識しているのは、自分の力で瞬きができたというシーンです。瞬きができた自分がその日眠りについた時、このまま眠りについたら実は全部夢で、赤ちゃんの頃の自分にまた戻るんじゃないか、とか考えていて。

命は本当に摑みどころがなく、自分の人生すらも存在しているかを証明できない。本当にふんわりしたものだからこそ、今のこの世の中に対して命に対する知識や考えるきっかけ、考える時間になったらいいなと思っています」

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TEXT=ゲーテ編集部

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