役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。今回は、2026年1月16日に公開される児山隆監督の『万事快調〈オール・グリーンズ〉』をはじめ、4人の監督の作品を取り上げる。

ダメだ! 1本に絞れない! だって面白いんだもの
滝藤も2026年の11月にはついに50歳(知命)に。「五十にして天命を知る」らしいのですが……まだ一年くらいあるからな。大丈夫だ。
2025年は新しい才能の台頭に気づける一年でした。今回はそこから4人の監督の作品をご紹介。
まずはチェン・カイコーやチャン・イーモウを生んだ北京電影学院卒の伊地知拓郎監督の長編デビュー作『郷』(2026年1月9日公開)。鹿児島の高校野球の強豪校で1年生にしてレギュラーに選ばれた青年が、理不尽な縦の関係性で潰され、違う道を模索する姿を極力台詞を排し、映像の力で組み立てています。圧倒されました。
次は河合健監督の『みんな、おしゃべり!』(公開中)。同じ商店街にレストランを出店予定のクルド人と、以前からある電器店のろう者の店主が、通じ合えない誤解から無駄に悪意を膨らまし、敵対関係に。何故お互いに歩み寄って、相手を知ろうとしないんだ!とハラハラしました。みんなもっと仲良くやろうぜ(笑)。

森ガキ侑大監督は私も何度もご一緒していますが、創りだす世界観がミステリアスで芸術的。何度打ち合わせしても森ガキさんの頭のなかがまったく見えず、人間って本当に面白いと思わせてくれる。新作『架空の犬と嘘をつく猫』(2026年1月9日公開)も、森ガキワールド全開。嘘だらけの家族だけど、それでもやっぱり家族なんだよな〜。
そして大トリは、滝藤の人生を変えた映画『トレインスポッティング』の現代の日本版女子高生バージョン。児山隆監督の『万事快調〈オール・グリーンズ〉』です。茨城県の原子力発電所のある町に暮らす工業高校機械科の女子高生3人が、クソみたいな環境から抜けだすために、ぶっ飛んだ行動に出る。まるで、RENTON、SPUD、SICK BOY! サイコーだぜ!
4作とも地方で暮らす若者のしたたかさ、逞しさを肯定していて、19歳で名古屋を飛びだしたあの頃の滝藤が疼いてくる。“おい! お前! 丸くなってんじゃねぇよ! ”って。よし! とりあえず岡本太郎記念館に行ってこよう。演技は爆発だ!
『万事快調〈オール・グリーンズ〉』
現役大学生で当時21歳の波木銅が、第28回松本清張賞を審査員の満場一致で受賞した同名小説の映画化。家庭にも高校にも居場所がない3人の工業高生が自立を目指し、一攫千金を試みて禁断の部活動を計画する。
2026/日本
監督:児山隆
出演:南沙良、出口夏希、吉田美月喜ほか
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
2026年1月16日より新宿ピカデリーほか全国公開
https://www.culture-pub.jp/allgreens/
滝藤賢一/Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。2026年は2月27日に映画『木挽町のあだ討ち』が公開されるほか、『遥かな町へ』など公開作が控えている。

